《観劇体験を深める》ワールド・カフェ

◎観劇体験を深めるワールド・カフェのススメ
 平松隆之・白川陽一

●演劇の感想を語り合う場をつくる-ワールド・カフェとの出会い(平松隆之)

 2012年10月、静岡県舞台芸術センター(SPAC)で「静岡から社会と芸術を考える合宿ワークショップ」という2泊3日のワークショップを開催しました。私としらさん(白川陽一)はこれに、外部のファシリテーター(=ワークショップの進行・かじ取り役)として関わりました。合宿プログラムでは、初日の始めに観劇が予定されており、事前のSPACの方たちとの打ち合わせで、参加者同士で感想を語り合う機会を是非設けたい、ということになりました。
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連載企画 観客が発見する 第4回(座談会)

◎観客の世界を開く
 澤田悦子・田中瑠美子・黒田可菜・廣澤梓(発言順)

―ワンダーランドのとりあえず最後の企画は、観客から見た演劇を明らかにしたい、という狙いがあります。今回、芝居に関心がある人で、話していただけそうな人を選んだら、たまたま女子会になった(笑)。みなさんはワンダーランドの「劇評を書くセミナー」に参加しています。顔見知りだとは思いますが、あらためて演劇に関心を寄せているわけ、何が劇場に向かわせているのか、ご自身と演劇の関わりについてお話いただくところから始めたいと思います。
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連載企画 観客が発見する 第1回

年10本見る人が1000人単位でいてほしい
 新道喜一郎さん

―舞台を作る人たちや、作られた舞台上の出来事だけから演劇を考えるのではなくて、見ている人も含めて演劇を考えてみたい、というのがワンダーランドの隠れコンセプトです。これまで劇評やレビューを書く人は研究者や評論家、演劇関係者が多かった。でもそれはある種、特別な観客でしょう。おそらく新道さんは劇場に通う回数は多いけれども、演劇の専門家との意識はないし自分のキャリアには結びついていないですよね。
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悪魔のしるし「わが父、ジャコメッティ」

◎再現の美学
 柴田隆子

悪魔 チラシ画像 ジャコメッティの描く肖像画は不思議だ。遠くから見ている時はちゃんと「顔」に見えるのに、近くに寄るとぐにゃぐにゃと塗り重ねられた絵具の跡しか見えなくなってしまう。絵筆がキャンパスに届く距離では絵具の跡にしか見えないのに、画家はどうやって描いたのだろう。1つ1つの線には大した意味などないように見える。が、距離をとるとそれは確かな像を結ぶ。悪魔のしるし『わが父、ジャコメッティ』もどこかジャコメッティの描く絵に似ている。個々のエピソードは笑いを誘うだけの意味などないものに見えるが、距離をとると舞台芸術における「演劇作品」の新しい像を結んでいるように思えるのだ。
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KYOTO EXPERIMENT 2014

◎観劇体験「KYOTO EXPERIMENT 2014」
 柴田隆子

 芸術の秋に加え、オリンピックの文化プログラムを意識してか、あちこちで芸術祭が賑々しい。京都国際芸術祭KYOTO EXPERIMENTと相前後して、東京ではダンストリエンナーレを引継いだ「Dance New Air ダンスの明日」や「フェスティバル/トーキョー14」が、地元横浜でも「ヨコハマトリエンナーレ」とは別に「神奈川国際芸術フェスティバル」が開催されている。芸術祭の名ではないものの、複合的なイベントは東京近郊ではたくさんあり、その気になれば毎日どこかで舞台を見ることができる。では、なぜ京都なのか。

 芸術祭は祭りだ。同じ祭りなら非日常がいい。日々の雑事を忘れ、舞台に集中したい。JR東海だって言っている、「そうだ、京都、行こう!」。去年観て気になったShe She Popの公演は今年も京都のみだし、週末なら3~4公演が見られる美味しい設定。会場毎の一律チケット料金制も値ごろ感があるし、ついでに京都観光だってできるかも。次々に発行されるニュースレターや作品についての紹介記事を読むと、気になるんだよね。
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「2014国際児童・青少年演劇フェスティバルおきなわ」

◎キジムナーと呼んでいた祭りを、別の名前にしてみても、強い志はそのまま
 鈴木アツト

kijimuna2014_suzuki_atsuto 「アジアで国籍を超えた劇団を作って、アジア中の子供たちに素晴らしい児童演劇を見せて回りたい。それが私の夢です。」

 2014国際児童・青少年演劇フェスティバルおきなわ(昨年までの名称はキジムナーフェスタ)の総合プロデューサーの下山久さんの言葉には、不覚にも心を揺さぶられた。今年で10周年を迎えたこのフェスに、私は観客として7月30日から8月3日までの5日間、参加した。これは、その5日間のレポートである。
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ままごと「戯曲公開プロジェクト」をめぐるインタビュー(2)

◎「いま・ここ」を超える劇性の作り手
 關智子

 前回の記事では、「ままごと」の柴幸男氏と制作・宮永琢生氏に「戯曲公開プロジェクト」の企画意図と今後の発展についてお話を伺った。そこで改めて、「劇作家とはどういう職業なのか?」という問いが浮上した。
 現在、ヨーロッパを中心に、劇作家の仕事を問い直す動きが見られる。それは、いわゆる「戯曲らしい戯曲」を書かない劇作家が増えていることに起因する。
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ままごと「戯曲公開プロジェクト」をめぐるインタビュー(1)

◎戯曲のミックステープ
 關智子

 小劇場レビューマガジン・ワンダーランドを訪れる方の多くは演劇が好きな人だと思っている。したがって、今この記事をお読みになっているあなたもその一人と仮定しながら書いている。では、戯曲はどうだろうか。演劇が好きなあなた(仮)は、同じくらい戯曲をお読みになるだろうか。観客に好きな劇作家の名前を訊いて、いや、好きでなくても構わない、知っている日本の劇作家の名前を訊いて、どのくらいの名前が挙がるだろう。日本劇作家協会会員のリストを見ると、意外な多さに驚き、さらに彼らの作品の多くが容易には手に入らないことを知る。大学図書館に行ってジャンルごとに分けられた棚を眺めると「日本戯曲」の棚は狭い。その内現代戯曲は少数であり、世紀末以降となるとさらにその一部しか占めない。
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鳥公園「緑子の部屋」

◎鳥公園「緑子の部屋」から考える
(鼎談)落雅季子+鈴木励滋+野村政之

『緑子の部屋』をどう見たか

—11月にはフェスティバル/トーキョー14でも、鳥公園主宰の西尾佳織さんの作品の上演が予定されています。『緑子の部屋』は3月に大阪と東京で上演されました。今回は東京公演についてお話をうかがいます。とてもざっくりした言い方になりますが、緑子という女性がもう死んで居なくなっている状況で、緑子の兄と、一緒に住んでいた大熊という男性と、友だちだった井尾という女性が三人で集まって緑子のことをいろいろ思い出したり、昔のシーンが挿入されたりするという物語でしたね。それから、最初と最後で、とある「絵」について語る場面がキーポイントになっていました。ではまず、お一人ずつ、今日の話の糸口となるようなところから伺いたいと思います。
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北九州演劇フェスティバル2014 関連企画「劇トツ×20分」

◎20分でも「演劇」として
 柴山麻妃

劇トツチラシ 昨年度から、日本劇作家協会主催の「劇王」出場権を争って、九州地区でも「劇トツ×20分」が始まった。これは、「上演時間20分」「登場人物は3名まで」というルールのもとで作られた作品の中から、観客と審査員の投票で優勝作品を選び出すというものだ。

 3月に北九州芸術劇場で開かれた第二回目は、昨年度の稽古場での公演から小劇場へと場所が替わり(縦横一間ずつ広くなった)、より本格的な上演形態となった。今回出場したのは5劇団、優勝した劇団には北九州芸術劇場・小劇場での上演権が与えられる。審査員には「ままごと」の柴幸男氏、映画監督のタナダユキ氏。試験的な一回目に比べ、今年は全体的に作品の質も上がり見応えのある大会になった。

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