年末回顧特集「振り返る私の2007-今年の3本」

 2007年もあっという間に年の瀬を迎えました。今年も年末回顧特集「振り返る私の2007」をお届けします。舞台芸術の現場に立ち会った方々に「記憶に残る今年の3本」を選んでもらい、小劇場演劇とダンスの1年に多様多彩な角度から光を当てる試みです。40人の回答をご覧になったら、自分の記憶を掘り起こす手がかりになるはずです。以下のページをじっくりご覧ください。掲載は到着順です。(ワンダーランド編集部)
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Port B「東京/オリンピック」

◎「東京」の向かう先はどこ? 「東京」と「オリンピック」を「走る」
松井周(サンプル主宰)

「東京/オリンピック」チラシPort Bツアー・パフォーマンス第2弾『東京/オリンピック』を観た。というより、体験した。はとバスに乗って東京を廻るわけだから、観劇というよりは観光である。街頭劇と呼ばれるものともやや趣が違うように思った。街頭劇というものを観たことがないので自信はないが、街頭劇が街中にパフォーマーがいたり仕掛けがあるものだとしたら、今回の場合はそれとは異なり観客である私たちがパフォーマーであることを意識させられる催しだったように思う。「ツアー・パフォーマンス」という名前は、だからとてもしっくり来た。

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三条会「いやむしろわすれて草」「若草物語」(四姉妹)

◎異質なコンテクストから浮かび上がる ギミックに満ちた独創的公演
片山幹生(早稲田大学非常勤講師)

アトリエ公演「四姉妹」チラシ千葉を活動拠点とする三条会は、今、首都圏の小演劇ジャンキーの間で最も注目されている団体の一つではないだろうか。三条会の極めて個性的で癖のある表現スタイルには、中毒になるという言い方がぴったりはまるような強烈な吸引力がある。

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Chim↑Pom「サンキューセレブプロジェクト アイムボカン」

◎「熱の伝播」から「出会う奇蹟」へ アーチスト集団が仕掛ける「破壊」
伊藤亜紗(ダンス批評)

「ellieZABETH」2007 bag
「ellieZABETH」2007 bag 36x25x15cm photo : 森田兼次(Kenji Morita) &copy 2007 Chim↑Pom courtesy Mujn-to Production, Tokyo

ヴィトンのバックをひっさげ、すらりとのびた長い脚で仁王立ちする金髪ギャル・エリイ。顎をツンとかたむけてポーズを決めているようでも、細い体とはにかんだ笑顔のせいでどこかあどけなさを残すアムロ・プリクラ世代の彼女だが、Chim↑Pomは、そんなエリイを紅一点のミューズ的存在とする男5人女1人の計6人から成るアーティスト集団である。「アーティスト集団」という活動形態が美術の分野ではそもそもめずらしいといえるが、その数が「6」もいるというこの半端な多さこそ、Chim↑Pomの作品を面白くする仕掛けであるようにみえる。

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青年団リンク 二騎の会「五月の桜」

◎ありふれた言葉で凝縮された関係を描く
小畑明日香(慶応大、wonderland執筆メンバー)

「五月の桜」公演チラシ脚本の設定のことから話すのがいいだろうか。
脚本家の処女作を大幅改訂しての上演である。北海道のある場所、花が散った後の桜がぽつぽつと生える場所が舞台になる。客席との段差なし。
中央奥に大きな灰色の柱があって、その奥は墓地に続いていることになっている。
家族を扱った話は多いが、『五月の桜』に登場する「家族」はなんと言うか、密度が濃い。嫁姑、再婚、連れ子二人の交流、昔の男と今の男の三角関係、失踪した妹と姉の再会、これが一つの家族の物語として織り込まれている。

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プリセタ「モナコ」

◎おじさんは、さまよい、さすらう 若くないことを受け入れて立つ肉体
徳永京子(演劇ライター)

プリセタ「モナコ」公演チラシ大好きだったバンドへの興味が急に冷めた瞬間を覚えている。そのバンドが、実年齢よりもずっと若いボキャブラリーで曲をつくり、永遠の青臭さを定位置にするつもりだと気が付いた時、はっきりと「もう新譜を買うことはないだろう」と予感した。年を重ねれば考え方や感じ方が変わるのが当たり前で、その変化をどう受け止め、どう作品に採り込むか。そこに生まれる表現に、私はその人が表現者として正直かつ誠実であると感じ、興味を持つ人間なので、残念ながら熱心なリスナーを辞退したのだった。

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パラドックス定数「東京裁判」

◎物語へのアンビバレンツを超克 成熟と未来を示唆する重要公演
高木登(脚本家)

「東京裁判」公演チラシ先般、NHK-BS2の「深夜劇場へようこそ」に出演したチェルフィッチュの岡田利規はこう言った。
「坂手(洋二)さんみたいに(社会的な問題に)コミットするのは自分にとって嘘になっちゃうんで」
林あまりから坂手洋二や鐘下辰男などの先行世代にくらべ、岡田の社会問題のとらえ方、表現の仕方が相当異なっているという話を振られてのことである。

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期間限定劇団「おおむね、」公演「ユダの食卓」

◎題名の背景から解放される-裏切らなかったユダの話
 因幡屋きよ子(因幡屋通信発行人)

 題名を聞いた瞬間、必要以上に内容を想像してしまう作品がある。『ユダの食卓』は、まさにそうであろう。「ユダ」「食卓」とくれば、新約聖書のキリストの十二使徒のひとりであるユダと、キリストを囲んだ最後の晩餐がモチーフになっていることはすぐに察しがつく。

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ONEOR8「ゼブラ」

◎柿とシマウマのあるトワイライトゾーン
村井華代(西洋演劇理論研究)

「ゼブラ」公演チラシ素直に気持ちのよい舞台。
舞台芸術学院演劇部本科の同期卒業生8名による劇団ONEOR8(ワンオアエイト)。脚本・演出を手がける田村孝裕によれば、創設10年目を迎えて劇団の代表作がないのに気づき、この『ゼブラ』を代表作にするべく再演したのだとか。ついでに特に決めてなかった劇団代表も、「唯一2tトラックを運転できる」という理由で俳優の恩田隆一になったとのこと。キャラクターのいい劇団である。開演前にスタッフが「途中でご気分等悪くなったお客様は、お近くにいらっしゃる係の者に」と訳のわからないことを叫んでいたのも、それらしくて味わい深いと言えなくもない。

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劇作家協会新人戯曲賞に黒川陽子さん

 第13回劇作家協会新人戯曲賞の公開審査会が9日、東京・新宿の紀伊國屋サザンシアターで開かれ、黒川陽子さんの「ハルメリ」が受賞しました。賞金50万円。
http://www.jpwa.jp/main/inform/#happyo-10(劇作家協会)
 この賞は劇作家協会(坂手洋二会長)が新しい才能の発掘を目的に1995年から始め、これまで長谷川孝治(弘前劇場)夏井孝裕(reset-N)棚瀬美幸(南船北馬一団)さんらが受賞しています。
 今年の応募総数は168作。第1次選考、第2次選考を経て、5作が最終候補作として選ばれていました。

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