忘れられない一冊、伝えたい一冊 第14回

◎「一冊でわかる 歌舞伎名作ガイド50選」(鎌田惠子監修 成美堂出版 2006年)
 明神 慈

歌舞伎名作ガイド50選

 人生の中で、困難なプロジェクトに立ち向かうときがある。2012年の夏、まさにその真ん中にいた私を支えてくれた一冊を紹介したい。

 2013年開催の瀬戸内国際芸術祭のプレ企画として、芸術祭事務局・こえび隊の大垣さんからこんな依頼がきた。小豆島・中山農村歌舞伎の舞台にて、保存会の方々と、会所有の衣裳を使ってファッションショーを打つ。演出を担当してもらいたいと。私は学生時代、歌舞伎・舞踊研究会に所属していたので、歌舞伎のいろはを体感していた。農村歌舞伎が好きで、よく埼玉の小鹿野歌舞伎を観に行ったりもしていた。いつもは現代劇を創っているけれど、50歳になったら歌舞伎台本を書くつもりだったので、歌舞伎に関われるうれしさに、二つ返事で演出を引き受けた。
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