中井浩之ひとり芝居「猫の事務所」「オツベルと象」

◎これもまた「本道」なのだ
 堀切和雅

中途半端な郊外で

 演劇をやりたい若者は、まあ若者でなくてもいいのだが、とりあえず東京や京阪神や名古屋やせいぜい北九州など、大きめの都市に出て来るほかに、選択肢はあまりない。地方では、機能している常設の劇場空間もまずないし、演劇仲間も集まりにくいし、なによりも、演劇が成り立つ根拠そのものである、まとまった観客層がない。いや、後ほど述べるようにそれは実は存在しうるのだが、未だ潜在的なものに押しとどめられてしまっている。
 もちろん、弘前劇場など、地方を基盤に演劇を成立させて行こうという努力はなされてきたし、いまもされている。
 ただ、演劇界全体のあり方の問題として、地方で舞台を成立させるための組織的努力は、片隅に追いやられてきた。
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国分寺大人倶楽部「リミックス2」

◎この世界がこのまま終わるまで、のマナー
 堀切和雅

「低調」系演劇!?
「リミックス2」公演チラシ ひどい名前の劇団だな、と思いながら、ちゃんと予約して開場前に受け付けを済ませて座を占めると、ひどい音楽が満ちている。うるさい。暗いから、本も読めやしない。わざわざつくったのだろう、面白い店名の電光看板が舞台上空に幾つも吊り下がっており、12畳くらいの正方形に組んだ黒い舞台には、小さなちゃぶ台というか、テーブル。置いてあるのは、ビール、ではなくあくまで発泡酒の缶。
 もしかして噂に聞いていた「低調」系演劇なのか!? と思っていると、芝居はじつに低調に始まって、若者たちの特段なんでもない日の宴会だ。
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ままごと「わが星」

◎観られなかった舞台を懐かしむ
 堀切和雅

「いま/ここに/在る」ことの演劇

 小劇場の歴史のカンブリア紀あたりに、「月夜果実店」が棲息していたことを知る人ももう少ないだろうが、それは全くのところ、「問い」を舞台にするためにつくった集団だった。「時間のはじまりの、前はナニ!?」とか、「宇宙の外側の外側の外側は……」という、誰でも一度や二度は問う問いを、成人しても僕はずっと持ち越していたのだが、日常にそれらギモンを匿している大人は存外多いらしく、劇団は継続的な観客を得た。
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