青年団リンク 水素74%「謎の球体X」

◎徹底した悪意の提示と嘘をつく姿勢
 北川大輔

「謎の球体X」公演チラシ
「謎の球体X」公演チラシ

 小劇場に初めて触れた頃に「悪意」というキーワードが常にチラチラしていたのを思い出す。これは自分が劇作をやるようになった今も変わらない。有名無名の多くの劇作家が「悪意」を描き、その都度正直にイライラし、自分の中でその優劣をそのまま作品の評価としてきたようなフシがあった。今回この劇を観て目が醒めるような思いがしたのは、その悪意が純粋であるがゆえ、いや純粋というのは語弊があるかもしれない、体の良い感傷や実は愛などといった要らぬ装飾がないゆえに、自分の中に巣食う同類の感情を容易に探し当てることができたからなのではないか、と思っている。その上で、劇中徹底した「嘘をつく」ことで、私はごくごく当たり前のようにこの悪意と格闘することを許されていたのだ。
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