劇団掘出者「まなざし」

◎見えない演劇
黒川陽子

「まなざし」公演チラシ「嘘つきのパラドックス」というものがある。「クレタ人は嘘つきであると、クレタ人が言った」と言うとき、「クレタ人は嘘つきである」という部分が正しくても正しくなくても矛盾を生じてしまうというものだ。このときクレタ人は嘘つきなのか、嘘つきでないのか。もし「どちらでもない」と言うことができるとして、それでもなお、クレタ人は、いる。「嘘つき」というアイデンティティも、「嘘つきでない」というアイデンティティも持つことのできないまま、ひたすら不安定な存在として。劇団掘出者第7回公演『まなざし』は、【演劇】が「嘘つき」というアイデンティティも「嘘つきでない」というアイデンティティも持つことのできないまま、強制的に存在させられてしまったかのような、作品自体が巨大な打消し線を伴っているような、奇妙な舞台だった。

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