「宮澤賢治/夢の島から」(ロメオ・カステルッチ構成・演出「わたくしという現象」、飴屋法水構成・演出「じ め ん」)
「無防備映画都市-ルール地方三部作・第二部」(作・演出:ルネ・ポレシュ)

◎劇評を書くセミナー2011 F/T編 第2回 課題劇評

F/T2011 ワンダーランドが毎年開いてきた「劇評を書くセミナー」は今年、フェスティバル/トーキョーと提携して始まりました。
 第1回のトークセッション(9月25日)は入門編でしたが、第2回以降は劇評を書く実践編。公演をみて劇評を書き、受講者と公演や劇評の中身を話し合う機会になります。
 第2回(10月1日)で取り上げたのは、F/Tの委嘱作「宮澤賢治/夢の島から」(ロメオ・カステルッチ構成・演出「わたくしという現象」、飴屋法水構成・演出「じ め ん」)と「無防備映画都市-ルール地方三部作・第二部」(作・演出:ルネ・ポレシュ)でした。
 字数は2000字から4000字前後。いずれの公演も野外で開かれ、既成の枠組みから逸脱するような手法と展開だったせいか、セミナー受講者は原稿執筆に苦しんだようです。
 講師は新野守広さん(立教大教授、シアターアーツ編集委員)でした 。新野さんが執筆した2本を含めて提出された計8本の劇評が取り上げられ、ゼミ形式で2時間半余りしっかり討論されました。セミナー終了後の喫茶店で、講師の新野さんを交えてさらに話が尽きませんでした。
 以下、受講者執筆の6本を提出順に掲載します。原稿はセミナーでの議論を踏まえて再提出されました。すでに掲載されている新野さんの劇評と併せてご覧ください。
“「宮澤賢治/夢の島から」(ロメオ・カステルッチ構成・演出「わたくしという現象」、飴屋法水構成・演出「じ め ん」)
「無防備映画都市-ルール地方三部作・第二部」(作・演出:ルネ・ポレシュ)” の
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密陽夏公演芸術祝祭(韓国)

◎演劇交流の礎
 金世一

■はじめに■

演戯団コリペ活動拠点地図 気温34度に迫る夏の強烈な陽射し。心臓までが溶けてしまいそうな天気だな、と思いきや嘘のような土砂降り。梅雨の東京にも負けないくらい気まぐれな天気の、ここは韓国の密陽市。釜山から80kmほど離れた内陸に位置している。日本では映画『シークレット・サンシャイン』の背景になった所として知られている。

 高速道路から降りて料金所を通ると、立て看板が訪問者を導いてくれる。看板の矢印が指している方向へ車を走らせると、陸橋に掛けられているプラカード、そして街灯に掲げられて風になびいている案内用の旗が手招きをしてくれる。まるで街全体が訪問者を待っていたようだ。
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フェスティバル/トーキョー「宮澤賢治/夢の島から」
(ロメオ・カステルッチ構成・演出「わたくしという現象」、飴屋法水構成・演出「じ め ん」)

◎君は旗を振ったか?
 新野守広

「宮澤賢治/夢の島から」公演チラシ 『宮澤賢治/夢の島から』は、2011年秋のフェスティバル/トーキョーのオープニング委嘱作品として9月16日と17日の二日間、東京都立夢の島公園内の多目的コロシアムで上演された。戦前の岩手県に生まれた詩人宮澤賢治の作品からの連想をもとに、前半部はイタリアの演出家ロメオ・カステルッチが、後半部は飴屋法水が構成・演出した。フェスティバルのホームページによれば、カステルッチはイタリア語に翻訳された多数の童話や詩の中から『春と修羅・序』を選んだという。そのためか前半部のタイトル『わたくしという現象』は賢治の詩集『春と修羅』第一集序の冒頭からとられている。同ホームページによると、『じ め ん』と題された後半部を演出した飴屋は、小さい頃から賢治の作品に親しんできたという。おそらく多くの観客は、東北と東京の隔たりや戦前と現在の時代の違い、地震、津波、原発事故、さらには生者と死者の割り切れない境界について舞台が何を語るのか、さまざまに思いをはせながら開場を待ったことと思う。
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(ロメオ・カステルッチ構成・演出「わたくしという現象」、飴屋法水構成・演出「じ め ん」)” の
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「無防備映画都市-ルール地方三部作・第二部」(作・演出:ルネ・ポレシュ)

◎演劇が先か、映画が先か。
 新野守広

「無防備映画都市」公演チラシ
「無防備映画都市」公演チラシ

 ルネ・ポレシュの舞台をはじめて見たときの印象は、今でも鮮やかに思い出すことができる。それは2002年5月のベルリンだった。会場はプラーターという小学校の体育館ほどの大きさの古いホールで、旧東ドイツ時代はダンスホールとして使われており、そのせいか建物全体は東ドイツ時代を思わせ、かなり傷んでいた。このホールはフォルクスビューネ劇場の付属施設で、その前年にポレシュはホールのアート・ディレクターに就任したところだった。ここで『餌食としての都市』、『マイホーム・イン・ホテル』、『SEX』の三部作が上演された。どの舞台もまず俳優たちが激しい資本主義批判を機関銃のように喋り出す。俳優たちがひとしきり語ると、ダンスをまじえたショータイムになる(ポレシュはこれをクリップと呼んでいた)。議論とショータイムがセットになり、何回も繰り返される。作品によっては俳優たちが語る内容はとんでもない方向に脱線する。映画や小説、テレビ番組、現代思想を自在に引用しながら語って語って語り止まない俳優たちは、いつの間にかクスリ中毒のソープオペラの話に熱中し、それを聞いている観客全員が唖然としつつ笑いこけることもあった。さまざまなジャンルからの引用と社会批判が切れ目なく続く独特の台本は、ポレシュが稽古中に俳優の意見も取り入れながら作ったという。語りが滞らないようにプロンプターが俳優を助けていたことも印象に残った。ポレシュの舞台では裏方も観客の前に登場する。
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岡崎藝術座「街などない」
マルセロ・エヴェリン他「マタドウロ(屠場)」
モモンガ・コンプレックス「とりあえず、あなたまかせ。」
笠井叡「血は特別のジュースだ。」
KIKIKIKIKIKI「ちっさいのん、おっきいのん、ふっといのん」

◎ニッポンのからだ―KYOTO EXPERIMENT2011報告(第3回)
 水牛健太郎

 三回目の今回は、5日から10日までの間に見た公式プログラム3本と、フリンジ2本を取り上げる。

岡崎藝術座「街などない」公演チラシ
岡崎藝術座「街などない」公演チラシ

 まずはフリンジの1本、岡崎藝術座の「街などない」。元・立誠小学校の一室の大きな本棚の前に4人の若い女性が、光る生地を使った衣装を着て座っている。そのうちの1人が、かなり露骨なセックスに関する話を他の女性に対して仕掛け、渋々ながら話に乗ってくる人がいたり、黙っている人がいたりと様々だが、最後近くまで延々と続く この「ぶっちゃけガールズトーク」が作品の基調を成す。
“岡崎藝術座「街などない」
マルセロ・エヴェリン他「マタドウロ(屠場)」
モモンガ・コンプレックス「とりあえず、あなたまかせ。」
笠井叡「血は特別のジュースだ。」
KIKIKIKIKIKI「ちっさいのん、おっきいのん、ふっといのん」” の
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山田うん「ディクテ」

◎「踊る女(danseuse)」の終わりなき練習-境界線上に立つ身体
 高嶋慈

「ディクテ」公演チラシ テクストと身体表現は、どのような関係を切り結ぶのか?

 山田うんの新作ソロダンス「ディクテ」のベースとなったのは、テレサ・ハッキョン・チャが1982年に著した『ディクテ』である。『ディクテ』は、文学・ジェンダー・ポストコロニアルなどの研究者のみならず、表現者をも深く惹き付けずにはおかない磁場を持つ、魅力的なテクストだ。1951年に韓国で生まれたテレサ・ハッキョン・チャは、冷戦構造下で強まる韓国の軍国主義的体制から逃れるために、少女時代の60年代前半に両親とともにアメリカ合衆国へ移住した経歴を持つアーティストであり、82年に亡くなるまで、パフォーマンスやインスタレーション、映像作品、メール・アートなど、様々な表現手段で作品を制作している。
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平田オリザ+石黒浩研究室「アンドロイド演劇《さようなら》」
白井剛/京都芸術センター「静物画‐still life」

◎人と人ならざるもの-KYOTO EXPERIMENT 2011報告(第2回)
  水牛健太郎

 KYOTO EXPERIMENT二回目の週末の出しものは、平田オリザ+石黒浩研究室の「アンドロイド演劇《さようなら》」と白井剛/京都芸術センター「演劇計画2009」のダンス作品「静物画‐still life」であった。

 アンドロイド演劇は通常の演劇の枠を超えて話題となっているヒット企画である。幟(のぼり)こそ立っていないが、「あのアンドロイド演劇、京都に来(きた)る!!」という感じだ。会場は約百五十席あったが、通路にも一段ごとに人が座る盛況だった。京都の演劇公演としては相当な入りである。客層も、家族連れや高齢者など、ふだんの小劇場演劇の客とは明らかに違う人が多く含まれていた。
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白井剛/京都芸術センター「静物画‐still life」” の
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「クロスレビュー・挑戦編」11月公演募集中

 「クロスレビュー・挑戦編」の11月公演団体の応募受付中です。締め切りは10月15日(土)。旗揚げ間もない劇団、これまでの活動が評価されていないと感じているグループ、短期間の公演で周知/宣伝が広がりにくいカンパニーなどの積極的な応募を歓迎します。詳細は次のページをご覧ください。
>> クロスレビュー・挑戦編 応募要項

【レクチャー三昧】2011年10月(と11月の一部)

 毎秋期、大学での無料講座は豊作です。むろん舞台芸術関連は早稲田大学がダントツなのでいつも真っ先にチェックしておりますが、時折他の大学でもびっくり仰天の催しが見つかります。じっくりご覧下さい。
(高橋楓)
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