ケイタケイ’Sムービングアース「ライトpart4“ジグソーパズル”」「ランチ」

 東京のdie pratze を舞台にした「ダンスが見たい!7」は今年「批評家推薦シリーズ」を始めました。多くのフェスティバルではなぜその団体が参加したのか不明な場合が少なくないけれど、この方式は選出の理由やダンスの特長 … “ケイタケイ’Sムービングアース「ライトpart4“ジグソーパズル”」「ランチ」” の続きを読む

 東京のdie pratze を舞台にした「ダンスが見たい!7」は今年「批評家推薦シリーズ」を始めました。多くのフェスティバルではなぜその団体が参加したのか不明な場合が少なくないけれど、この方式は選出の理由やダンスの特長が、推薦者によって明らかになるがありがたい。ケイタケイを推薦した舞踊評論家の山野博大さんは「オックスフォードの舞踊事典には、伊藤道郎、森下洋子、土方巽、天児牛大、吉田都と並んでケイタケイの名前が載っている。日本人舞踊家の名前が外国の舞踊事典に載ることはほとんどないのだから、彼女に対する海外での評価が高いことが、これでわかると思う。(略)1967年にニューヨークに渡り、苦労の末にムービングアースを主宰するまでになった。彼女の『ライト』シリーズの評価は高い」と書いています。


 公演はライトシリーズの1作と近作の2本立て。最初のライトシリーズは 「part4 ジグソーパズル」。ケイタケイがポリウレタン製と思われる白板の破片を文字通り、床に敷き詰めていく。数人のダンサーは次第に踊るスペースが狭くなり、あちこち揺れ動くように追い込まれ、最後にステージから出されてしまいます。始まるとすぐに、結末は見えていますが、パズルの並べ方とダンサーの揺れ具合の微妙な関係が、踊りの稜線を描くことになります。自明な結末はさておき、その「微妙」のプロセスに付き合うことができるかどうかによって、集中が持続するか弛緩するかの分かれ道になりそうな気がします。
 「白鳥のめがね」サイトのyanoz さんは、「白い切片を床にしきつめていくプロセスが作品の軸になっている」とした上で、次のように指摘しています。

ダンスは、読み取られるべき形をプロセスに与えるための媒体となっているかのようだ。どのように解釈するかは別にしても、何かの寓意がいかようにも読み取れるようなドラマの原型をなすようなものが、作品の構造に織り込まれているのだとおもう。だが、プロセスそのものが身体の状態を変えるということはない。作品としての展開と身体運動は、どこまでも並行関係を保ち続けるかのようだ。
そこにケイタケイの作品の限界があるとも言えるのかもしれないけれど、それはそれで、舞台作品としてゆるぎなく構成されているとも言える。

 後半の「ランチ」は、夫(あるいは父親)らしき男性と妻と娘らしい女性2人、それに猫の仕草を軽やかに演じるウエイターが登場。レストランのテーブルを囲んでステージが始まります。宝飾類を皿に載せ、ナイフやフォークで突き回す男、テーブルをナイフとフォークで切ろうとしたり、皿ごとテーブルにこすりつける女たち。ぎこちないが故にユーモラス。そんな動作に思わず頬が緩みかけると、男が女たちに向かって、ブラジャーの紐がはみ出しているなどと文句を言います。一瞬氷付く空気。やがて床にまき散らされた貝殻を拾い、奴さんのようなスタイルで女たちが踊ります。男はときにいすを持ち運びながら踊りに巻き込まれ、軽やかな時間を共有したようにみえます。やがて再びテーブルを囲んだとき、食卓には和やかな時間が流れます-。

 こちらも、作品の出口が明確だとの印象を与えます。しっかり構成され、コンセプトは明晰。身体の動線も突発的衝動的なところはみられず、あらかじめ描かれた了解ポイントを静かに美しくたどっていくように思えます。
 ケイタケイは1967年ニューヨークに渡りジュリアード音楽院舞踊科に留学。学生時代よりケイタケイ’Sムービングアースを学生仲間と結成、アメリカ、ヨーロッパでの公演活動が高い評価を得ていたそうです(Muse company サイト)。60年代アメリカのモダンダンス活動の中から生まれた、きわめて独創的なダンスであることは間違いないでしょう。古典的なたたずまいを感じたのはそのせいかもしれません。

[上演記録]
■ ケイタケイ’Sムービングアース
「ライトpart4“ジクゾーパズル”」「ランチ」
麻布die pratze(7月21日-22日

作構成=ケイタケイ
出演=石田知生 岩崎倫夫 木室陽一 大塚麻紀 西巻直人 ケイタケイ 岩崎倫夫 石田知生 大塚麻紀 西巻直人

照明/清水義幸
音響/越川徹郎
舞台監督/河内連太
衣装/ケイタケイ
協力/早田洋子 原口理

投稿者: 北嶋孝

ワンダーランド代表

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