シンクロ少女「少女教育」(クロスレビュー佐藤佐吉演劇祭編 4)

「少女教育」公演チラシ

 シンクロ少女は2004年、日本映画学校映像学科在学中に名嘉友美が旗揚げ。以後全ての作品の作・演出を名嘉が務めてきました。劇団HPによると、「愛」と「性」、「嫉妬」や「欲」など「目に見えない感情や欲求をテーマに、見た人の血となり肉となる作品を目指して公演を打つ、エロ馬鹿痛快劇団」だそうです。さて、佐藤佐吉演劇祭編参加の第10回公演はどうだったのでしょう。★印による5段階評価と400字コメントをご覧ください。掲載は到着順。末尾の括弧内は、観劇日時です。(編集部)

小林重幸(放送エンジニア)
 ★★★
 そこで語られるのは、ストレートな「愛」の話。男女の愛だけでなく、親子だったり、兄妹だったり、街でふれあっただけの人同士だったり。もちろん、純粋な愛の話をそのまま芝居にしても恥ずかしいことこの上ないわけで、登場人物は、相当にひねくれたキャラクターばかりだし、芝居の構造もかなり技巧的で凝っている。その工夫が功を奏し、ストレートな愛の話から恥ずかしさを払拭し、実に巧みに描ききった。
 2つのストーリーをシンメトリーに配置し進行していく構成は、物語が進むにつれ、それが必然であると分かってくることも含め、大成功と言えよう。観客は、演劇世界を外から眺めつつ、気持ちは常にその世界の中に引き込まれ、飽きることがない。しかし、この芝居の最大の魅力は、その演劇的技巧の上手さ以上に、そこで語られる「愛」の強さにあると、私は感じた。
(7月21日 14:00の回)

齋藤理一郎(会社員 個人ブログ rclub annex
 ★★★★
 ダメ男に二股をかけられた女性たちの物語と、同じ名前を持ったふたりの女性やそれを取り巻く男たちの物語のそれぞれに観る側を追わせる力があり、言葉の重ね合わせやコントラストの作り込みから生まれる多様なシンメトリーや、真逆に愛するものへの距離感の取り方を喪失したキャラクター達が互いにその姿を照らし出す仕掛けのしたたかさにも舌を巻く。
 エピソードの設定には恣意的にディテールを減じた部分があり、終盤に女性達の繋がりや因果が浮かび物語への俯瞰が生まれても、現実と乖離した仮想のシミュレーションを見るような感覚が残る。しかしながら、同じ条件で生を受けた女性達がそれぞれの母から与えられたものを抱くことや、そのことへの葛藤や、愛する者への想いを見つめ「なんとかなる」と踏み出すことへの理は、シチュエーションの組み上げや重なりの息を呑むような精緻さに支えられつつも、その実存感を絶妙に滅失した質感にこそ映え、物語のなりゆきに埋もれることなく伝わってきて。個々のシーンで役者たちから刹那に立ち上がるキャラクターの想いの生々しさも、その質感との対比で一層際立っていたように思う。
(7月20日 19:30の回)

宮本起代子因幡屋通信発行人)
 ★★★
 舞台に複数の演技エリアがあり、登場人物がそれらを行き来しながら重なってはねじれてゆく微妙な同時進行形式や、人と人が永遠に愛しあうことは可能かというテーマは今回も不動であり、既視感は否めない。
 しかし手法に懲り、それを前面に押し出す昨今ありがちな作りとは一線を画しており、地味ではあるがゆるぎなく潔い印象だ。
 俳優の個性をぞんぶんに引き出しつつマンネリに陥らない。俳優も自分の持ち場を的確に理解した上でそれぞれに新境地を探り、作者の信頼と期待に応えようとつとめている。
 しかしシンクロ少女にそうたやすく幸せになってほしくないというねじくれた欲が湧いてくるのだ。たとえば空間を一つにしぼり込み、緩みや余白、逃げ場のない濃密な対話によって、みるものをいよいよ深く、わけのわからない場所へいざなうこともできるのではないかと。
 星数はぐっとこらえて控えめに。新しい劇世界に出会ったそのときは、あとのふたつも惜しみなく。
(7月19日 14:00の回)

大泉尚子(ワンダーランド)
 ★★
 ウィキペディアによると「シンクロニシティ(英語:Synchronicity)とは『意味のある偶然の一致』のことで、日本語訳では『共時性(きょうじせい)』とも言う」とのこと。シンクロ少女を見たのは「未亡人の一年」に次いで2回目だが、時間を越えたいくつかの物語を同時進行させ、そこでの偶然性=響き合うものを鮮やかに描き出すところは共通していた。
 たとえば、AとB、CとDという2組の会話が、A→C→B→D→A→C…という順に交わされたりするが、実に流れがよく、観客の脳内には2つの物語がナチュラルに形成されていく。台本がうまくできているのは言うまでもないが、セリフの間のとり方など役者の力も大きい。キャラクターの描き方も巧みで、とりわけ兄さん(横手慎太郎)のDV男っぷり、そしてやられていた弟フミオ(満間昂平)がある時点から合わせ鏡のように独占的になっていくところ、ハヤシ先生(林剛央)の気色悪い感じのビミョーな優しさなどが印象に残る。
 ただ本音を言うと、2度目だったせいもあってか、本領であるシンクロ性が図式的・技巧的に見えてしまい、大きくのめりこめなかったところがある。それより恋する男性たちがダサ~い振りでポーズを決めるシーンなどの枝葉の部分の方が面白く、構成が緻密な分、こういうハズシが効いてくるのだろう。
(7月19日 19:30の回)

都留由子(ワンダーランド)
 ★★★
 長く交際してきた相手がいるのに女子高生とつき合い、その子が妊娠すると出産する直前に姿を消す最低二股男。残された二人の女性は、生まれた双子の女の子に同じ名前タオをつけてそれぞれ一人ずつ育てる。大人になった二人のタオとその恋人と周囲の人たち。いくつかの物語、台詞がシンクロしつつ進む。シンクロ具合の手際は鮮やかで、だんだん明らかになる物語に引き込まれ、また、三つに分けられた舞台のうち、何も起きていない部分での役者の様子などを見ると、とても行儀のいい端正な演出だと感じられた。面白かったので文句はないのだが、あの最低二股男を「一番好きな人」と言う二人の女性ってどうなんだろう? 「強い愛を得て、子どものころから母に言い聞かされた『一番好きな人とは一緒にいられない』から抜け出す」「何とかなると踏み出す」というのも、ちょっとシンプル過ぎない? いろいろあったのにハッピーエンドっぽく終わってしまうのもやや物足りなかった。欲張りですみません。
(7月20日14:00の回)

【上演記録】
シンクロ少女#10「少女教育」(佐藤佐吉演劇祭2012参加作品)
王子小劇場(2012年7月19日-23日)

【作・演出】
名嘉友美
【出演】
横手慎太郎
中田麦平
泉政宏(今夜はパーティー)
名嘉友美
(以上、シンクロ少女)
満間昂平(犬と串)
松本みゆき
あやか
林剛央
木村キリコ
村上佳久

【スタッフ】
作・演出 名嘉友美
舞台監督 林剛央
照明   伊藤朋美
音響   伊藤幸拓
宣伝美術 菅井早苗
制作   会沢ナオト

【チケット】
前売:2800円 当日:3000円 高校生以下:1000円(要学生証提示)


「シンクロ少女「少女教育」(クロスレビュー佐藤佐吉演劇祭編 4)」への9件のフィードバック

  1. ピンバック: ワンダーランド
  2. ピンバック: Yumie Kurihara
  3. ピンバック: 水牛健太郎
  4. ピンバック: 満間昂平
  5. ピンバック: chaghatai
  6. ピンバック: えびす組劇場見聞録
  7. ピンバック: まごころ18番勝負
  8. ピンバック: シンクロ少女

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です