◎逃げ場のない関係性に陥った人間を描く 他者の他者性に漸近する現代劇
大岡淳(演出家・批評家)
『綿畑の孤独の中で』は、フランスの劇作家ベルナール=マリ・コルテスの代表作として我が国でも知られているが、実際の上演に触れる機会に乏しい私たちにしてみれば、この特異な戯曲に相応しい演出がどのようなものかについては、なかなか想像がつかないというのが正直なところではないか。しかしこのたび来日を果たし、「Shizuoka春の芸術祭2007」にエントリーしたラ・スフルリー劇団による公演『綿畑の孤独の中で』は、ともすれば難解なダイアローグの連続とも見えるこの戯曲を、明快なスタイルと強烈なインパクトを備えた芝居に仕立て上げたという点で、意義深いものであった。