ぬいぐるみハンター「ゴミくずちゃん可愛い」(クロスレビュー佐藤佐吉演劇祭編 8)

「ゴミくずちゃん可愛い」公演チラシ
「ゴミくずちゃん可愛い」公演チラシ
 ぬいぐるみハンターは、「脚本・演出の池亀三太と怪優、神戸アキコ」の2人で旗揚げ。2012年より劇団化。劇団の特徴について、「かわいく装い、ガブッと噛み付く」が如く、ギャグと現実世界の狭間をギリギリアウトで駆け抜ける、とWebサイトで書いています。今回は、「この世のものは全てがゴミ予備軍。だからみんなゴミくずみたいで可愛い。世界を手にしてしまったある男と、世界の片隅でゴミくずと暮らす人々の地球みたいに回る話」だそうですが、どんなステージになったのでしょうか。5つ星(★)の採点と400字のコメントを組み合わせたクロスレビュー。掲載は到着順。レビュー末尾の丸括弧は観劇日時です。(編集部)

小林重幸(放送エンジニア)
 ★★★
 近未来風な設定の各シーンをスピード感ある動きと台詞回し、大音量のサウンドで描いていく。ほとんど何も無い舞台にそのシーンの情景が鮮やかに浮かんでくるし、舞台空間の外側に広がる世界の風景も見えてくるかのよう。世界は争いで満ちているという立脚点から、それに対する諦めと反抗を「映像」で見せていくかのような芝居の作りは、観客をワクワクさせるものであり、すごく上手。戦場カメラマンが登場し、メインとなる登場人物が最後にはカメラの虜になるというストーリーからも、この芝居が「映像」の喚起を意識していることは間違いないだろうし、その狙いは見事に達成したと言える。
 惜しむらくは、このストーリーの根底をなす世界像に必然性が薄い気がすること。なぜ世界は争いが絶えなくて、どうしてそこまでして平和を求めるのかという点に説得力があれば、各シーンはワクワクするのみでなく、もっとドキドキしたのではないだろうか。
(8月26日 19時30分の回)

齋藤理一郎(会社員 個人ブログrclub annex
 ★★★★
 紡がれていく世界がとてもユニーク。世界中のごみが捨てられて山になったというその場所に重なっていくエピソードはどこか禍々しく渾然としていて童話のようで奇想天外で、加えて現代をぎゅっと丸められたような味わいもありぐいぐいと引き込まれる。空襲警報の高揚、ごみを拾い小銭を貯めること、母親のこと、戦争、抗議やデモ、愛情や恋慕、空想や夢、章が進むごとに新しい視座と展開が差し入れられ物語が広がる。
 そして終盤、キャラクターやエピソードたちに重ねられていたものが次第に解け、世界のさらに奥にひとつのキャラクターの幼年期の記憶から大人に至る心風景の軌跡が浮かび上がる。その歩みへの俯瞰や失われたものたちへの追憶を抱いた今の実存感に深く浸潤される。
 作者がエピソード達に込めたものの全ては受け取れていないのかもしれません。でも、やや長めの上演時間にも冗長さを感じることは全くなく、躍動感やウィットや刹那に染まるビターさに満たされた舞台に浸され「ゴミ」を筆頭に役者たちが描き上げるキャラクターたちの瑞々しさや存在感に心を奪われ続けました。中盤とラストの集合写真のシーンがどうしようもなく心に焼きつきました。
(8月22日 19:30の回)

大泉尚子(ワンダーランド)
 ★★
 舞台は、世界が戦争状態の最中、毎日定期的に大量の廃棄物が投棄されるゴミ置き場。そこに住む人々に育てられ、短い命をまっとうした「ゴミくずちゃん」は、出会う人に弾けるような明るさを振りまき、確かに可愛い。少女時代ポルノに出ていた心の傷が癒えない育ての母のポルノ。訳ありげな男言葉の女医ドク。幼馴染のソニーの父キングはヒッピー的人生を送りつつ、「世界平和」を訴える一人デモを続けている。なぜだかそれに共鳴し、巨大企業の社長の座を投げ打って行動を共にするゴウトクジ。強烈なノイズでは始まったこの劇、さまざまなキャラクターを取り揃えて、俳優陣は若さに溢れている。
 歌ありダンスありでテンポよく展開するが、見終わってはたと気付く。汚く危険な、みんながどこか目の届かないところに追いやってしまいたいと思うものを、するりと交わして通り抜けてしまったのではないかということに。キャッチコピーの「この世のものは全てゴミ予備軍」という着眼点はとても面白いのだが、意外にも繰り広げられた世界はキレイ系にまとまっていた。その避けがたい汚濁の欠片なりと、楽しさの中の異物として混入されていれば、印象はだいぶ違ったのかもしれない。
(8月25日14:30の回)

福原幹之(高校教員)
 ★★★
 PVの映像で見る序章は、河原の橋の下で撮っていたせいか、空から人が落ちてくるシーンもどこか現実感があった。しかし、劇場で観たこの世界は、サイバー空間をイメージさせるものだった。彼らの住む「夢の谷」に空から投棄されるゴミの山は、まるでデスクトップのゴミ箱に捨てたものが積もっていくようだ。この世界の果てに集まった登場人物は、元ストリッパー、元医者、元兵士など現実を逃避してきたことを窺わせる。世界が終わりを迎えたのに、また物語が始まるのは、ゲームをリセットする感覚に近いのではないだろうか。コメディを狙ったテンションの高さゆえに、人々の存在感は軽く、悲壮感も感じさせない。主人公「ゴミ」の死を嘆いて毎夜すすり泣くポルノの声は聞こえない。デリートされているようだ。最終章で世界平和を達成した時繰り返される「ハッピーバースデイ」は、何度でもくり返しやり直せる仮想世界を象徴するように聞こえる。ハッピーエンドなのにうすら寒い気持ちにさせる。PVがあったことで現実と空想との落差が楽しめたのだと思う。
(8月25日 19:30の回)

藤原ちから/プルサーマル・フジコ(編集者、BricolaQ主宰)
 ★★★
 国家が滅びて企業同士が戦争を起こす世界。ジャンクなゴミの山に行き場のない人たちが集まっている。こうしたスラムはSFではよく描かれるけど(わたしは好き)、不思議とリアリティがあるのは今この現実がかなり終末的であることの証しだろうか。空からゴミだけでなく人も降ってくるというのは面白い設定。そこで拾われた少女(浅利ねこが魅力的に好演)が「ゴミ」と名づけられたにも関わらず、なぜか可愛く感じられるのはマジカルだった。ゴウトクジファミリーも類型的とはいえ愉快なキャラクターたち。スナフキンとポルノの佇まいもよかった……とかとか。ただし全般に、各登場人物への愛着(執着)がもう一歩ずつ足りない気がする。それで物語が手ぬるく流れてしまった印象。
 声質に関してもそうで、大声で発話することに必然性はあったのかどうか。そういったところに、世界を丁寧に見ていけるかどうかが表れてしまう気がする。たとえフィクションの世界であっても彼らは生きているのだから、その息づかいの前にもっと立ち止まる瞬間が欲しかった。疾走感というよりも、多くのことが記号的・説明的に消費されていくスピードが速すぎる。わたしは少々疲れてしまった。
(8月27日 18:30の回)

中野雄斗(学生)
 ★★★★
 世界中のゴミが集められた最果ての地が自分にとっての「世界」だった少女。「世界」が終わる物語、と語られるその台詞の印象がはじめとおわりで180度かわってしまう。はじめとおわりが表裏一体であることを思い起こさせるだけでなく、それが作品自体にもあたるということをつよく印象づける。
 旅と旅行のちがいは帰る場所があるかどうかだ、という台詞があったが、登場人物それぞれが作品のなかで自分の帰る場所をみつけたようで、思わず嬉しくなってしまった。
目の当たりにする役者の熱量や、やや強引で短絡的にもみえる展開力は生で観る舞台としての魅力に溢れていた。
( 8月27日 13:30の回)

登坂美希(会社員)
 ★★★★
 ポップでキュートなチラシに惹かれて観劇。
 劇場はうってかわって、真ん中に地球を見立てた小さな台があるだけのシンプルな造り。しかし効果的な照明と音響の使い方で、それが逆に観客の想像を掻き立てるものへと変わった。
 登場人物もみんなキャラが濃く、だからといってそれだけではなく一人一人の背景もしっかりしているから全く別次元の話と言う風にも感じない。
 テンポもセリフも早すぎるなと一見感じそうだが、そこはきちんと見せていたと思う。
最初から最後まで本当に面白い舞台でした! 感謝!
(8月27日 18:30の回)

都留由子(ワンダーランド)
 ★★
 舞台には、丘のように盛り上がった青い地球。出入りの通路は花道のように使われ、登場人物は舞台面と舞台裏をぐるぐる走ったりする。世界中からゴミが集められ投棄されるこの場所では廃棄物に混じって人も降る。降ってきた赤ん坊は拾われ、育てられる。世界中でデモを行う男、天才的な元女医、元ロックンローラー、元戦場カメラマン、元ポルノ女優などゴミ谷の住人に、世界を牛耳るマイクロビルディング社の社長と秘書とボディガードが加わる。
 魅力的な登場人物、スピード感・躍動感が心地よい。役者には愛嬌があり、身体もよく動く。ご機嫌で見ていたのだが、途中から気がついてしまった。黙って見守る母。見守られて幸せだったことには、みんな後になって気づく。世界を放浪してルールを決めるのは父。ブラックジャックみたいだった女医は妊娠し、マイクロビルディング社は世界戦争にもちゃっかり生き残る。外の世界に飛び出して行った子はあっさり死んで、みんなの記憶の中に生きる。結構クラシックなお話だったのだ。クラシックが悪いわけではないが、せっかくの新しい革袋にはちょっと物足りなくて、残念だった。
(8月22日 14:30の回)

北嶋孝(ワンダーランド)
 ★★
 登場人物は精一杯声を張り上げて動き回る。音楽の音量も大きい。ダンスもいけてるし、シーンの切り替えもかっこいい。2時間超の舞台はあっという間に進行した。このスピード感はなかなかに得がたい。これにすてきな歌声が伴ったら、東京キッドブラザースやミスタースリムカンパニーの現代版と言いたくなるほどだ。
 とりあえず少ない色数でも、手の届く範囲で世界を描くこと。人物が似通って見えるとか、細かな陰影や微妙なあわいが表れなくても致し方ないだろう。目を向けるべきは、舞台空間を立ち上げる演出のパワーではないだろうか。小劇場からはみ出すほどの演出力は、大ホールや野外の舞台も視野に入れているのかもしれない。
(8月23日 19:30の回)

【上演記録】
ぬいぐるみハンター本公演「ゴミくずちゃん可愛い」(佐藤佐吉演劇祭2012参加作品)

作・演出 池亀三太
王子小劇場(2012年8月22日-27日)

○キャスト
浅利ねこ 石黒淳士 猪股和磨 竹田有希子  (以上、ぬいぐるみハンター) 浅見紘至(デス電所) 江幡朋子 川本直人 工藤史子 佐賀モトキ 富山恵理子 橋口克哉 平舘宏大(ブルーノプロデュース) 満間昂平(犬と串)

○チケット
<一般>前売 2300円(振込みのみ・8月15日まで) DVD付チケット 3500円(「軽快にポンポコと君は」DVD付)
 当日精算/当日 2800円
<23歳以下>前売・当日 2300円 ※要証明
<高校生以下>前売・当日 500円 ※要証明
○割引
団体当日精算 2500円(3名様以上に適用)

○スタッフ
作・演出 池亀三太
振付 神戸アキコ
舞台監督 本郷剛史
照明 山内祐太
音響 角田里枝
宣伝美術 のりしろチップス・デザイン部
イラスト 桐村理恵
制作 mono.TONE/ぬいぐるみハンター制作部[吉田りさ 村田紗美]
制作協力 会沢ナオト
演出助手 伊福覚志 長谷川慶明 松本紗良
今回お休み 神戸アキコ
協力 krei inc. サードステージ オフィスチャープ CLEO
企画・製作 ぬいぐるみハンター


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