コント劇団 もより駅は轟です「コント誘艶恥始めました」(クロスレビュー挑戦編第26回)

 これまでのクロスレビューでコント集団の登場は初めて。しかも旗揚げ公演。企画書には「コント劇団で下克上! コントで天下を獲る!」とあり、その心意気を酌んで取り上げました。「コントライブなのに、きちんとストーリーがある! 新しいこと、誰もやっていないことを必ず盛り込むこと!」など「3つの掟」があると書かれています。実際の舞台はどうだったのでしょうか。★印による5段階評価と400字コメントです。掲載は到着順。末尾の括弧内は観劇日時です。(編集部)

山田佳奈(ロ字ック主宰、劇作家・演出家・役者)
 ★★
 主宰自ら「パンスト」を被って舞台に登場したり、見当外れな遊園地の計画を「スケッチブック」を用いて見せたり、メイド服に「きゃりーぱみゅぱみゅ」を連呼するおばあちゃんなど、まさに《コント》で見せていく「誘艶恥(遊園地)」。
 しかしながら、その誘艶恥(遊園地)にはジェットコースターがなく、個性豊かなキャラクターによるパレードばかり。そんな印象を受けて惜しく感じた。「コント誘艶恥(遊園地)」というからには、演者はもっと自分勝手にはっちゃけても良かったのではないかと思うし、作品としても展開をもっと凝縮出来たのではないだろうか。観客として、舞台上での熱量や躍動感をどこか期待したため、全体的に大人しく感じてしまった。
 この旗揚げ公演は、例えるならば、未知の場所で自己表現の方法を模索している転校生。おそらくは、その葛藤の決着がつけば、もう勘弁してくれないか、と言わざる得ないほどの道化になるのだろう。それを期待したい。
(4月20日 19:00の回)

山田ちよ(演劇ライター)
 ★★
 遊園地という題からテーマパーク創業者、絶滅したはずの原人のショー、ソープランド、キムジョンナム一家という4つの世界が出てくるところが面白い。いろいろな題材が絡み合って最後に収束する、と理解すれば演劇に近い。「コント集団」と名乗っているのだから「普通の劇団が芝居の公演の合間にやるコント集」にない特色があるべきだが、それが見えない。笑いを取るためにギリギリまで行っていないからだ。例えば、ソープランドの黒服を演じた俳優が、同じ衣装のまま、次のコントでは遊園地の企画会議を仕切る。出てくるアイデアにダメ出しするうち、エッチな話に乗ってしまう。ところが前のキャラクターを引きずっているからこのオチが甘くなる。スーツにネクタイの男が下ネタを語り続ける、といった意外性でも、観客を置き去りにするような大胆さでもいい。「コントでてっぺんを取る」(主宰の言葉)という意気込みを笑いのつくり方で感じさせてほしかった。
(4月22日13:00 の回)

大泉尚子(ワンダーランド)
 (星なし)
 きょうびの気難しい客を笑わすのは並大抵のことじゃあありません。旗揚げ公演だそうですが、いきなり「コント劇団」って名乗っちゃったのは勇気があるなあと思います。で、今回は申し訳ないというくらいに笑えなかったので、そのわけをつらつら考えています。
 「あったまオカシイ連中が、あったまオカシイ遊園地をコントします。あらゆる表現がプロパガンダとステマ化している現代に、バイオパワー感じる事無く好き勝手にやるコントライブ。是非、一緒にあったまオカシクなりましょ?」というキャッチコピー。真ん中辺はよくわからないんだけど、さほど「あったまオカシイ」感じがしないんですよね。主宰自らがかってでるデブネタも、「きゃりーぱみゅぱみゅ」という源氏名が言えない高齢風俗嬢のフケネタも、既成のキャラクターネタの枠からはみ出してはいないんじゃあないでしょうか。笑いよりもむしろ戸惑いや、ひいては痛ましさのようなものが先に立ってしまう。何より、まずはお客の気持ちをニュートラルなところにもっていってほしい、笑わすのはそれからではないでしょうか。
(4月22日13:30の回)

都留由子(ワンダーランド)
 (星なし)
 劇団HPには「劇団の掟」として、(1)可愛い女の子が出演する(2)きちんとストーリーのあるコントライブ(3)新しいこと・誰もやっていないことを必ず盛り込む、が挙げられ、それによって新しい“笑い”体験を提供すると書かれている。期待させる掟だ。
 遊園地を緩いテーマに、かなりの数の短いコントを並べ、最後のコントで、そこまでに出てきたいくつかの伏線(?)を回収しようとしていたのは理解した。早替りを繰り返し、みんな汗びっしょりの大車輪だったことも分かった。だけど、すまない、私は今公演では新しい“笑い”体験はできなかった。コーラの一気飲みや露骨な下ネタを入れるなとは言わない。でも、それらも、ガムテープで胸毛を引きちぎるのも、少なくとも私には、これを出せば間違いなく面白いという印籠ではなかった。少々の瑕疵や不備も熱気とパワーで押し切る舞台は嫌いではないのだけど、私のコントリテラシーの問題だったらすまない、★はつけられなかった。
(4月20日14:30の回)

北嶋孝(ワンダーランド)
 ★
 公演企画書には劇団の特徴が手際よく書かれていた。「コントライブなのに、きちんとストーリーがある」「新しいこと、誰もやっていないこと必ず盛り込む」などなど。それを頼りに選んだ今回の公演にはいつも以上の期待をかけたのだが…。
 公演前の注意事項を述べる男性コンビのやり取りは「滑ってしまった」などの自虐コメントが差し込まれるほどノッキングが多い。本番の冒頭、ウオルト・デブニー(!)の公開生インタビューは、やり取りがぎこちなく、コーラ、ファンタの一気飲みでは会場は沸かない。19歳のEカップが実は65歳…というネタもひねり不足。「きちんとしたストーリー」「誰もやっていないこと」に出会いたかった。素材が新鮮でなく、困ったら下ネタ頼みの味付けも舌にあわなかった。
 しかしわずかだったが、会場からは折々笑いが起きていた。劇団が目指すのはそういう人々が待つ「もより駅」で、ワンダーランドに途中下車してはいけなかったのだろう。おそらくぼくらは似つかわしくない乗客。ミスマッチという言葉が脳裏をよぎったのだった。
(4月20日14:30の回)

【上演記録】
コント劇団 もより駅は轟です 旗揚げ公演「コント誘艶恥始めました」
バイタス新宿(2012年4月20日、22日)

【キャプテン】
轟 もよ子(主宰)
【脚本・演出】
大畑 英明

【キャスト】
民本 しょうこ(太田プロダクション)
小島 ミカ(アップヒル・エンターテイメント)
岩井 薫子
ジュリ子
眞藤 ヒロシ
平 真幸
内田 雅巳
中田 広幸
フジキ マコト

【スタッフ】
音響:いしもとひさや
照明:木ノ下君
アクション指導:フジキマコト
ダンス指導:民本しょうこ
衣装:轟もよ子
制作:トン子、河原杏子、せーさく

【入場料】
2,300円

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