黒沢美香&ダンサーズ「ダンス☆ショー きみの踊りはダンスにしては重すぎる」

◎「不揃いの美」によるクールな知性の発露
伊藤亜紗(ダンス批評)

綱島ラジウム温泉「東京園」大広間本日の「ショー」会場は何と温泉施設内の大広間。障子戸を開けると意外にもなかは温室のようでガラス張りから冬の陽光が差込み、とはいっても中庭越しに否応無く目に飛び込んでくるのは酔っぱらったじいさんばあさんのまったりとした雑魚寝風景である。ダンスをアートとしてしつらえるなら排除するであろう、あらゆる猥雑さに満ちた寛大な空間。「携帯電話、アラーム付き時計など、その他音の出る機械はどうぞご自由にお使いください」とのアナウンスに始まり、横に長い舞台はもちろんカラオケ仕様、袖と舞台を区切るのはビロードの布などではもちろんなく、歌磨か何かがプリントされたひょろ長い暖簾である。

“黒沢美香&ダンサーズ「ダンス☆ショー きみの踊りはダンスにしては重すぎる」” の続きを読む

劇団犯罪友の会「かしげ傘」

◎諧謔に満ち哀切な心情を喚起する重層的な物語
大岡淳(演出家、演劇批評家)

「かしげ傘」公演チラシ関西野外劇の雄として知られる劇団犯罪友の会は、今年で創立30周年だそうだ。私はこの集団を、アングラ演劇の最良の部分を継承し発展させている劇団だと考え、演劇批評家として一貫して評価し、支持し、応援してきた。今年10月に上演された『かしげ傘』は、「30周年超大作野外劇」と銘打たれているだけあって期待に違わぬ力作であったが、これを見ながら私は、もはや「アングラ」云々という文脈でこの集団の魅力を語る必要はなくなったのだな、とふと思った。「犯友」の芝居は、「犯友」の芝居以外のなにものでもなく、殊更に他の芝居との共通性を指摘したり、あるいは相違点を強調したり、といった、私自身がこれまでやってきた批評的な作業は、なんだかさかしらな営為に過ぎなかったような気がしてしまった。それほどに、この集団は、他の追随を許さぬ独自の魅力を備えた劇団として成熟しつつあることを、確認した次第である。

“劇団犯罪友の会「かしげ傘」” の続きを読む

太陽劇団「Le Dernier Caravanserial《最後のキャラヴァン宿》」

◎テクストと身体-日本の翻訳劇制作現場で考える  芦沢みどり ▽太陽劇団の最新作に即して  このところ学校でのいじめを苦にした小中学生の自殺が頻発して、教育委員会の対応やマスメディアの報道のあり方も含めて、社会の関心の的 … “太陽劇団「Le Dernier Caravanserial《最後のキャラヴァン宿》」” の続きを読む

◎テクストと身体-日本の翻訳劇制作現場で考える
 芦沢みどり

▽太陽劇団の最新作に即して
 このところ学校でのいじめを苦にした小中学生の自殺が頻発して、教育委員会の対応やマスメディアの報道のあり方も含めて、社会の関心の的になっています。最近の子どもには他者への想像力が欠けている、といった言説もメディアを通して聞こえてきます。昨今の日本が子どもに限らず想像力を欠いた社会であることは間違いないにしても、自他ともに人を尊重しなくてはいけないといった倫理観は、自他の概念が曖昧なまま思考停止のミーイズムに陥っているかに見えるこの国では、いくら学校が道徳教育に力を入れたところでそう簡単に育つものではなかろうに、と思うのですが。

“太陽劇団「Le Dernier Caravanserial《最後のキャラヴァン宿》」” の続きを読む

週刊マガジン・ワンダーランド第20号発行

 今週の週刊マガジン・ワンダーランド(第20号、13日発行)は、思いっきり離れているかに見える公演評3本を掲載しました。黒沢美香&ダンサーズ「ダンス☆ショー きみの踊りはダンスにしては重すぎる」、劇団犯罪友の会「かしげ傘 … “週刊マガジン・ワンダーランド第20号発行” の続きを読む

 今週の週刊マガジン・ワンダーランド(第20号、13日発行)は、思いっきり離れているかに見える公演評3本を掲載しました。黒沢美香&ダンサーズ「ダンス☆ショー きみの踊りはダンスにしては重すぎる」、劇団犯罪友の会「かしげ傘」、太陽劇団「Le Dernier Caravanserial《最後のキャラヴァン宿》」です。コンテンポラリーダンスの極北、いわゆるアングラ演劇の最良の文脈、政治社会が析出する問題と格闘する海外演劇の先端-。たまたま集まったこの3点から引いた補助線が交差するあたりに、「いま」の輪郭が浮かんでくるような気がします。「エジンバラ演劇祭2006-7」(最終回)は筆者の都合により次号掲載となりました。以下、目次です。

“週刊マガジン・ワンダーランド第20号発行” の続きを読む

東京国際芸術祭(TIF)がユース・サポート・スタッフ募集

 東京国際芸術祭(TIF)2007がユース・サポート・スタッフ募集を募集しています。  TIFは毎年2-3月に内外の舞台芸術作品を紹介する国際フェスティバルです。NPO法人アートネットワーク・ジャパン(ANJ)が主催し、 … “東京国際芸術祭(TIF)がユース・サポート・スタッフ募集” の続きを読む

 東京国際芸術祭(TIF)2007がユース・サポート・スタッフ募集を募集しています。
 TIFは毎年2-3月に内外の舞台芸術作品を紹介する国際フェスティバルです。NPO法人アートネットワーク・ジャパン(ANJ)が主催し、今年も2月1日から3月いっぱいの2か月、東京を中心に5個所の劇場で19演目の上演が予定されています。
 ユース・サポート・スタッフはTIF期間前後の約2か月、公演制作、広報など実践的に研修するそうです。内外の演劇に関心があり、舞台制作の経験を積みたいと考える人には格好の機会かもしれません。年齢は原則として25歳まで。海外公演担当組は語学能力が必要。応募締め切りは12月18日(月)。詳細は募集ページをご覧ください。

鈴木忠志演出「シラノ・ド・ベルジュラック」「イワーノフ/オイディプス」

鈴木忠志演出「シラノ・ド・ベルジュラック」「イワーノフ/オイディプス」
◎筒井康隆を読むように鈴木忠志を観よ
田口アヤコ(演劇ユニットCOLLOL主宰)

新国立劇場にての鈴木忠志氏演出の3作品連続上演。
16年ぶりの東京公演、ということで、
日本の演劇界をおおきくゆさぶる2006年の一大ニュース、だった
日本人演出家のなかで
これほど世界に認められ、愛された人はほかにはいない、
ケンブリッジ大学刊行の
「20世紀を主導した劇作家、演出家21人」というシリーズに
スタニスラフスキー、ブレヒト、ピーター・ブルックと並んで
アジア人から ただ一人選ばれているらしい。すげえ!!!

“鈴木忠志演出「シラノ・ド・ベルジュラック」「イワーノフ/オイディプス」” の続きを読む

週刊マガジン・ワンダーランド第19号 発行

 週刊マガジン・ワンダーランド第19号が発行されました。毎週水曜日発行です。  今週は、鈴木忠志演出「シラノ・ド・ベルジュラック」「イワーノフ/オイディプス」を取り上げました。独特のリズム感ある文章に身を浸してください。 … “週刊マガジン・ワンダーランド第19号 発行” の続きを読む

 週刊マガジン・ワンダーランド第19号が発行されました。毎週水曜日発行です。
 今週は、鈴木忠志演出「シラノ・ド・ベルジュラック」「イワーノフ/オイディプス」を取り上げました。独特のリズム感ある文章に身を浸してください。来週はおもしろくて尖った、たっぷり考量を必要とする原稿を届けられるはずです。ご期待ください。「エジンバラ演劇祭」最終回は筆者の都合で次号掲載となります。内容は以下の通りです。

“週刊マガジン・ワンダーランド第19号 発行” の続きを読む

かながわ戯曲賞は下西啓正「廻罠(わたみ)」

 第6回かながわ戯曲賞(財団法人神奈川芸術文化財団・神奈川県主催)の公開審査が12月4日、横浜のSTスポットで開かれ、最優秀賞(賞金50万円)に「廻罠(わたみ)」(下西啓正・乞局)、佳作(同10万円)に「夜のアンプリファ … “かながわ戯曲賞は下西啓正「廻罠(わたみ)」” の続きを読む

 第6回かながわ戯曲賞(財団法人神奈川芸術文化財団・神奈川県主催)の公開審査が12月4日、横浜のSTスポットで開かれ、最優秀賞(賞金50万円)に「廻罠(わたみ)」(下西啓正・乞局)、佳作(同10万円)に「夜のアンプリファイア」(石維裕子)が選ばれました。最優秀作品はドラマリーディングの形で2007年に上演されます。

“かながわ戯曲賞は下西啓正「廻罠(わたみ)」” の続きを読む

仏団観音びらき「宗教演劇」

「宗教演劇」公演チラシ大阪の劇団「仏団観音開き」の東京公演(10月14日-15日、新宿タイニイアリス)は爆笑、興奮の渦だったようです。「仏団」はその後、横浜で開かれた「ぶたばん2006」(10月28日-29日)というライブイベントに劇団鹿殺し、毛皮族、宇宙レコードらと一緒に出演するなど知名度を上げています。遅れ遅れですが、アリス公演のレビューがいくつか載っているので紹介しましょう。

“仏団観音びらき「宗教演劇」” の続きを読む