連載企画「外国人が見る小劇場」 第2回

-映画や小説は…。

ツァラヌ 日本の小説はとても人気があります。村上龍、村上春樹、三島由紀夫、安部公房…。あと好きな作家の作品はamazonで注文していました。例えば京極夏彦の小説とか。

-えっ、京極夏彦ですか。

ツァラヌ そうです。怪談の世界が描かれたりしますよね。歌舞伎の世界のようでもあります。それでいま、木ノ下歌舞伎を思い出しました。

-F/T13で「東海道四谷怪談」を木ノ下歌舞伎が通し上演しましたね。

ツァラヌ そうなんです。素晴らしかった! 宮沢さんの次に好きなのは、木ノ下歌舞伎(笑)。彼らの舞台は初めてでしたが、注目すべきアーティストですね。感心したのは、テンションを高く保っていて、観客の関心をそらさないところです。これからもっと見ようと思います。

【写真は「東海道四谷怪談」公演から。撮影=田中亜紀©Aki Tanaka 提供=F/T13 禁無断転載】

-青年団の舞台はどうですか。

ツァラヌ シビウ演劇祭で(2010年に)「東京ノート」の公演を見ました。とても印象に残っていて、新しい演劇が現れたと思いました。劇的なものを必要としない演劇ですね。最近の作品は残念ながら見ていません。現代口語演劇がどちらに向かうか、言葉を中心にしてどこまで進めるか、興味があるのでこれから見てみたいと思います。

年中芝居を見られる幸せ

-ラモーナさんはルーマニア国立ラドゥ・スタンカ劇場の来日公演「ルル」のスタッフとして参加しましたね。いかがでしたか。

ツァラヌ とても勉強になりましたし、あまりにうまくいきすぎて驚きました(笑)。あと、年末の現代イプセン演劇祭(注4)にもラドゥ・スタンカ劇場が参加して「NORA ノーラ」公演をしましたが、その時日本語字幕を担当しました。これはとても大変でした。
 シビウの劇団が来日しましたが、シビウのほか、ルーマニアの首都ブカレストなど各地にもたくさんの劇場、劇団があります。最近はイギリスやアメリカで活躍しているルーマニアの演出家が出てきました。ジャニナ・カルブナリュという女性の演出家で、ルーマニアにとって新しい演劇をもたらしてくれるのではないかと思います。個性的な演劇がルーマニアにも生まれることを期待しています。

-日本の劇場や劇団の運営システムについて考えることはありますか。

ツァラヌ ルーマニアでもドイツでも、ヨーロッパでは劇場に劇団が所属して、レパートリーシステムで同じ演目を2ヵ月後でも1年後でも見られます。公演期間が限られているから焦ってみるとか、見たかったのに見逃すということはまずありません。
 あと日本では昼夜公演があって、いつでも舞台を見ることが出来ます。それからある期間劇場が一斉に休みに入ることはありませんが、ヨーロッパでは6月半ばから9月半ばまで劇場がみな休暇に入ります。街のカフェなどで即興的な公演がないと、芝居は見られません。

-ヨーロッパでは公立劇場が多く、公的助成があるからでしょうか。学校も6月半ばから年度替わりの休み、夏期休暇になります。みんなバカンス(笑)。夏のフェスティバルがありますけど、観光客向けが主だと言われますよね。

ツァラヌ 確かに。ただ日本では、年間を通じていつでも芝居が見られます。ヨーロッパの演劇人に説明してもなかなか分かってもらえません。私にとっては、いつでも演劇に親しめる日本にいる方が幸せです(笑)。

-日本とルーマニアの演劇について長時間、話していただきました。ありがとうございました。(2013年12月18日、東京芸術劇場のカフェで)
(インタビュー・構成:北嶋孝 撮影:広澤梓)

(注1)王子小劇場スカラシップ
(注2)「錬肉工房」公式サイト
(注3)イェリネクのホームページ
(注4)現代イプセン演劇祭2013

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