F/T09秋「劇評コンペ」の優秀賞決まる

 「フェスティバル/トーキョー09秋」の関連企画「劇評コンペ」の優秀賞が12月20日、発表された。受賞したのは、イタリアのロメオ・カステルッチ演出『神曲―地獄篇』を取り上げた柴田隆子さんの「美しい静寂の地獄絵図」、ドキュ … “F/T09秋「劇評コンペ」の優秀賞決まる” の続きを読む

 「フェスティバル/トーキョー09秋」の関連企画「劇評コンペ」の優秀賞が12月20日、発表された。受賞したのは、イタリアのロメオ・カステルッチ演出『神曲―地獄篇』を取り上げた柴田隆子さんの「美しい静寂の地獄絵図」、ドキュメンタリー演劇の新風リミニ・プロトコルの『Cargo Tokyo-Yokohama』を批判的に考察した堀切克洋さんの「『本物』はどこにあるのか」、サンプル(松井周作・演出)公演を取り上げた百田知弘さんの『あの人の世界』評の3作品。受賞者は、来年のF/T10の全演目に招待される。

 この企画は「上演作品の創造・発表」だけでなく、「観客側の批評活動の展開もフェスティバルの一環」ととらえて今回初めて設けられた。「次代を担う劇評家・批評家の発掘・育成を目的」に掲げ、「プロの書き手への第一歩を応援」するのがねらいという。今回は12作品を対象とした32編の応募があった。

 結果発表の後、鴻英良(演劇評論家)、内野儀(東京大学教授)、高橋宏幸(演劇批評・「シアターアーツ」編集代表)の審査員3人がそれぞれ優秀作品と応募作品について講評した。

 優秀作の中では「『本物』はどこにあるのか」への評価が高く、鴻さんは「応募作の多くは、どういう舞台であったかが記された良質な感想文ではあっても、いかにすばらしかったかの讃辞に終わっている。その中でこの劇評は、日本の輸送・物流システムの構造に関する具体的な状況-問題点を挙げながら冷やかに分析し、作品の不充分さを指摘している。そこで批評として成立しており、こういう文章こそが作り手をも揺さぶる」と述べた。

 高橋さんは「美しい静寂の地獄絵図」について「舞台で何が起こったかを時間軸に沿って正確に記した、精度の高い優れた解説であり、読ませる力をもっていた。ただし批評であるためには、そこからもう一歩踏み込むことが必要」と指摘した。内野さんは「百田さんの評は、拒絶と承認という観点から、物語構造がうまく描かれていたと評価を下し、解説から一歩踏み出している。だが、ほかのいくつかの重要なテーマに、気付いているにもかかわらず深めることなく流してしまってのが惜しまれる」と述べている。

 最後に、F/T09秋のプログラム・ディレクター相馬千秋さんは「こういう場を、なぜ主催者側が設けたのか。F/Tの作品は、社会に問題提起をするものと自負しているが、新聞ジャーナリズムなどに出るのは、ほんの短い紹介的なものだけ。批評は本来、外部でやるのが健全なあり方と考え期待したが、なかなか成立が難しい。そこで今回は、初めての試みとして、試行錯誤しながらこのような形で行った」と締めくくった。
 各作品・全体に関する審査員の詳しい講評は近くF/Tのwebサイトに掲載されるという。

【参考】
・劇評コンペ優秀賞発表(F/T 09秋)http://festival-tokyo.jp/gekihyo/

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