超歌劇団「ドガガガーンゴワーシュンボコーンプシューバゴーン」

◎「コドモ頭脳」が生み出す真夏の夜のスペース・アトラクション  梅山景央(ライター/編集者)  見てる間はハラハラ、ドキドキ。終わってみればスカっと痛快。見事になんにも残らない演劇。そんな素晴らしい演劇体験について、あと … “超歌劇団「ドガガガーンゴワーシュンボコーンプシューバゴーン」” の続きを読む

◎「コドモ頭脳」が生み出す真夏の夜のスペース・アトラクション
 梅山景央(ライター/編集者)

 見てる間はハラハラ、ドキドキ。終わってみればスカっと痛快。見事になんにも残らない演劇。そんな素晴らしい演劇体験について、あとからごちゃごちゃ書く。こんな野暮な話もないだろう。とってもおもしろかった! それでいいんじゃないか。

 たとえばこうだ。夏休みに家族でディズニーシーに行った小学2年のケン坊が、レイジングスピリッツの迫力に小便チビり、海底2万マイルのネモ船長の背中にシビれ、ブラヴィッシーモ!にわけもなく涙がとまらなくなったりしたワクワク体験を宿題の日記に綴る-「おとうさんとおかあさんとディズニーシーにいきました。とてもおもしろかったです」。たった2行になってしまったが、行数じゃはかりしれない高揚感が、この「とてもおもしろかったです」にはこめられている。たとえ、翌日にはそんなことすっかり忘れちゃうんだとしても。

 とはいえ「おもしろかった」だけでは原稿が埋まらないので、とりあえず「コドモ頭脳(あたま)」という言葉をつくってみたがどうか。
 巷で言われる「コドモ身体」には、使う人も使われる人もじつは頭よさげなイメージがあるが、「コドモ頭脳」の人にはいい年こいて通勤電車の中で『コミックボンボン』とか読んでそうなしょうもなさがある。「俺んちにプラモシミュレーター(『プラモ狂四郎』に出てくる現代科学を一切無視した架空のマシン)あるんだぜ」とか、いまだに、ついウソ自慢をしてしまう。ウソがバレるので自宅に友人も呼べない、みたいな。

 でも、うるけん一郎太(超歌劇団主宰)が真に偉大なコドモ頭脳なのは、ホントにプラモシミュレーターみたいなものをつくってしまうからだ。
 木場公園に突如現れた、手作り感あふれる怪しい建造物。一歩足を踏み入れ
れば、なんとそこは宇宙船の中だった!
 そして、開演前だというのにいやでも目に入ってしまう仕掛けの数々(人型にくりぬかれた穴や、頭上に釣られた水の入った水槽や、緊急発射スイッチなど)。ネタバレというなかれ。うるけんさんの前説がふるってる。「見えないことにしてください。仕掛けは動き出したときだけ見えるのです。インスピレーションがとても重要です」。
 つまり試されているのはボクたちのコドモ頭脳というワケ。
 さあ、いざ宇宙へ。

 が、早々に宇宙海賊の襲撃が! 船長の非道なる裏切りも重なり、副船長と乗組員(という名の観客たち)は虐殺されてしまう。一人だけ奇跡的に生き残った主人公は恋人(女性の観客)を殺された悲しみを胸に復讐を誓い、再び宇宙へと旅立つのであった-。
 主人公を襲うグロテスクな宇宙植物、突如現れる正義の味方、金属化することで蘇った副船長との友情などなど、冒険に次ぐ冒険のスペースファンタジア。愛と裏切りと策謀、そして絶望。主人公に残された希望は……。

 ムダに熱い演技とストーリー運びの中、チープな(なかにはずいぶんと大掛かりなのもあったが)仕掛けが次々にハマる楽しさといったら!
 巨大怪物の振り下ろした拳が壁にめりこむ、ワイヤーで吊られた正義の味方
が宙を駆ける、金属化した敵の頭上に裁きの水が降る。
 そしてクライマックス、宇宙海賊のスパイとして送りこまれながら、いつの間にか主人公を愛してしまった彗星アイドルが「緊急発射スイッチ」をプッシュ。ゴゴゴ……と宇宙船の一部が切り離され(トラックが発車)、彗星アイドルは宇宙海賊ボスを道連れに漆黒の宇宙空間(夜の暗闇)へ消えてゆく。遠くで爆発(花火!)。

 超歌劇団おなじみ、観客参加型という名のお客いじりも健在。結局のとこコドモ頭脳なんてなれるすべもないジレンマがくすぐったいお客さんたち、笑いっぱなしの1時間だった。
 客演フロム・ゴキコンの2人、オマンキージェットシティー、Dr.エクアドルもさすがの存在感だった。宇宙海賊扮するOJCに青竜刀でざっくり斬られたボクが言うのだから間違いない。

 とまあいろいろあるけど、ようするに、おもしろかった! でいいや。やっぱり。
 大人になったケン坊が楽しめる真夏の夜のスペース・アトラクション。ディズニーシーよりぜんぜん楽しかったよ。
(初出:週刊マガジン・ワンダーランド第6号、8月30日発行、購読は登録ページから)

【筆者紹介】
 梅山景央(うめやま・あきお)
 ライター/編集者。「九龍ジョー」の名で実話誌、日刊紙などに雑文を書き散らす。『BUBKA』という雑誌で連載「女の墜とし方」始まりました。ってここに書くことじゃないですね。演劇関係の原稿も書いてみたいです。よろしくお願いします。
「*S子の部屋」http://passage.tea-nifty.com/firedoor/

【上演記録】
超歌劇団第26回公演「ドガガガーンゴワーシュンボコーンプシューバゴーン」
http://f3.aaa.livedoor.jp/~choukage/
木場公園多目的広場(7月29-30日)
■作・演出 うるけん一郎太
■キャスト
うるけん一郎太/くるっぱぴっこ
魚人ごろー/ハル美/渡辺祐介
池ヶ谷馨/堀田早樹子
Dr.エクアドル(ゴキブリコンビナート)
オマンキージェットシティー(ゴキブリコンビナート)

■スタッフ
制作・音響:笹木良子
映像:笹木祐
チラシ:馬走POM
美術:池ヶ谷馨
衣装:ハル美
メイク:真田万佐美
装置稼動:鈴木創

「超歌劇団「ドガガガーンゴワーシュンボコーンプシューバゴーン」」への1件のフィードバック

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