大池企画「MOTHER II」

◎他者や関係性に変化を
 橋本清

mother2_0a 一枚のカードがあった。
 定期乗車券ほどの大きさのそれには、《双葉》を模したと思われるデザインのロゴが黒インキで小さく、左下角にプリントされている。二枚の葉の左側には、葉脈の代わりに、子葉の輪郭に合わせた二つの同心円が《瞳》のマークを形作っている。これから成長してゆく、という意味合いで《芽》とかけたのであろう。—《観ることが、育てること》のフレーズでおなじみの《こまばアゴラ劇場支援会員》のロゴだ。会員証の提示で、こまばアゴラ劇場、アトリエ春風舎での公演、その他の会場でのこまばアゴラ劇場主催・提携公演を観劇可能(*1)となるこの支援制度に、昨年秋、新たに《アーティスト会員・プロデューサー会員》が設置された。作り手が劇場へ通う機会を—ということで応募してみることにした。有り難いことに対象者に選ばれた。私事だが、自分の主宰する劇団の公演中止、活動休止などの問題と重なった時に、その会員証にずいぶんと助けられた。—正直言えば、観劇数は少ない。が、それでも、演劇とどう向き合っていいか精神的混乱に陥っていた時期、その何度でも使えるカードが自分にとって大きな支えになった。こちらに向かって《いつでも劇場においでよ》と、気さくに話しかけてくれているような気がしたのだ。そして、『MOTHER II』(@アトリエ春風舎)に出会えた。
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