連載「芸術創造環境はいま-小劇場の現場から」最終回(第14回)

||| 演劇は見るものじゃなく聞くもの

-選ぶのには、何か基準があるんですか。

玉山悟さん玉山 特にないですね。劇団さんには審査していますよって言います。うちの主要メンバー7人で誰かひとりでも賛成票を投じたら貸します。

-7人の票の重さは同じなんですね。

玉山 同じです。でも、たまに私が拒否権を発動することもあります。そのへんは明文化されてはいなくて、状況に応じてですね。本当に最後の最後で、私が強引に入れるとか落とす場合があるんですが、まあ1年に1度あるかないか。

-玉山さんご自身の決め手は何でしょうか。

玉山 2時間の芝居の中にひとつでもいいセリフがあったらOKです。「ああ、このセリフ面白い!」っていうのがね。それがあれば、あとの1時間59分がイマイチでも許してしまいますね。
 他の職員はそれぞれ他の基準があると思います。画面・絵の作り方がうまいとか、スタッフワークが充実しているとか、評価するポイントはそれぞれですけど、全員が、互いのNGのラインを信用しているってことですね。こういうのはダメだよねって話し合うわけではないんですけど。

-その7人の方は、何年くらいその任に当たっていらっしゃるんですか。

玉山 初期メンバーはずっとです。審査制になって以降だと、キリンバズウカの登米裕一が加わって、あと若い子が2人増えて。

-玉山さんの決め手に関しては伝説を聞いているんですが、お芝居をご覧になるときに目をつぶっていらっしゃるとか。

玉山 はい。演劇は見ると疲れるので(笑)。新しい人物の声が聞こえてきたときだけ見ます。どんな衣装を着てるのかだけを見て、また目をつぶってます。芝居は見るものじゃない、聞くものだというのが、私の見方です。

-若い劇団の人は、玉山さんが目をつぶってると、怖いそうですよ(笑)。目を明けていると、聞くのが疎かになるということでしょうか。

玉山 そういうこともないんですけどね。見てると身体が同調しちゃうんで疲れるんですよね。

-こちらは演劇専門ですか。ダンスの公演などはないんでしょうか。

玉山 昔はダンスもありましたが、何年か前からなくなりました。
 オープン当初は、早い者勝ちで貸してたんです。ある年から、3日間の貸し出しをやめて、4日以上ということにしたんです。このルール変更で、ダンスは使いにくくなりました。ダンスは普通、ステージ数はそんなに多くなくて、金曜日に仕込んで土日3ステージくらいですからね。また何年かして、4日間の貸し出しをやめて5日以上ということにしました。これで、それまでの活動母体となる劇団がない団体の旗揚げ公演がうちづらくなりましたね。木曜に仕込んで、金・土・日に5ステージっていう規模の公演がうちでは打てなくなったということですから。今は6日以上ということにしています。
 なので、ダンスなんかには敷居が高いかな。別に貸さないわけではありません。何年かに一度、太鼓のコンサートなんかもあります。

-そんなふうに借りられる最低日数を増やしていったというのはなぜですか。

玉山 経営の問題です。週末の3日間を借りられると、週の前半が空いちゃう。日程の50%以上ロスになってしまうのでね。

||| 毎年選ばれる佐藤佐吉演劇賞

-貸し館のバリエーションとして、「×(カケル)王子小劇場」というのがあると伺いましたが、これについて教えてください。

玉山悟さん玉山 今年からやってみたんです。面白そうな企画があったときに、小屋代を定額いくらとせずに、有料動員×何百円ということを事前に団体と取り決めて、従量課金するということですね。

-リスクとリターンを劇場と劇団で共有しようということなんですね。

玉山 そうですね。劇団側のリスクヘッジという面の方がうまみがあるかな。

-劇団にとってはありがたい制度ですね。普通は劇団が全部背負うべきリスクを、王子が見込んだ劇団だから、一緒に負うよということですね。それは玉山さんの発案ですか。

玉山 そうです。

-どういう理由からですか。

玉山 今年は4月、5月、6月に劇場がちょっと空いてたので、何か工夫をってひねり出したのがそれだったんですね。声をかけられる面白い劇団から「小規模の公演を打ちたいんですけど」という声がいくつか聞こえてきて、じゃあまとめてやっちゃおうということになった。小規模の公演はうちの劇場の定価だとちょっと厳しいかなと思ったので、それならこういう方法でやろうかな、という感じで。

-今年はどんなところがやったんですか。

玉山 今年は、バナナ学園純情乙女組、七里ガ浜オールスターズ、TOKYO PLAYERS COLLECTION、国分寺大人倶楽部、MU、の5劇団です。

-やってみてどうでしたか。

玉山 結果としては、作品はよかったんではないでしょうか。動員の方はもうちょっと入れたかったですね。

-続けていかれるんですか。

玉山 この企画だったらいいよね、というのがあったらやりますけど。やるかもしれないし、やらないかもしれない。

-王子小劇場の特徴的なイベントだと思うのですが、佐藤佐吉演劇祭というのがありますね。これは毎年ですか。

玉山 2年に1回開催を目標にしています。

-どのくらいの期間に何劇団くらいが参加するんですか。

玉山 数は決まってはいませんが、少ない年でも8劇団でしたね。最初は冬にやってましたが、前回から夏に動かしました。今後やるとすれば、2年に1回夏にだと思います。期間は、やっぱり1か月では寂しいので、少なくとも2か月はやりたいですね。それは、出てもらいたい団体にオファーするときに、何週間くらいやりたい? 1週間でいい? などと相談して決まっていきますね。

-佐藤佐吉演劇賞というのは。

玉山 年間賞です。1年間に王子小劇場に出た全ての作品を対象に、部門は、作品・脚本・演出・舞台美術・照明・音響・衣装・宣伝美術・主演男優/女優・助演男優/女優の12部門ですね。年末に優秀賞5人を発表して、新年会でその中から最優秀賞を選びます。

-その2つが主なイベントですね。

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  56. 「まごころ18番勝負」のみなさん、迷惑をおかけしました。さっそく22日に、公演のタイトルを訂正しました。ご指摘ありがとうございました。(ワンダーランド編集部)

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