国分寺大人倶楽部「リミックス2」

◎この世界がこのまま終わるまで、のマナー
 堀切和雅

「低調」系演劇!?
「リミックス2」公演チラシ ひどい名前の劇団だな、と思いながら、ちゃんと予約して開場前に受け付けを済ませて座を占めると、ひどい音楽が満ちている。うるさい。暗いから、本も読めやしない。わざわざつくったのだろう、面白い店名の電光看板が舞台上空に幾つも吊り下がっており、12畳くらいの正方形に組んだ黒い舞台には、小さなちゃぶ台というか、テーブル。置いてあるのは、ビール、ではなくあくまで発泡酒の缶。
 もしかして噂に聞いていた「低調」系演劇なのか!? と思っていると、芝居はじつに低調に始まって、若者たちの特段なんでもない日の宴会だ。
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燐光群「推進派」

燐光群「推進派」
◎「現実」を豪腕で舞台化したジャーナリズム演劇の成果
 森口秀志

「推進派」公演チラシ うーむ、こういう芝居はどう評していいものかと、思わず腕組みしてしまう…。欠点を論(あげつら)えば、いくらでも挙げることができる。
 まず、状況説明のために、登場人物が突然饒舌となりやたら詳しい解説を語りだす。〈解説〉が始まると役者は一歩前に踏み出し、声を張り上げるといった古くさい新劇テイスト。2日目の舞台のせいか、はたまたそのセリフの多さのせいか、役者がしばしばセリフを噛むこと。そして、話を詰め込みすぎて、十分に整理されていないこと…。
 しかしながら、そうしたさまざまな〈欠点〉を補って余るほどの迫力と剛力(ごうりき)をもって、本作『推進派』はワタシたちの前に提起された。今ニッポンで進行している事態を、一つのエンターテイメント性ある〈物語〉として結実させた芝居として。

 こうした豪腕の要るホン(脚本)を書き、舞台化(演出)できる演劇人はそうそういないのではないか?  そうした意味で、その〈取材力〉も含めた坂手洋二氏の芝居ヂカラには改めて、敬服するしかない。
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ミミトメ「マゴビキ、あるいは他人の靴の履き方」(クロスレビュー挑戦編第9回)

「マゴビキ」公演チラシ ミミトメは2010年から活動を開始。その年の夏に旗揚げ公演を開きました。Webサイトにはいま、こんな文章が掲載されています。
 「泣いたり泣かしたり、笑ったり笑わせたり、人の機微が、人間味が描かれ、とかってもうあまり興味がないのです。演劇の社会的意義とか政治性とかもいいです。もう。リリシズムとか絵画的とかそういうのも…。ましてや3・11以降の演劇でもありません。以前の演劇ですらありません。そういうのと関係ない演劇をミミトメはやりますね」。
 演劇でない演劇ってどんなものなのだろう。好奇心を頼りに、いざいざ。レビューは★印の5段階評価と400字コメント。掲載は到着順です。(編集部)

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二騎の会「四番倉庫」

◎《チャーミング》の転がる展示空間
 プルサーマル・フジコ

「四番倉庫」公演チラシ 演出の多田淳之介は当日パンフに「チャーミングであるという事はどういう事なのか」と書いている。その問いに対して、なんといってもまず見た目? 仕草、声、匂い、それに価値観とか特異な経験に惹かれたりもするし、やっぱりお金や地位や権力も勘定には入れておきたい、人間だものね。……などと仮に考えてみて、しかし、要素をいくら列挙してみてもたどり着けないのが《チャーミング》ではないか、とか。

 本稿では、二騎の会『四番倉庫』におけるこの《チャーミング》を視野に入れながら、この作品が試みようとしたチャレンジについて考える。そして観客の新しい《消費》の仕方や、劇場の捉え方についても思考実験してみたい。
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世田谷パブリックシアター「モリー・スウィーニー」

◎端正に、人懐こく、予想外の仕掛けで形に
 徳永京子

「モリー・スウィーニー」公演チラシ 世田谷パブリックシアターという大きな劇場を使いこなせるつくり手を、劇場自らの手で発掘・育成しようという世田パブの取り組みは、同じ08年に「ネクスト・ジェネレーション」と「日本語を読む」の2つの企画をスタートさせたことで、地道ではあるが大きな歩みをスタートさせた。脚本の完成度を主な選考基準とし、若手の団体を対象とする「ネクスト・ジェネレーション」。前者の卒業生、あるいはそれに近い活動年数を持つ演出家に、劇場サイドが指定した戯曲で演出手腕を奮ってもらうリーディング「日本語を読む」。この2本で、若手と準若手、劇作力と演出力のいずれをもカバーできるからだ。
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クロスレビュー7月公演決まる

クロスレビュー挑戦編の7月公演は、うさぎストライプvol.2「おやすみなさい Ⅱ」( 6月30日-7月3日(日)、アトリエ春風舎)と、茶ばしら「茶家_ひみつ基ち_<おかえり・ただいま>」(7月7日-10日、古民家ゆうど)の2団体に決まりました。ご覧の上、レビューに参加していただければ幸いです。詳細はクロスレビューページをご覧ください。
8月公演の募集は7月15日(金)が締め切りです。募集要項をご覧の上、思い切って応募してください。歓迎します。


Ort-d.d「女中とアラスカ-不条理劇二本立て公演-」/ジャン・ジュネ「女中たち」

◎女中たちの自壊する嘘の世界に、大山金太郎の幻を見た
 高橋 英之

 舞台を見ながら、奇妙なシンクロをしてしまった。こともあろうに、あの大山金太郎と。そう、『熱海殺人事件』(作:つかこうへい)のあの犯人役と。

 大山金太郎「なしてね、おいが職工じゃからね」
 ソランジュ「わたくしは女中です」

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ガレキの太鼓「いないいない」(クロスレビュー挑戦編第8回)

 「『人生の中で一度は経験するかもしれない“異世界”』を舞台とし、そこで湧き起こる人間の感情を積み重ねていく群像劇を上演する」「非現実な舞台の中で行動する『普通の人々』の生(なま)の感情が舞台空間を『社会』へと変貌させ、観客の『生きている感』を改めて呼び起こす」。ガレキの太鼓のホームページには、こんな文章が掲げられています。第5回公演「いないいない」はどんな「生きている感」を紡いだのでしょうか。レビューは5段階評価と400字のコメント。掲載は到着順です。(編集部)

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劇団唐ゼミ☆「海の牙」(プレ公演)

◎適切さの欠落
 清末浩平

(1)名作に包囲された問題作

 本稿は、2011年の5月に書かれている。去る4月の27日と28日の2日間、劇団唐ゼミ☆が、古巣である横浜国立大学の構内にテントを建て、第19回公演『海の牙』の「プレ公演」を上演した。この演目は、かなり長い磨き直しの期間を経た後、6月18日から7月3日にかけて、浅草で再び観客の前に姿を現すことになるという(http://www.karazemi.com/ なお、以下の文章では、『海の牙』のストーリーが解説されてしまうため、劇団唐ゼミ☆の本公演をこれからご覧になる方は、観劇後に読んでいただくほうがよいかも知れない)。
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連載「芸術創造環境はいま-小劇場の現場から」第10回

 森元隆樹さん(三鷹市芸術文化振興財団事業課事業係長)
◎惚れた作品にとことんこだわって

 座・高円寺や吉祥寺シアターなど、中央線に点在する公共劇場の中で、先駆的存在なのが、ここ三鷹市芸術文化センターです。以前は駅からバスに乗って行くのが少し遠いと感じたが、いつのまにか、さほどに思わなくなってきたという声も聞きます。個性的なラインナップやロングラン方式など、独自の手法が功を奏しているのかもしれません。演劇公演の企画運営に携わっておられる森元隆樹さんに、劇場法(仮称)へのご意見も含めて、熱い想いの溢れ出るお話を伺いました(編集部)。

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