連載企画「外国人が見る小劇場」番外寄稿

 この企画にはすでに5人の方々が登場しました。国別でいうと、韓国、ルーマニア、カナダ、イタリア、ドイツ。いずれもインタビューでした。今回は番外の特別寄稿です。筆者は、ドイツのセバスティアン・ブロイさん。昨年末にインタビューを申し込み、数度の遣り取りを経て、寄稿形式でまとめてもらうことになりました。その間の経緯はブロイさんが原稿の冒頭で触れています。
 「異なる文化的背景で育った『眼』を通してみると、日本発の舞台芸術がはらむ意外な特徴が浮かんでくるかもしれない」との企画趣旨でした。欧米だけでなく、中国や東南アジアの方とも折衝しましたが、今回は残念ながらアジアは韓国の方だけになりました。しかし限られた「眼」に照らされるにしても、(日本の)「小劇場の意外な特徴」がいくつも浮かんできました。今回の番外寄稿で「小劇場の魅力、可能性、限界」がさらに掘り深く明らかになるのではないでしょうか。(編集部)

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連載「もう一度見たい舞台」第2回 劇団風の子「2+3」

◎「嘘言うなー!」(ぜひ京都弁のイントネーションで)
 都留由子

「風の子50年史」と「遊びの中の演劇」(作・演出の関谷幸雄の著書)
「風の子50年史」と「遊びの中の演劇」(作・演出の関矢幸雄の著書)

 もう一度見たい舞台を挙げるときりがない。孝夫・玉三郎の「桜姫東文章」、スウェーデンの劇団(名前を忘れてしまった)の「小さな紳士の話」、デンマークのボートシアター「フルーエン」、五期会の「そよそよ族の叛乱」、プロメテの「広島に原爆を落とす日」。どの作品も、いくつかの場面が鮮やかに目の前に浮かぶ。

 が、ひとつ、具体的な場面はほとんど覚えていないのに、もう一度見たい作品がある。1980年に京都のどこかの小学校の体育館で見た、劇団風の子の作品「2+3」だ。
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連載企画「外国人が見る小劇場」第5回

独自の世界観が魅力
 ウルリケ・クラウトハイムさん(ドイツ)

日本語プログラムで来日

 -来日したのは大学留学ですか。いつころだったのでしょう。

 クラウトハイム 2004年です。基本的には留学ですけど、その前はドイツで社会人生活を送りました。大学でドラマトゥルギーを専攻して、卒業してからある都市のとても小さな劇場で働きました。演劇のプログラムを担当していましたが、小さな劇場ですので、アーチストと交渉して制作現場を回す仕事など、何でもしていました。元社交ダンス場だった劇場です。
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連載企画「外国人が見る小劇場」第4回

◎システムを「革命」する「身体性」を
 カティア・チェントンツェさん(イタリア)

日本語より先に舞踏と出会う

-イタリアから帰国したばかりだそうですね。

チェントンツェ ボローニャ大学で開かれた国際舞踏学会のシンポジウムに出席して帰国したばかりです。ボローニャ大学には「カズオ・オーノ(大野一雄)アーカイブ」があります。世界的にとっても有名なアーカイブです。ボローニャ大学は演劇・音楽・映像・ダンスなど舞台芸術を勉強できるコースを備えたイタリアで初めての専門大学なんです。
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連載企画「外国人が見る小劇場」 第3回

◎義太夫節とアヴァンギャルド音楽に魅せられて 
 アントワーヌ・ラプリーズ(カナダ・ケベック)

Antoine01 アントワーヌ・ラプリーズさんはカナダのモントリオールを拠点する人形劇団《イエロー・サブマリン劇場》の主宰者だ。2013年7月からケベック州芸術・文化評議会(CALQ)のアーティスト・イン・レジデンス制度で東京に半年間、滞在し、12月末に帰国した。 “連載企画「外国人が見る小劇場」 第3回” の続きを読む

連載「もう一度見たい舞台」第1回
遊園地再生事業団「ヒネミ」

 小説、美術、映画、音楽など他の芸術ジャンルと比べたとき、舞台作品は後に残らないのが特徴と言える。他ジャンルが時を超えた形で鑑賞され、またその傾向が一層強まっているのに対し、舞台は非常に不完全な形でしか記録を残すことができない。かつて無数の公演が行われてきたが、DVD等で残っているものはほんの一部であり、また映像が残っていたとしてもそれは実際の公演とは全くの別物である。ワンダーランドも劇評を通じて貴重なアーカイブとしての役割を果たしているが、取り上げられる作品はほんの一握りである。
しかし舞台の「記録」「記憶」を後に残すことは貴重である。表現の様式や内容などのアイディアを残すことは、未来の創造につながる土壌となる。
わたしたち演劇を見るものひとりひとりの中にある記憶を呼び覚まし、舞台というものの魅力に目覚めた作品、光を放つ作品を取り上げることで、明日の舞台への橋渡しをしたい。また、知られざる素晴らしい作品の再評価につながれば、とも思う。原則として毎月1回、定期的に掲載していきたい。(編集部)

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連載企画「外国人が見る小劇場」 第2回

◎多様性あふれる小劇場 競い合って個性を磨く
 ラモーナ・ツァラヌさん(ルーマニア)

専門は能楽研究

-いま大学院で勉強しているそうですね。

ツァラヌ 早稲田大学文学部の大学院です。最初の1年間は研究生でしたが、(2013年)2月に試験に通って正規生になりました。文部科学省の奨学金をいただいてこちらで3年間勉強できることになりました。 “連載企画「外国人が見る小劇場」 第2回” の続きを読む

連載企画「外国人が見る小劇場」 第1回

◎スタッフがすばらしい チケット・ノルマにびっくり、演技にがっくり
 金世一さん(韓国)

 日本の劇団、ダンスカンパニーの海外公演が多くなった。海外に出かけて欧米、アジアの演劇に親しむ人も珍しくない。しかし最近は海外から日本にやって来て、小劇場の演劇やダンスに関心を持つ人たちも目に付くようになった。どこにどんな魅力があるのか、共通のテーマやモチーフが見えるのか、異質の何かが隠れているのか-。
 世界の垣根が低くなったと言われている折り、異なる文化的背景で育った「眼」を通してみると、日本発の舞台芸術がはらむ意外な特徴が浮かんでくるかもしれない。日本の演劇やダンスに詳しいアジアや欧米の人たちの話を聞いてみた。
(ワンダーランド編集部)

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忘れられない一冊、伝えたい一冊 第35回

◎「フルトヴェングラー 音楽ノート」 (白水社 芦津丈夫訳)
  山本卓卓

「フルトヴェングラー 音楽ノート」表紙
「音楽ノート」表紙

 正直、5年くらい前の僕にとってクラシック音楽は鬱陶しいだけでした。
 芝居の音選びのためにTSUTAYAで借りてきたりして「クラシック100選」的なものとかを…
 いざ聴いてみるとなんかどれも大仰な感じがしたし、交響曲とか協奏曲とか室内楽とかオペラ音楽とか種類がいっぱいあってややこしくて、それよりなによりファッションに成り得ないのです20歳そこそこの若者にとってクラシック音楽は。
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忘れられない一冊、伝えたい一冊 第34回

◎ハイラム・ビンガムがマチュ・ピチュを発見する話(タイトル/作者/出版社不明)
 杉山至

 秋口だったと思う。私が小学生だった35年くらい前の。

 小学校の2階の外れ、木漏れ日の入ってくる放課後の図書室でその一冊に出会った。
 インカ帝国? 南米ペルー? マチュ・ピチュ? 当時はまだ、名前も聞いた事のない単語が並んでいて、これが架空の冒険譚なのか実話なのかさえ知らず夢中で文字を追いかけたのを覚えている。
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