プリセタ「モナコ」

◎おじさんは、さまよい、さすらう 若くないことを受け入れて立つ肉体
徳永京子(演劇ライター)

プリセタ「モナコ」公演チラシ大好きだったバンドへの興味が急に冷めた瞬間を覚えている。そのバンドが、実年齢よりもずっと若いボキャブラリーで曲をつくり、永遠の青臭さを定位置にするつもりだと気が付いた時、はっきりと「もう新譜を買うことはないだろう」と予感した。年を重ねれば考え方や感じ方が変わるのが当たり前で、その変化をどう受け止め、どう作品に採り込むか。そこに生まれる表現に、私はその人が表現者として正直かつ誠実であると感じ、興味を持つ人間なので、残念ながら熱心なリスナーを辞退したのだった。

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時間堂「月並みなはなし」

◎やわらかな手つきで世界を変える
徳永京子(演劇ライター)

「月並みなはなし」公演チラシ結局、演劇をはじめとするあらゆる表現活動は、世界を変える方法のアイデア提示だとは言えないか。つくり手が認識する、あるいは目指す「世界」の広さ、「変化」の規模はさまざまだが、自分(達)の作品に接した前と後で観客の意識が変わることを目指さない表現者はいない。つくり手が自覚的か無自覚かに関わらず、演劇は世界の定義を広げていく運動に他ならない。脚本や演出のスタイルの差異とは「だから自分は変えたい」という動機、「自分だったらこう変える」という具体策の差異なのだ。

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