【レクチャー三昧】2012年5月

 ようやっと暖かくなり身体に優しい季節となりました。個人的には首都圏直下型地震の可能性におびえておりますが、それでもどうしても出かけたい芝居もレクチャーもございます。(6月予定の一部を含みます)
(高橋楓)
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SENTIVAL! 2012 報告 1

◎5年目のミニフェスティバル始まる
梅田 径

はじめに
 板橋駅から徒歩七分、東武東上線の線路脇の小さな路地に「atelier SENTIO」がある。壁面が白い漆喰の壁という劇場で、座席数は三十席ほど。暖色のライトに照らされたときの、壁面の白く淡い暖かさが聖域のように神々しくて、白くて優しい空間と畳敷きの観客席の穏やかな雰囲気。なぜか懐かしいような、頼もしいような、どこかに帰ってきたような錯覚を覚えてしまう。
 atelier SENTIOはそんな優しい魅力のある、僕にとってはほんの少しだけ特別な劇場だ。だからここで行われるフェスティバルには毎年少しだけ不思議な魔力が宿るのかもしれない。
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忘れられない1冊、伝えたい1冊 第4回

◎「芸術立国論」(平田オリザ著、集英社新書)
 北嶋孝

「芸術立国論」表紙 「芸術立国論」が刊行されたのは2001年10月だった。
 もともと平田演劇論は「演劇と市民社会」「参加する演劇」などの言葉をよく参照する。「現代口語演劇のために」(1995年)や「演劇入門」(1998年)では、「演劇世界のリアル」と「現実世界のリアル」が交差するには、作品と観客の出会いが重要だと繰り返し述べていた。社会にとって芸術は必要であり、芸術にとって社会の支持は不可欠だ、というのが平田理論の核心だった。そこから補助線を少し引けば、本書で展開される「芸術の公共性」や「国家の芸術文化政策」はすぐ間近に見えてくる。
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コント劇団 もより駅は轟です「コント誘艶恥始めました」(クロスレビュー挑戦編第26回)

 これまでのクロスレビューでコント集団の登場は初めて。しかも旗揚げ公演。企画書には「コント劇団で下克上! コントで天下を獲る!」とあり、その心意気を酌んで取り上げました。「コントライブなのに、きちんとストーリーがある! 新しいこと、誰もやっていないことを必ず盛り込むこと!」など「3つの掟」があると書かれています。実際の舞台はどうだったのでしょうか。★印による5段階評価と400字コメントです。掲載は到着順。末尾の括弧内は観劇日時です。(編集部)

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FUKAIPRODUCE羽衣「耳のトンネル」

◎耳の不思議に目覚めて
 林あまり

「耳のトンネル」公演チラシ
「耳のトンネル」公演チラシ

 耳の魅力に、改めて気づかされた。
 耳って、不思議。そして素敵。聴覚はもちろん、そこにある、モノとしての耳もまた、捨てがたい。そんなことを思いながら、ディープな時間を堪能した。

 FUKAIPRODUCE羽衣「耳のトンネル」には、まさに耳そのもののようなカーブを描いた入口が、上手にドーンと据えられている。
 いっぽう下手には、ベッドがひとつ。
 アゴラ劇場上手の上のほう、照明機材などのある細い通路に、パッとスポットが当たると、ロングヘアをわざとらしくなびかせたドレス姿の女(西田夏奈子)がいる。セレブなディーバ、歌姫路線を狙ったものの残念な感じ、というような。もうこの時点で、客席の私はワクワクしてくる。
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Pカンパニー「どこまでも続く空のむこうに」

◎開かれなかったテクスト
 間瀬幸江

Pカンパニー公演チラシ
Pカンパニー公演チラシ

 静かな破壊力で阿藤智恵が新境地を開いた前作『曼珠沙華』から5カ月、待望の新作上演であった。『どこまでも続く空のむこうに』(小笠原響演出、Pカンパニー)の主人公は、『曼珠沙華』の登場人物と同じ「J」(ジェイ)。それを同じ役者(長谷川敦央)が演じる。二つの作品が響きあい、ポスト震災の阿藤ワールドの全貌が見えるであろうとの期待を抱かせるに十分なお膳立てである。しかしながら、前作にはあった破壊力はなかった。ところどころで違和感を覚え、テクストと上演作品との相関関係を考えさせられた。
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忘れられない1冊、伝えたい1冊 第3回

◎「チェーホフの『桜の園』について」(宇野重吉著、麦秋社)
 都留由子

「チェーホフの『桜の園』について」表紙 劇団民藝の俳優で演出家だった宇野重吉が、チェーホフの『桜の園』を演出した際の上演台本と演出ノートを整理して出版したのがこの「チェーホフの『桜の園』について」である。注釈は不要だろうが、劇団民藝といえば新劇の老舗、宇野重吉といえば、1988年に亡くなるまで、滝沢修と並んでその民藝の重鎮だった人である。

 1978年に出版され、そのときに読んだ。当時、話題になったのだと思うが、それはあまり覚えていない。ただ、読んでびっくりしたことだけはよく覚えている。あまりにびっくりしたので、その後、学校を卒業し、身辺の変化と何回かの引越しを経てなお、この本は手元にあるほどである。
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サンプル「女王の器」

◎洗剤、アニメ、錬金術。
 山崎健太

 「界面、活性!」

 このセリフに『女王の器』における企みの全てが込められていると言ってもよい。耳慣れない言葉かも知れぬが、界面とはつまり境界面であり、身近なところでは洗剤に界面活性剤という薬剤が使われている。界面活性剤は水と油の両方に親和性があるため、本来は混ざり合わない水と油にこの界面活性剤を混ぜ込むと「乳化」という現象が起き、両者が均一に混ざり合う。界面活性剤の働きに象徴される、相異なる二つのものの混合というのが『女王の器』の中で繰り返し取り上げられるモチーフのひとつだ。
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サンプル「女王の器」

◎女王の国を駆けぬける男児の悪乗り
 前田愛実

 サンプルはごく初期から見続けている劇団だが、登場人物の造形や戯曲の構造に感心はしても、とうてい理解したり、まして共感などできるものではないと思っていた。
 松井周の処女作にあたる『通過』では、性器を事故で失った男性とその家族が、怪しい宗教に家をのっとられていく蟻地獄的な顛末にぞっとし、『カロリーの消費』では痴呆症の老人に介護士が性器マッサージするエピソードに、叫びだしそうな嫌悪感を覚えた。よくもこんなに悪趣味なことを思いつけるなとむしろ感心したし、それら鬼畜な内容は、青年団所属俳優たちによる清潔な演技とのギャップで、壮絶な後味の悪さをかもしたものだ。
 ところが、ところがといっていい、今回の『女王の器』では、初めてサンプルの上演に共感してしまった。
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忘れられない1冊、伝えたい1冊 第2回

◎『道具づくし』(別役実著、大和書房)
 大泉尚子

「道具づくし」(大和書房)表紙
「道具づくし」(大和書房)表紙

 大きな声じゃあ言えないが、演劇やダンスに本は要らないと思って久しい。やっぱり舞台は「やる」か「見る」しかないっしょ。不勉強の言い訳でもあるけど。とはいえ「犬も歩けば」で、出会うものはある。

 さて、劇作家が自らの作品を読み上げる「芸劇+トーク―異世代劇作家リーディング『自作自演』」はどの回も面白かった。なかでも印象深かったのが、第3回に登場された別役実さん。
 直前に腰を痛められたとか、脇を支えられ、やや覚束ない足取りで登壇。心なしか、朗読の声も力がないようで「大丈夫かしら…」と思いきや―。
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