テレビで見る演劇(~5月末)

 4月9日に亡くなった井上ひさし作「組曲虐殺」や、マレビトの会「血の婚礼」など、今月も注目の劇場中継が続きます。こまつ座・ホリプロ公演「組曲虐殺」は、「蟹工船」がリバイバルヒットした小林多喜二の生涯を描いた音楽劇。「血の婚礼」は、スペインを代表する詩人ガルシア・ロルカの原作を、松田正隆が独自の手法で描き出したもの。松尾スズキの演出で話題を呼んだ、野田秀樹作「農業少女」は、3月に東京芸術劇場で上演されたばかりの舞台です。また、ロイヤル・シェイクスピア・カンパニー「ハムレット」がNHK hiとBS2で放映されます。
(場合により、番組内容、放送日時などが変更になることがあります。また、地上波デジタル放送の番組表は関東地区のもので、地域により一部番組が異なります)

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東野祥子「VACCUME ZONE」

◎廃墟でも踊り続ける 舞台を支配する意志と身体
志賀信夫

「VACCUME ZONE」公演チラシ東野祥子は、東京では、トヨタ・コレオグラフィーアワードで、一気に注目を集めた。奈良に生まれてモダンダンスを学んだが、モダンダンス界とは離れて、関西で独自の活動を活発に行っていた。維新派から派生したグループに参加し、スタジオ、活動拠点やカフェをつくり、多くのミュージシャンやアーティストとコラボレーションを行いながら、2000年、女性2人とBaby-Qを結成。初めて応募したトヨタ・アワードで2004年に大賞「次代を担う振付家賞」を受賞した。

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「千種セレクション」報告(後編)

◎シンポジウムと四劇団の公演について
カトリヒデトシ

(この記事は184号に掲載された「千種セレクション」報告(前編) の続きです)
水牛編集長にメルマガで取り上げていただいたが、少し説明を補足したい、年間400本ほど観劇をしているが、当然のこと全てを見るにはほど遠い。「全国の演劇」をとても把握できるわけではない。しかし東京が演劇の中心とも思わない。できるなら地方の状況や取り組みにも触れたいと願っている。そこで昨年から注目する団体の東京外公演を見にいこうと取り組み始めた。昨年は、ハイバイ名古屋、北九州公演、東京デスロック青森公演、第七劇場北海道公演、チェルフィッチュ伊丹公演、柿喰う客名古屋、三重公演などである。普段東京で見ている団体が異なる場所、異なる空間で行う公演を見るだけでなく、その劇場がある地域の様子や演劇状況をできるだけ見聞することによって、地域の演劇の状況をすこしずつ知ることができればと思っている。

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劇団掘出者「まなざし」

◎見えない演劇
黒川陽子

「まなざし」公演チラシ「嘘つきのパラドックス」というものがある。「クレタ人は嘘つきであると、クレタ人が言った」と言うとき、「クレタ人は嘘つきである」という部分が正しくても正しくなくても矛盾を生じてしまうというものだ。このときクレタ人は嘘つきなのか、嘘つきでないのか。もし「どちらでもない」と言うことができるとして、それでもなお、クレタ人は、いる。「嘘つき」というアイデンティティも、「嘘つきでない」というアイデンティティも持つことのできないまま、ひたすら不安定な存在として。劇団掘出者第7回公演『まなざし』は、【演劇】が「嘘つき」というアイデンティティも「嘘つきでない」というアイデンティティも持つことのできないまま、強制的に存在させられてしまったかのような、作品自体が巨大な打消し線を伴っているような、奇妙な舞台だった。

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神村恵カンパニー「385日」

◎スリリングでおもしろい「喋りながら取っ組み合う」ダンス
桜井圭介

世田谷美術館のロビーで行われた神村恵カンパニー『385日』を観た。中盤あたりのハイライトシーンで驚いた。なんか会話しながら取っ組み合いしてるよ! 「しゃべくるcontact Gonzo」(笑)ていうか。そのことをある人に話したら「神村恵、お前もか(嘆)!」という反応が返ってきた。曰く、最近やたらと目に付く「ダンスなんだか演劇なんだか分かんないよ」的な演劇やダンスに対して、常日頃苦々しく思っていたが、まさか神村恵だけはそんなことはしないと思っていたのに! だって。たしかに、神村恵はダンスのフォルマリスト的な位置取りの先端と目される振付家であり、いわゆる「タスク」とか「ルール」で構造する的な(ジャドソンチャーチ的な?)アプローチの作家として評価されているわけで、その彼女が、そんな安直なギミックに頼るとは! というのは、まあ分かる。事実、あとで作家本人にも「しゃべくりゴンゾだったね!」と率直な感想を述べたところ、なんとなーくイヤそうな顔で苦笑いされた(ような気も)。

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チェルフィッチュ「わたしたちは無傷な別人であるのか?」、中野成樹+フランケンズ「スピードの中身」、Nadegata Inst

◎政治と劇場の間 ミュージアムで公開された3つの劇作品をめぐる時評的断章
柳沢望

「わたしたちは無傷な別人であるのか?」
チェルフィッチュ公演チラシ

『私たちは無傷な別人であるのか?』の公演を横浜美術館に見に行ったのは3月8日で、これはブレヒト的と言って良い舞台なのだろうな、と見ながら考えた。少なくとも、観客に問いを投げかける上演だった点でそう言えると思う。
ただ、その問いかけのなされ方についてはいろいろ考えてみる余地はあるだろう。それこそ、十分に思考を貫いた上での問いなのかどこかで思考停止した問いに過ぎないのかによって、問いかけの意味も違ってくる。そこに立ち返って考えたいのだけど、その上でこの記事では、中野成樹+フランケンズと、そしてNadegata Instant Party(ナデガタインスタントパーティー)の近作についても言及していく。

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「劇評セミナー こまばアゴラ劇場コース」開催によせて

「劇評セミナー こまばアゴラ劇場コース」チラシワンダーランドでは4月17日からこまばアゴラ劇場のご協力を得て「劇評を書くセミナー」を開講いたします。平田オリザさんが劇場、劇団と劇評の関係について語る講演、劇評を巡る批評家(佐々木敦さん、武藤大祐さん)と作り手(松井周さん、多田淳之介さん、岩井秀人さん)の双方による連続シンポジウム、さらにアゴラ劇場で同期間内に上演される3作品を題材として、参加者が劇評を書き、その合評会が開かれます。実に盛りだくさんの刺激的な内容です。この間、こまばアゴラ劇場とワンダーランドから、セミナーの狙いと趣旨について寄せられた一文がそれぞれマガジン・ワンダーランドに掲載されました。以下、webサイトに再掲します。詳細と申込みは次のセミナーページをご覧ください。(編集部)

(1) 野村政之(こまばアゴラ劇場 制作)
(2)北嶋孝(ワンダーランド代表)
(3)水牛健太郎(ワンダーランド編集長)

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自転車キンクリートSTORE「富士見町アパートメント」

◎演出家の責任と手柄のありか。
徳永京子

「富士見町アパートメント」公演チラシ観客にとってメリットの多い上演形態ほど、制作サイドの負担は膨らむ。4人の人気劇作家の新作をまとめて観られる、1編が約1時間だから気軽、同じアパートを舞台にしているからセットの違いも見比べられるなど、ちょっとしたお祭り気分さえ感じる企画で注目を集めた自転車キンクリートSTORE『富士見町アパートメント』は、だからさまざまなリスクを抱えていたはずだ。

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趣向「皇帝」

◎演劇的な魅力と批評性を兼備
水牛健太郎

趣向「皇帝」公演チラシ舞台の中央に、直径2-3メートル、高さ30-50センチほどの赤い円形の台が据えられている。それは色々な使われ方をするが、基本的に主人公である二人の皇女の御座所を示している。人々はその周辺に集まり、言葉を交わし、時に踊り、ぐるぐると周囲を歩き回ったりもする。皇女を巡る様々な人々-廷臣、SP、家庭教師、有識者、権力者、皇室にあまり関心のない一般人まで、それぞれの人がそれぞれの立場から発する言葉が交差し、まるで渦のように二人の皇女を巻き込んでいく。

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[第三次]『シアターアーツ』始動

『シアターアーツ』(第三次)AITC(国際演劇批評家協会)日本センター発行の演劇批評誌『シアターアーツ』(第三次)がスタートしました。編集長に西堂行人氏(近畿大教授)、副編集長に新野守広氏(立教大教授)など編集メンバーを一新。webサイトを立ち上げ、誌面デザインも全面的にリニューアルするそうです。以下、[第三次]『シアターアーツ』から送られてきたあいさつ文を掲載します。

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