小指値「[get]an apple on westside」「R時のはなし」

◎再現行為それ自体を遊ぶアプローチ
伊藤亜紗(ダンス批評)

仕掛けのある舞台美術にダンスあり歌あり映像あり曲芸(?)ありと簡単に「演劇」の枠でくくることのできないパフォーマンス集団、小指値。多摩美術大学の卒業制作公演として2004年に北川陽子が旗揚げした超若手集団だが、確実に洗練されつつあるその方法論は、すでにチェルフィッチュともポツドールとも五反田団とも違う、わくわくする新しさに到達している。ポジティブ&ハイテンションが売りの彼らだが、しかしそれとてテイストで一気につきぬけるためのパワーなのではない。「物語ること」「演じること」に対する彼ら独特のアプローチを形にするための、必要不可欠な説得力なのだ。

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サーカス劇場「隕石」

◎若さと、かく乱のエネルギーと、真っ当さと
芦沢みどり(戯曲翻訳家)

「隕石」公演チラシ劇団サーカス劇場・・・どこか郷愁を感じさせる蠱惑的な名前に惹かれて、雨の夕方、下高井戸の「不思議地底窟 青の奇蹟」へ出かけて行った。「隕石」は2001年に東京大学のキャンパスで旗揚げされたグループの14回目の公演だが、筆者はこれが初遭遇。
急な階段を地階へ降りて行くと、え、え、えー!これが劇場なの?何とも狭い空間だ。奥に畳が6枚敷かれた舞台があり、その手前には1列5、6人ほどの座布団席が2列とベンチが1脚。これで全てだ。早速ベンチ席を確保して左右に目をやると、ビリジアン色に塗られたテーブルらしきものが壁いっぱいに畳み込まれていて、見ていると海の底に迷い込んだ気分になる。たぶんこれを壁から外して広げれば、あら不思議。劇場がバーに、バーが劇場に早変わりする仕掛けなのだろう。超矮小空間を二通りに使い分ける悪魔的頭脳に感心してしまった。この壁が狭い空間に不思議な雰囲気を与えていた。

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THE SHAMPOO HAT「その夜の侍」

◎現代の不幸に敏感な作家が描く不幸と成長
高木 登(脚本家)

「その夜の侍」公演チラシ初見は第十一回公演『蠅男』(2001年10月)である。チラシが素敵だったのと、遊園地再生事業団の制作者だった永井有子が同ユニット活動休止中に制作をしていると聞いた劇団だったので、これはまちがいなかろうとスズナリに足を運んだのだ。結果は当たりで、正気と紙一重の狂気、現実と紙一重の虚無をシニックな笑いで包んだ傑作だった。虚無の深淵を垣間見せることのできる才能は少ない。それはたとえば作家でいうと深沢七郎とか色川武大らのことであり、才能というよりはむしろその実存に拠るところが大きい。赤堀雅秋はその種のひとなのだった。

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流山児★事務所「オッペケペ」

◎日本「近代」新演劇、新劇に非ずや
村井華代(西洋演劇理論研究)

「オッペケペ」公演チラシ流山児★事務所を特に追いかけているわけではない。が、批評を求められても何も出てこない再生産性ゼロの舞台も少なくない中、流山児★事務所の作品は企画自体が興味深く、こういう次第の作品を流山児がやる、と聞くと「見たい」と思うことが多い。「流山児★ザ新劇」と銘打たれた今回の作品もそんな調子で見に行った。

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遊園地再生事業団「ニュータウン入口」<クロスレビュー>

「ニュータウン入口」クロスレビューがスタートします。毎月1回をめどに考えていますが、どんな公演を選ぶかは機械的に決められません。時期的なズレが生じたときはご容赦ください。できるだけ演劇やダンスの幅と深みが期待できそうな公演、パフォーマンスの枠組みに触れる試みを見逃さないようにしたいと考えています。
最初に取り上げるのが遊園地再生事業団公演「ニュータウン入口 または私はいかにして心配するのをやめニュータウンを愛し土地の購入を決めたか」です。主宰の宮沢章夫さんは小説やエッセーも発表するなど幅広く活躍していますが、新たな公演を開くたびに注目される劇作家であり演出家です。これまで本メディアは長文の劇評を公演終了1ヵ月ほど後に掲載してきましたが、短文でもいち早く複数の執筆者の見方考え方を知りたいという声も聞いています。そこでこの企画を始めました。本文は400字。執筆者の5段階評価が付き、五つ星が満点です。
今回は急な企画になりました。これから走りながら追々、形を整えていくつもりです。不備があったらご容赦ください。クロスレビューは今後、原則として週刊マガジン・ワンダーランド臨時増刊号として発行し、その後webサイトwonderlandにも掲載します。執筆者のwonderland寄稿一覧ページへのリンクも付け加えました。掲載レビューは到着順です。

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MIKUNI YANAIHARA PROJECT「青ノ鳥」

◎世界のノイズ化とアンコントロール いまのリアルを舞台に上げる
中西理(演劇コラムニスト)

「青ノ鳥」公演チラシMIKUNI YANAIHARA PROJECT*1「青ノ鳥」*2(吉祥寺シアター=9月24日マチネ)を観劇した。インターメディア・パフォーマンス集団、ニブロールを率いる振付家・ダンサーである矢内原美邦はそれ以外にも最近はoff nibrollなど別働隊的な公演を行うことでその活動範囲を広げている。そのうち「演劇を上演しよう」というプロジェクトがMIKUNI YANAIHARA PROJECT(ミクニヤナイハラプロジェクト)である。

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サンプル「カロリーの消費」

◎消化されるのを拒む他者性という困難
中村昇司(編集者)

「カロリーの消費」公演チラシ観劇を終えて最初の感慨は、めんどうな作品を観てしまった、というものであった。
それはこの作品が、容易に理解・消化されることを拒む異物として、記憶にどっかり居座り続けるであろうものだからだ。人を、考えること、という不安定な世界へ誘うもの、そんな記憶として未消化のまま生きる、そういう作品だろう。

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青年団リンク RoMT「the real thing」

◎説得力ある人物造形に成功 洗煉された舞台表現のセンス
片山幹生(早稲田大学非常勤講師)

「the real thing」公演チラシ『the real thing』は、『ハムレット』の登場人物による不条理劇『ローゼンクランツとギルデンスターンは死んだ』(1967年)の作者として知られるトム・ストッパードが1982年にロンドンで発表した作品である。日本では1986年に文学座で『リアルシング』のタイトルで上演されている。活発なことばのやりとりの中で虚実があいまいになっていく、いかにも一筋縄ではいかなそうな演劇的仕掛けに満ちた刺激的な作品だった。ことばによって幻惑されるスリリングな展開に観客も気を抜くことができない。
田野邦彦が主宰する青年団リンクRoMTの公演を見るのはこれが初めてだった。演出家はこの難物を丁寧に読み解き、戯曲に仕掛けられた技巧を効果的に増幅させた上で、説得力のあるリアルな人物造形に成功している。スピーディな展開の中で、様々な趣向をスマートに提示する洗煉された舞台表現のセンスも印象的な舞台だった。

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レクチャー「公共圏としての劇場」8日から

 世田谷パブリックシアターのレクチャーシリーズ「公共圏としての劇場-劇場空間の可能性」(全5回)が8日を皮切りに始まります。第1回(10月8日)は「『公共の演劇』への導線いくつか-『民衆演劇』の歴史、共同体、あるいは、公共圏、差異と同一性。日本と主にフランスの場合を引き較べながら」。講師は佐伯隆幸学習院大教授。第2回は「『現われの空間』としての公共圏」と題して早稲田大学の齋藤純一教授が講師を務めます。
 詳しい日程や申し込みは次の通り。

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X-QUEST「金と銀の鬼」

◎役者の肉体とパワフルな台詞で物語を生きる
葛西李奈(フリーライター)

「金と銀の鬼」公演チラシ剣を交える2匹の鬼の姿に、ぎゅっと心をつかまれた。生まれつきの容姿によって、人間からつまはじきにされ、ひとりぼっちになった弟の唯一の支えは、兄だった。その兄に剣を向けなければならない自分との葛藤が、表情を涙でゆがませたのだろう。人間を忌み嫌う鬼と、共存を望む鬼。どちらにしても、悲劇をつくりだす背景には、差別に気づかず日々の生活を営む人間がいるのだ。舞台を観ながら、そんなことを思った。

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