オイスターズ「雑音」(クロスレビュー挑戦編 第15回)

「雑音」公演チラシ
「雑音」公演チラシ

 オイスターズは名古屋を拠点に活動してきた劇団。座付 作・演出家の平塚直隆さんは、仙台劇のまち戯曲賞大賞、劇作家協会新人戯曲賞最優秀賞、若手演出家コンクール優秀賞を受けるなど高い評価を得ています。劇団サイトには「くすぶる可笑しさ すこぶる快感 ~トッキントキンに研ぎ澄まされた脱力系会話劇」とありました。クロスレビュー挑戦編に名古屋の団体が登場するのは初めて。7月の名古屋公演に続く、満を持しての東京公演はどうだったでしょうか。レビューは★印の5段階評価と400字コメント。掲載は到着順です。(編集部)

“オイスターズ「雑音」(クロスレビュー挑戦編 第15回)” の続きを読む


青年団リンク 水素74%「謎の球体X」

◎徹底した悪意の提示と嘘をつく姿勢
 北川大輔

「謎の球体X」公演チラシ
「謎の球体X」公演チラシ

 小劇場に初めて触れた頃に「悪意」というキーワードが常にチラチラしていたのを思い出す。これは自分が劇作をやるようになった今も変わらない。有名無名の多くの劇作家が「悪意」を描き、その都度正直にイライラし、自分の中でその優劣をそのまま作品の評価としてきたようなフシがあった。今回この劇を観て目が醒めるような思いがしたのは、その悪意が純粋であるがゆえ、いや純粋というのは語弊があるかもしれない、体の良い感傷や実は愛などといった要らぬ装飾がないゆえに、自分の中に巣食う同類の感情を容易に探し当てることができたからなのではないか、と思っている。その上で、劇中徹底した「嘘をつく」ことで、私はごくごく当たり前のようにこの悪意と格闘することを許されていたのだ。
“青年団リンク 水素74%「謎の球体X」” の続きを読む


KUNIO「エンジェルス・イン・アメリカ」
ザカリー・オバザン「Your brother. Remember?」

◎アメリカ! アメリカ!-KYOTO EXPERIMENT 2011報告(第1回)
  水牛健太郎

※以下の報告で取り上げるKUNIO「エンジェルス・イン・アメリカ」はフェスティバル・トーキョー(F/T)での上演が予定されています(10月20日-23日、池袋・自由学園明日館講堂)。

 9月23日から京都国際舞台芸術祭(KYOTO EXPERIMENT 2011)が始まった。23日~25日の三連休はKUNIOの「エンジェルス・イン・アメリカ」第1部と第2部、それにアメリカのアーティスト・ザカリー・オバザンによる「Your brother. Remember?」の上演があった。要するにどっちもアメリカもの、ということだ。

 24日に「Your brother. Remember?」を見ようと会場のART COMPLEX 1928に向かったところ、この日はたまたまオバザンの体調が悪く、公演は中止になった。もっとも公演の主要部分である映像だけは無料で上映された。係員の説明によれば、これで上演のあらましはつかめる、ということであった。なるほど映像はそれだけで十分に完結した作品になっており、内容も素晴らしかった。
“KUNIO「エンジェルス・イン・アメリカ」
ザカリー・オバザン「Your brother. Remember?」” の
続きを読む


連載「芸術創造環境はいま-小劇場の現場から」第13回

 大石時雄さん(いわきアリオス支配人)
◎「第二の敗戦」から、新しい価値観の作品を

 震災からほぼ半年たった8月末、福島県のいわきアリオス(いわき芸術文化交流館)を訪ねました。いわき市の人口は今年4月現在、約34万人。福島県内では郡山市や福島市より人口の多い都市です。その中心にあるアリオスは、大ホール、中劇場、小劇場などを備えた総合文化施設です。しかしアリオスだけでなく、街のあちこちに屋根をブルーシートで覆った家が見えるなど、震災の傷跡はいまだ残っていました。
 前回の高知、金沢の美術館に続いて、地方都市で独自の活動を展開している公共文化施設の登場です。世界や東京などの先端芸術を呼び込むだけでなく、「脱東京」スタイルの芸術文化活動を地域に根ざしてどう展開するか。アリオスの実践例に、都市型小劇場の活動につながるヒントが隠されているかもしれません。(編集部)

“連載「芸術創造環境はいま-小劇場の現場から」第13回” の続きを読む


「クロスレビュー挑戦編」11月公演募集中

「クロスレビュー挑戦編」の11月公演団体の応募受付中です。締め切りは10月15日(土)。旗揚げ間もない劇団、先端的な試みを知ってほしい人(たち)、これまでの活動が評価されていないと感じているグループ、短期間の公演で周知・宣伝が広がりにくいカンパニーなどの積極的な応募を歓迎します。詳細は次のページをご覧ください。
>> クロスレビュー・挑戦編 応募要項


連載「芸術創造環境はいま-小劇場の現場から」第12回

 藤田直義さん(高知県立美術館館長)
 近藤恭代さん(金沢21世紀美術館交流課長/チーフ・プログラム・コーディネーター)
◎ネットワークを駆使し舞台芸術作品を生み出す美術館

 これまではタイトル通り小劇場を訪ねてきたこのコーナー、今回は、パフォーミングアーツの公演にも積極的に取り組む異色の美術館のお二人、高知県立美術館の藤田直義館長と金沢21世紀美術館の近藤恭代交流課長へのインタビューです。外国人アーティストを直接招聘したり、自主制作や外国との共同制作といった意欲的な試みで注目を集める両館ですが、以前から、美術館がなぜ、どうやって舞台作品を作るのか? そんな素朴な疑問をぶつけてみたいと思っていました。聞き手として同席された寄稿者の藤原ちからさん(フリー編集者)は高知出身で、美術館の地域性にも興味があるとのこと。劇場との相違にも思いを馳せつつ、いつもとは異なる角度からのお話に、地域における舞台芸術の新しい可能性と方向性が探れればと考えます。(編集部)

“連載「芸術創造環境はいま-小劇場の現場から」第12回” の続きを読む


青山円形劇場プロデュース「CLOUD-クラウド-」

◎透明なゴミ袋のような雲のなかで
 中尾祐子

「CLOUD-クラウド-」公演チラシ
「CLOUD」公演チラシ

 役者が台本を越えて、複雑で厚みのある物語世界を構築していく過程を目の当たりにするのは気持ちがいい。その役者の演技が巧みであるならば、なおさら爽快だ。ステージ上に演出家と役者の信頼と挑戦が満ち溢れているならば、もう言うことは何もない。
 そんな舞台に出会えたのかもしれない。表題の舞台で構成・演出を手がけた鈴木勝秀氏が公演終了後、台本を公式ホームページ上で公開した。その台本を読み、いくつか得るところがあって心地よかったのだ。
“青山円形劇場プロデュース「CLOUD-クラウド-」” の続きを読む


クロスレビュー挑戦編10月は「絶対安全ピン」と「エイチエムピー」

 クロスレビュー挑戦編10月は次の2公演に決まりました。

絶対安全ピン「one box」(10月19日-23日、下北沢・Geki地下Liberty)
エイチエムピー・シアター・カンパニー「最後の炎」(10月20日-23日、伊丹アイホール)

 絶対安全ピンは「演劇でしかできないこと」をポップに追求。エイチエムピー・シアター・カンパニーは大阪を拠点に、実験的な舞台創作とリアリティを追及。ともに10年余りのキャリアのある劇団です。演劇の枠を絶えず更新しようとする試みに期待したいと思います。公演を見た方はどなたでもレビューに参加できます。応募要項をご覧のうえ投稿してください。(編集部)
>> クロスレビュー応募要項


世田谷パブリックシアター「現代能楽集VI『奇ッ怪 其ノ弐』」

◎現代能楽集シリーズの転換点か?
 今井克佳
 
「現代能楽集VI『奇ッ怪 其ノ弐』」公演チラシ 到着が開演ギリギリになってしまった。世田谷パブリックシアターの三階に駆け上がり、やっと座席に着くと、舞台は既に明るく、いかにも「能楽集」らしく、シンプルな木製に見える大きな台座がステージ上に広がり、また台座の後方に、舞台奥に向かってかなり深く、尻つぼみに空間が続いている。もちろん、橋懸かりらしきものもなく、実際の能楽堂形式とはずいぶん異なってはいる。また台座や後方の細くなっていく空間(これが橋懸かりの代わりなのかもしれない)のそこここに長方形の穴があくようになっており、上演中はそこから俳優が現れることもしばしばだった。遠い席から見たこともあり、まずはこの舞台美術(堀尾幸男)に目がいった。
 世田谷パブリックシアター「現代能楽集シリーズ」は、従来、小劇場であるシアタートラムで上演されてきた。舞台空間のプランは様々だったが、トラム程度の小空間が、「現代能楽集」にはふさわしいように思えていたので、この大空間に少し戸惑いを覚えた。だが、古典能に現代風の演出を加えた「能楽現在形シリーズ」などもここで上演されていることを考えれば、それほど違和感のある設定ではない、と思い直した。
“世田谷パブリックシアター「現代能楽集VI『奇ッ怪 其ノ弐』」” の続きを読む


劇団しようよ「茶摘み」

◎方言と人形と閉塞感
 水牛健太郎

「茶摘み」公演チラシ 腿ぐらいの高さで、幅1.5メートルぐらいの細長い舞台。両側を客席に挟まれ、その背後の壁に一枚ずつ白いシーツが、スクリーン代わりに垂れ下がっている。役者が一人出てきてビデオカメラを構えると、スクリーンに映るのは田舎の風景。見渡す限り茶畑が広がる。カメラがある家の居間に入っていくと、夫婦とその娘らしい三人が四角いちゃぶ台に座ってざるそばをすすっている。ちゃぶ台のもう一辺にも一人前ざるそばが置いてあって、どうやらそれが撮影者の分なのだ。すると、舞台の上で、ビデオ画面同様にちゃぶ台を囲んで座っている家族の中の母親が、ビデオを構えた俳優に「はよ、食べてしまいなさいよ。もう、そんな撮ってんと」と声を掛けてくる。うまい導入だ。
“劇団しようよ「茶摘み」” の続きを読む