die pratze「授業」フェスティバル

◎イヨネスコの不条理劇はどう料理されたか?(上)
 芦沢みどり

「授業」フェスティバルのチラシ
「授業」フェスティバルのチラシ

 イヨネスコの『授業』を10団体が連続上演するという催しが、ゴールデンウィークとそれに続く1週間、神楽坂die pratzeであった。「如何に『授業』を料理するか?」という香辛料を利かせたサブタイトル付きのフェスティバルは、2団体を一組にして、それぞれ4回(組によっては2回)『授業』を上演するというメニュー。学校の時間割ふうの公演チラシの表現だと、最初のひと組が01・02限目で4月27日から29日まで。そのあと一日空けて、つまり休み時間があって、次が03・04限目。これが順次繰り返され、最終組の09・10限目は5月11日から13日にあった。このスケジュールは観客にとってもゴールデンウィークに他の予定を入れ易く、結果、筆者は全公演を観てしまった。もっともそれはタイムテーブルのせいばかりではない。10団体のどれもこちらの不勉強で初めて観る団体だったのだが(4団体は地方からの参加、と言いわけしておこう)、ネットで事前に予備知識をインプットする時間の余裕もなく(と、また言いわけ)、いわばまっさらな状態で舞台と向き合うことになったのが、とても新鮮に思えたということもある。
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笑の内閣「ツレがウヨになりまして。」(クロスレビュー挑戦編第28回)

 「笑の内閣」は2005年の結成。劇団HPには「馬鹿馬鹿しい下ネタから、芝居中本当にプロレスをやるプロレス芝居をしたり、時事ネタも得意」とありました。今回は「愛国心を問う思想系ラブストーリー」だそうですが、その実体やいかに-。レビューは★印による5段階評価と400字コメント。掲載は到着順。末尾の括弧内は観劇日時です。(編集部)

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ミクニヤナイハラプロジェクト「幸福オンザ道路」

◎前へ!前へ!前へ!
 山崎健太

「幸福オンザ道路」公演チラシ
「幸福オンザ道路」公演チラシ

 矢内原美邦は繰り返し時間を描いてきた。ミクニヤナイハラプロジェクトの1作目として上演された『3年2組』は学生時代に埋めたタイムカプセルを巡る物語であるし、第56回岸田國士戯曲賞を受賞した『前向き!タイモン』はその全体が「1秒の戯曲」「1秒の物語」であるとされている。そして『幸福オンザ道路』もまた、失われた時間を巡る物語であるとひとまずは言うことが出来るだろう。本稿では時間を切り口に『3年2組』以降のいくつかの矢内原作品に触れ、『幸福オンザ道路』に至る矢内原作品に流れる通奏低音とでも呼ぶべきモチーフを明らかにしていく。
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【レクチャー三昧】2012年6月

 私事ですが、科目履修している大学院ゼミの負荷が学力低き身にはこたえてこたえて、あちこち出かけられなくなりました。せめて、どなたかのご興味を引く催しがひとつでもご紹介できていれば幸甚です。(6月の催しが中心ですが、それ以降のものも一部含みます。)
(高橋楓)
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ドイツ・タンツプラットフォーム2012

◎身体言語の可能性を追求
  岩城京子

ドイツ・タンツプラットフォーム2012
タンツプラットフォーム2012

 旧東ドイツの工業都市ドレスデンの中心地から二両編成の路面電車で北に7キロほど。丘上の温泉宿にでも向かうように山を登り、森をくぐり、果たして大丈夫だろうか、と自分の方向感覚にやや不安がよぎりはじめたころ、ようやく本年のドイツ・タンツプラットフォームの開催本部「ヘレラウ欧州芸術センター・ドレスデン」が建つヘレラウという町に到着する。ちなみにこの町は、かのル・コルビュジェが「ドイツ随一の芸術家により作られた素晴らしき町」と称賛したドイツ史上初の田園都市。巨匠建築家がそう言うのなら、確かに、まあ美しいのかもしれないが、こちらとしてはあまりそんなありがたみはなく、ただなにもないけど緑だけはふんだんにある呑気で小さな町にやってきたなと遠足気分である。そんな小粒な町にて、2月23日から26日にかけて、ドイツダンスの最先端を紹介するイベントは開催された。
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6月のクロスレビューはロ字ック(東京)と月面クロワッサン(京都)

 ワンダーランドのクロスレビュー挑戦編6月の対象公演は、ロ字ック「鬼畜ビューティー」(6月6日-10日、新宿・サンモールスタジオ)と、月面クロワッサン「夏の目撃者」(6月8日-11日、京都・元立誠小学校職員室)に決まりました。7-8月の公募は一時休止。9月公演(8月15日締め切り)から再開します。(編集部)

玉造小劇店「ワンダーガーデン」

◎不思議の庭の四姉妹 新旧三種の「二十年間」を定点観測
 金塚さくら

「ワンダーガーデン」公演チラシ 時は明治の終わり。白いバラの咲き乱れる洋館の庭。
 とある良家の三姉妹が、長女の結婚によって四姉妹になるところから物語は始まる。長女・千草、次女・薫子、三女・葉月に、千草の夫の妹・桜が実の妹同然に親しく交わるようになり、さらにそれぞれの娘たちの恋人ないしは配偶者が加わって、二十年に渡る一家のささやかなドラマを紡いでいく。明治から大正、昭和と移り変わってゆく時代の中で、舞台上ではNHK朝の連続テレビ小説のようにクラシカルな物語が展開する。
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忘れられない1冊、伝えたい1冊 第6回

◎「14歳の国」(宮沢章夫著 白水社 1998年)
 田辺剛

「14歳の国」表紙 わたしが初めて自分で戯曲を書き、劇作家として活動を始めようとした頃、どうやって書けばいいのかも分からず見よう見まねでやるほかないと、やる気だけは十分な時に出会った『14歳の国』だ。戯曲の一部を試演しているのを観て興味をもち、本屋を探したのを覚えている。装丁の写真やデザインも印象的だった。
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ひょっとこ乱舞「うれしい悲鳴」

◎ネタ・シアターの限界と、戯曲の寿命(第1回)
 堤広志

●「ひょっとこ乱舞」は、常に“気がかり”な劇団だった

「うれしい悲鳴」公演チラシ
「うれしい悲鳴」公演チラシ
宣伝美術=山代政一

 ひょっとこ乱舞という劇団は、私にとって常に“気がかり”な存在だった。
 “気がかり”というのは、他の多くの若手小劇団に対して抱くような“心配”とはまた別種の懸念といっていいかもしれない。実際、小劇場演劇に接していると、将来を期待したくなるような才能が感じられず、突出した舞台成果も見受けられないために、「この人たちはこんなことをしていて大丈夫なのだろうか!?」「もっとこうした方が良いのではないだろうか?」といった老婆心が湧き起こることが往々にしてある。
 その一方で、このままそうした人たちの活動にオブザーバーとして付き合いながらも、無為に自分の人生の貴重な時間を浪費するような生活を送っていて、はたして割に合うのか、無駄なのではないかと思わされることも少なくない。
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クロスレビュー「佐藤佐吉演劇祭」編を6月-9月に

 ワンダーランド(小劇場レビューマガジン)は王子小劇場と提携して、今年6月から9月にかけて開かれる「佐藤佐吉演劇祭」の全公演(10本)をクロスレビュー形式で取り上げることになりました。王子小劇場が2年に一度のペースで開催する演劇の祭典に、観客のレビューによる参加の機会を設けます。初回は劇団競泳水着「Goodnight」(6/22-7/2)です。みなさんの投稿を期待しています。
(注)通常のクロスレビュー挑戦編の7-8月公演募集は一時休止します。再開は9月公演分(8月15日応募締め切り)からとなります。ご注意ください。
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