村川拓也「エヴェレットゴーストラインズ」
ルイス・ガレー「マネリエス」
She She Pop「春の祭典――She She Popとその母親たちによる」

◎隠すほど現れるもの――KYOTO EXPERIMENT 2014報告(第2回)
 水牛健太郎

 京都行の高速バスではせいぜい4~5時間しか眠れず、午前中梅小路公園で仮眠を取ろうとしたが、読んでいた本が面白すぎてうまくいかなかった。観劇中に寝てしまうのではと心配したが、この日3演目とも一瞬も眠くなることがなかったのだから、この週の演目がいかに充実していたかということだろう。どういうわけか3演目とも女性演者が上半身裸になる場面があったので、そのせいもあるかもしれない。一昨年だったか、海外演目で男性演者がやたらと男根を露出した年があったが、こういうのをシンクロニティと言うのだろうか。たぶん違うと思うが。
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ルイス・ガレー「マネリエス」
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高嶺格「ジャパン・シンドローム~step3.“球の外側”」
ティナ・サッター/ハーフ・ストラドル「House of Dance」

◎物語をいかに生成しないか――KYOTO EXPERIMENT 2014報告(第1回)
 水牛健太郎

 今年は秋の訪れが早い。京都も9月末にしてすっかり秋模様。抜けるような青い空に京都タワーがそびえたつ。条件さえ合えばすぐさま、絵ハガキもかくやという景色を見せる、腕利きエンターテイナーのようなこの街に、今年も帰ってきた。今回から4週にわたり、公式プログラムを中心に京都国際舞台芸術祭(KYOTO EXPERIMENT 2014)のレポートをお届けする。
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マームとジプシー「ΛΛΛ かえりの合図、まってた食卓、そこ、きっと———-」

◎食卓は待っているか?
(座談会)林カヲル+藤倉秀彦+麦野雪+大泉尚子

「わかりやすさ」をめぐって

藤倉秀彦:6月に上演されたマームとジプシー「ΛΛΛ かえりの合図、まってた食卓、そこ、きっと———-」。本題に入る前に、この作品の大まかなアウトラインを説明します。舞台は海辺の小さな町で、中心となる登場人物は、長女、長男、次女の三人。ある夏、長女と次女がそれぞれの娘を連れ、長男がひとり暮らす実家を訪れる。集まったひとびとは卓袱台をかこみ、食事をするわけですが、三人きょうだいの思い出の場であるその家は、区画整理によって取り壊されることが決まっているんですね。 “マームとジプシー「ΛΛΛ かえりの合図、まってた食卓、そこ、きっと———-」” の続きを読む

趣向「男子校にはいじめが少ない?」short version

◎永遠の夏を生きる男子たち
 水牛健太郎

ちらし 評を書こうという今になって思ったが、不思議なタイトルである。男子校にはいじめが少ない、という説なり調査があるのかどうか知らない。ともかくもタイトルどおり、男子校、の話であり、それもいじめとは無縁の、のほほんとした場面が展開されていく。
 といっても、男子高校生5人を演じるのは、全員女性である。おまけに歌あり、踊りありで、つまりはミュージカル。簡素な裸舞台ながら、いっそ、宝塚みたい、と言ってしまってもよい。
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連載「もう一度見たい舞台」第4回

◎新宿梁山泊「東京アパッチ族」
 水牛健太郎

 調べてみたら、この作品は一九九九年五月から六月にかけて神田花岡町の特設テントで上演されていた。私は一九九九年八月に、結果的に四年間に及んだアメリカ留学に出発したので、その直前に見たことになる。

 その頃の私は、演劇は見なかった。それまでの人生で確かに見たと言えるのは、小学生の時に市の文化会館で見せられた劇(確か、メキシコを舞台にした革命劇だった)と、高校の文化祭の演劇部の公演(作・演出の三年生が白塗りでオカマを演じた)ぐらいである。

 「東京アパッチ族」は、友人に勧められて見た。これがとても面白かったので、留学までの三か月足らずに、あと二、三本演劇を見た記憶がある。もっとも、留学中はブロードウェイで何回かミュージカルを見た程度。アメリカから帰って何か月も経ってから、「そういえば『東京アパッチ族』ってすっごく面白かった」と思いだし、これが演劇を見始める一つのきっかけになった。
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山の手事情社「ヘッダ・ガブラー」

◎生き生きしたゾンビ
 水牛健太郎

 薄暗い青い光で照らされた約2メートル四方の舞台には白い雪(繊維状の材料のようだ)が降り続いており、山のように盛り上がったところが何か所かある。そこに鮮やかな青いドレスを着たヘッダ(山口笑美)が現れると、盛り上がった雪の中から男3人が立ち上がり、ヘッダを取り囲んだ。こうして上演が始まった。
 今回の「ヘッダ・ガブラー」の特徴は何といっても、ヘッダを除く登場人物が「ゾンビ」として舞台に現れることだ。顔は白塗り、衣装はところどころ破れた薄いガーゼ状の布で覆われて、色あせてぼろぼろになった服を表現している。また彼らは舞台への登場と退場の際はぎくしゃくと不自然に身体を歪ませている。小道具は、花束や論文、ピストルなどすべてが、雪で代用されている。俳優が何かに見立てて床の雪を掴み取ると、それは指の間からはらはらと落ちていく。すべてはゆめまぼろし、死者の国での出来事であったかのようだ。

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サブテレニアン プロデュース 「キル兄(あん)にゃとU子さん」

◎近くて遠い国に伝うべきもの。
 柾木博行

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 晴れ渡った青空の下、ゆったりとのぼり旗がたなびいている。ずんぐりとした年配の男がマイクを片手に話す。
「全国の皆さん、お元気でしたか。今日も世界各地で希望を胸に頑張っておられる海外の同胞や勤労者の皆さん、ボランティアの皆さん、蒼い大海原を渡る外航と遠洋漁船員の皆さん、韓国を守る兵士の皆さん、そして全羅北道金堤市の市民の皆さん、ありがとうございます…」
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サンプル「永い遠足」

◎変態をつづける者たち
 三浦彩歌

 フェスティバル/トーキョー13(F/T13)の主催プログラムの一つである『永い遠足』は、フェスティバルのテーマである「物語を旅する」という観点から見ても、これまでの松井周の発言からしても、とても納得のいく作品であったように思える。(註)

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ゴーヤル・スジャータ「ダンシング・ガール」
フォースド・エンタテインメント「The Coming Storm – 嵐が来た」
バック・トゥ・バック・シアター「ガネーシャ VS. 第三帝国」

◎F/T13の海外ものから
 水牛健太郎

 先日閉幕したフェスティバル/トーキョー。今年は海外演目も大変充実していたようだ。見られなかった作品も多いが、見た範囲で印象に残った3作品についてまとめてみた。

◆ダンシング・ガール
 最初舞台上は暗く、踊り手の姿はほとんど見えない。照明は踊り手の膝、伸ばした右手、頭などごく一部を照らしては、溶暗していく。その繰り返しが随分長く、5分ほども続いた。照明は徐々に明るくなっていくが、それでも踊り手がはっきりとは見えない状態だ。動きはゆっくりで、うごめくよう。
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フォースド・エンタテインメント「The Coming Storm – 嵐が来た」
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東京芸術劇場「God save the Queen」

◎新しい女性性を巡って(鼎談)
 落雅季子+藤原央登 +前田愛実

 2011年に大きな話題を集めた芸劇eyes番外編「20年安泰。」。ジエン社、バナナ学園純情乙女組、範宙遊泳、マームとジプシー、ロロの五団体が、20分の作品をショーケース形式で見せる公演でした。それに次いで今年9月に上演されたのが、第二弾「God save the Queen」です。今回の五劇団を率いるのは、同じく若手でも女性ばかり。そのことにも着目しながら、この舞台について三人の方に語っていただきました。(編集部)
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