劇団東演「どん底」

◎「絶望の闇」見せる演出
中尾祐子

「どん底」公演チラシ1966年の初演後、日本全国を巡演し、節目節目に再演してきた老舗劇団の代表作が、創立50周年を記念して再び幕を開けた。演出は八田元夫、千田是也と続き、3代目にあたるロシアの鬼才ワレリー・ベリャコーヴィッチ。1998年に朝日生命ホールで初演をふみ、今回が4度目の挑戦である。

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マレビトの会「PARK CITY」

◎不可視の都市を「観光/感光」する
森山 直人

「PARK CITY」公演チラシ
これまで、松田正隆とマレビトの会の作品については、何度も論じたことがあるにもかかわらず、最新作『PARK CITY』について書こうとすると、まったく未知の演劇作家について、はじめて触れる錯覚に陥りそうになる。8月に山口情報芸術センター(YCAM)で初演され、10月に滋賀県のびわ湖ホールで再演されたこの作品を、実際に見ることのできた東京の観客は、おそらくそれほど多くはなかったかもしれない。マレビトの会の存在自体、東京で本格的に知られるようになったのが、おそらく今年3月にフェスティバル/トーキョー09春で上演された『声紋都市-父への手紙』(初演は伊丹アイホール)以降である、という事情もあるにせよ、それ以上に、この『PARK CITY』という舞台自体、ワンステージあたりの客席数が100席以下に限定された、かなり特殊な上演形態であったということも大きいと思われるからである。

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座・高円寺「旅とあいつとお姫さま」

◎贅沢で豊か 驚愕の「子ども向け」劇
都留由子

「旅とあいつとお姫さま」公演プログラム「子ども向け」と銘打ったお芝居をあなどってはいけない。「子ども向け」と「子どもだまし」は違うのだ。杉並区の小学四年生が全員招待されたという「旅とあいつとお姫さま」。ごく気楽に観に行った筆者は、思わぬ展開に圧倒されてしまった。
小学校の体操服みたいな短いショートパンツに長い髪、赤いほっぺの女の子が元気に登場して、ふむふむと観ていると、でっかい死体はごろりと投げ出される、生首はいくつも天井から下がってくる、そしてちょうちんスカートの可愛いお姫さまは、サロメのように生首にいとおしそうに頬ずりし、その大事な生首の耳をかみちぎった猫の耳を、仕返しにかみちぎっちゃったりするのである。そればかりか、そのお姫さまの愛人は恐ろしい魔物で、お姫さまは角の生えた魔物の膝に乗って、うっとりと、あなたの腕の中で眠る、なんて言うのだ。

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大橋可也&ダンサーズ「深淵の明晰」

◎影が踊り始める
竹重伸一

「深淵の明晰」公演チラシ「明晰」シリーズの前作、昨年2月の「明晰の鎖」では同じ吉祥寺シアターの舞台奥の搬入口を開いて裏の道路と繋げたり、バルコニー・床下の上下の空間も使うなどワイドでスペクタクルな空間創りをしていたが、今回は観客の一部を上演空間に入れて、親密さのあるとても凝縮されてコンパクトな空間になった。出演するダンサーも過去に大橋可也作品に出演経験のある勝手知った7人に絞り込んでいて、匿名性の高い振付からよりダンサーの「個」が浮き上がってくる振付への変化の兆しがはっきりと伺えた。この変化は微細だが重要な変化で私には非常に共感できるものだ。

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劇団桃唄309 「死すべき母の石」

◎「東京」の物語。「東京」で暮らす人の物語。
光原百合

「死すべき母の石」公演チラシ最初にお断り(言い訳)を。筆者は好きな劇団の舞台は集中して見ているが、演劇全般にそれほど造詣が深いわけではない。大ファンである劇団の一つ、劇団桃唄309の舞台『死すべき母の石』についてのこの劇評においても、演出の技法や役者の演技についてどこがどう優れているか論じることは難しい。自分が物語作家であるため、あくまで『桃唄309が形作る物語のどういうところが好きか』が主眼の評になることをご容赦いただきたい。

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東京デスロック「ROMEO & JULIET」KOREA ver.

◎コンテクストを宙吊りにするゲームの可能性
柳沢望

「ROMEO & JULIET」公演チラシ東京デスロックを主宰する多田淳之介が演出し、韓国人俳優たちと作り上げた『ROMEO & JULIET』KOREA ver.を見た。これは、韓国で制作されて評判を呼び、再演もされた舞台作品の「キラリ☆ふじみ」上演版だ。多田淳之介は埼玉県富士見市の公共劇場「キラリ☆ふじみ」の次の芸術監督に決まっている。今回の上演は、いわばそのお披露目的な意味合いもあるのだろう。

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さいたまネクスト・シアター「真田風雲録」

◎泥まみれの舞台 「他者」意識さす蜷川演出
木俣冬

「真田風雲録」公演チラシ彩の国さいたま芸術劇場大ホールのロビーに入ると、正面にある客席への扉は閉ざされている。代わりに、向かって右にある客席脇の廊下を通るようにと誘導される。次に階段を降りる。どこに向かっているのかよくわからない(実は楽屋と舞台袖をつなぐ通路)が、案内に従って歩いていくと、やがて、階段状になった仮設の客席にたどり着く。こういう迷路のような仕掛けは、アングラ演劇の野外劇を思わせる。

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