野田地図「ロープ」

◎内輪的エンターテインメントへの欧米か!的ツッコミ
鈴木厚人(劇団印象-indian elephant-主宰/脚本家/演出家)

「ロープ」公演チラシ表たとえば、「野田版鼠小僧」の歌舞伎座に建て込まれた江戸八百八町の巨大な町並みが、突然動き回り出す興奮。たとえば、「透明人間の蒸気」の十数人の役者が、奥行き50メートルの新国立劇場の舞台を、全速力で客席に向かって走り込んでくる興奮。でっかいものを、ただ回すだけで面白い。だだっ広いところを全力疾走するだけで面白い。いつだって「彼」がつくるのは、メッセージがあふれた舞台。それもメッセージが言葉だけじゃなく、動く空間、動く役者によって観客に届けられる芝居。でも、2006年12月14日に僕が見た、「彼」の新作舞台「ロープ」は、ただ面白いものを見たいと思う、無知な観客の無邪気な期待を裏切る、言葉という名のメッセージにあふれた舞台だった。

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らくだ工務店「幸せのタネ」(中)

2. 転換点となった『幸せのタネ』
堤広志(演劇・舞踊ジャーナリスト)

「幸せのタネ」公演チラシ●岐路に立った劇団
ナチュラルな演技に基づいた絶妙なアンサンブルにより、インティメート(親密)な空気感を醸し出す。らくだ工務店が、そうした「アンティミスト(親密派)」な傾向を持つ劇団であるということを前章で書いた。そして、その表現は石曽根有也の「日常」を優しく活写しようとする戯曲と、緻密にして厳格な演出、それに応える劇団員たちの不断の努力があって、初めて成立するものであると思われた。

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