ポツドール「恋の渦」

◎舞台の上に充満する「空気」 内在化された想像上の他者の視線
松井周(青年団リンク「サンプル」主宰)

「恋の渦」公演のチラシポツドール的なるものを挙げるとすると、以前なら例えば暴力やエロといった言葉が浮かぶこともあっただろうが、今となってはそういったことを切り口にポツドールを捉えようとしてもどこか本質を取り逃がしてしまう気がする。本質というと何か実体がありそうだが、そういうものでもなく、あえて言うなら「空気」と呼ぶような目に見えないものである。舞台の上に充満する「空気」を感じるために私たちはポツドールを観ているのだろう。観客だけでなく、俳優、スタッフ、演出も含めて全ての者がその「空気」に奉仕しているような感覚を受ける。

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エジンバラ演劇祭2006-7(最終回)

◎明確な戦略で積極参加を 日本勢の活躍に期待
中西理(演劇コラムニスト)

写真はSt Stephenの全景(筆者撮影)AURORANOVA FESTIVAL(アウロラノヴァ・フェスティバル)*1はエジンバラ・フリンジフェスティバルで唯一、海外から参加の劇団も含めフィジカルシアターとダンスの演目だけを集めて行っているフェスティバルである。これまでの年でも複数のカンパニーがFringe FirstやHerald Angel Awards といった優れた公演を対象とした賞を受賞しており、Fringe公演ながら公演内容の水準の高さには定評があり、地元メディアからも注目され高い評価を受けている。 今年は全部で13演目ですべての演目を見ることができた。

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マシンガンデニーロ「クロスプレイ」

◎生の重みという同時代へのメッセージ
栂井理依(舞台芸術ライター)

「クロスプレイ」公演のチラシ。クリックすると拡大表示私たちは、生きるために生まれてくる。その前提があるから、懸命に生きようと思うことができる。では、死ぬために生まれさせられるのだとしたら? いや、そうでなくとも、ある目的のために<生>を強いられるとしたら? それでも、私たちは同じように懸命に生きることができるだろうか。

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週刊マガジン・ワンダーランド第22-23合併号発行

 今週号には新しい書き手が2人登場しました。「恋の渦」評を書いた松井さんは青年団の俳優として、2005年のニセS高原プロジェクトでポツドール組(三浦大輔演出)に出演しています。来春の青年団リンク「サンプル」旗揚げ公演の準備で忙しい中、執筆してもらいました。栂井さんは関西のレビューサイト「Culture Critic Clip 」で活躍していた方です。東京に転勤したのを機にお願いしました。ともにこれからも登場していただきたいと考えています。
 「エジンバラ演劇祭2006」は今号に掲載した第7回で終了です。第10号(10月4日発行)から2か月余りの長丁場となりましたが、なんとか年内にフェスティバルの全貌を知ることができました。これほど詳しく、かついきいきとしたフェスティバルの記録は例がないのではないかと思います。本当にお疲れ様でした。
 この年末合併号で今年は終わりです。年明けは1月10日発行の「ソウル市民」三部作特集でスタートします。ご期待ください。

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年末回顧特集「振り返る私の 2006」(最終版)掲載

 年末恒例の回顧アンケート企画を実施しました。これまで「マガジン・ワンダーランド」やwonderlandサイトに寄稿していただいた筆者のほか、ネット上でレビューを発表している方々にお願いしました。週刊「マガジン・ワンダーランド」特別編集号(12月22日発行)に掲載したあと、追加と修正があります。最終的には12月24日までにいただいた計30人の回答を到着順に並べました。年末回顧特集「振り返る私の 2006」をご覧いただけば、多様な公演に見合った、多彩な観客がいたことが分かると思います。右メニューからもご覧いただけます。


パラダイス一座「オールド・バンチ  男たちの挽歌」

◎真の主役は「演劇愛」 温かさに包まれた一座の船出
村井華代(西洋演劇理論研究)

「オールド・バンチ 男たちの挽歌」公演チラシ流山児★事務所の『狂人教育』を観に行ったら、にわかには信じられないようなチラシが挟まっている。キャスト・戌井市郎、瓜生正美、中村哮夫、肝付兼太、本多一夫、高橋悠治。映像出演に観世榮夫、岩淵達治。箔つきの大御所ばかりではないか。この人々が高齢者劇団「パラダイス一座」を旗揚げし、山元清多のホンで共に12月、演出・流山児祥でスズナリの舞台に共に立つのだという。しかもチラシ写真と題字がアラーキー。美術は妹尾河童と書いてある。

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清水邦夫作、蜷川幸雄演出「タンゴ・冬の終わりに」

◎晩冬に咲く桜
今井克佳(東洋学園大助教授)

なんと贅沢な芝居だろうか。開幕と終幕の場面だけ登場する80人の群集のシーン。知名度も実力も高い俳優陣。有名俳優をおしげもなく出番の少ない傍役に配置する。見た目は決して派手ではないが、現在の蜷川幸雄だからこそ、これだけの芝居がシアターコクーンで打てるのだ。まずは蜷川が上り詰めたその地位に驚嘆せざるをえない。

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週刊マガジン・ワンダーランド第21号発行

 今週の「マガジン・ワンダーランド」は大家・大御所が出番の舞台が取り上げられました。「オールド・バンチ」では強盗と宴会の狭間に戦争が垣間見えたようです。「タンゴ・冬の終わりに」では風と闇が交錯し、クジャクや桜がお目見えしました。演劇が時代の視線と向き合う時に生じる隙間と揺らぎかもしれません。「オールド・バンチ」を主催した流山児★事務所のwebサイトには「来年12月『続オールド・バンチ』ザ・スズナリで再び、お会いしましょう」とありました。

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チェルフィッチュが来年5月にベルギー公演

写真は、マンスリー・アートカフェで話し合う岡田利規さん(中央)とスラフマイルダーさん(右)。左は司会の相馬千秋さん(急な坂スタジオ ディレクター)超リアルなせりふや脱力的な身振りなどで知られる演劇ユニット「チェルフィッチュ」(岡田利規主宰)が2007年5月にベルギーの首都ブリュッセルで開かれる現代芸術祭クンステン・フェスティバル・デザールに招待され、代表作「三月の5日間」を上演することになりました。同フェスティバルは世界の先鋭的実験的な若手アーチストを紹介する場として知られ、1990年代後半は日本からパフォーマンスグループのダムタイプ、コンテンポラリーダンスの踊り手、振付家として活躍している勅使川原三郎さんが参加したそうです。

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新人戯曲賞は嶽本あゆ美「ダム」

 第12回劇作家協会新人戯曲賞公開審査会が12月17日午後6時30分から東京・新宿の紀伊國屋ホールで開かれ、嶽本あゆ美「ダム」が新人戯曲賞を受賞しました。
 受賞作「ダム」は熊本県の山奥に予定されたダム建設現場近くの民宿が舞台。廃村同然の故郷で細々と民宿を営む中年女性、彼女と付き合うダム工事事務所の若い職員、昔ダム開発反対運動に関わったが今は環境カウンセラーとして登場する50代後半の大学教授らが織りなす物語。「人物設定とプロットが綿密に仕組まれ、時代の変わり様を母子二代で描き出した」(斎藤憐)「40歳女性のつらさが痛いほど浮かんでくる」(鴻上尚史)「社会問題と土俗的モチーフが融合され、神話的世界を作ることに成功した」(永井愛)など高い評価を受けました。

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