ナカゴー「黛さん、現る!」(クロスレビュー佐藤佐吉演劇祭編 5)

「黛さん、現る!」公演チラシ

 ナカゴーは2004年に作・演出の 鎌田順也らを中心に旗揚げ。どんな劇団かとWebサイトを探してみたけれど、結成の趣旨や旗揚げの意気込みなどは見当たらない。どうも、そういう構えた姿勢は好みではないらしい。淡々と並んだ過去の公演記録をみていると、強いて作り込まない世界がちょっとした非日常と同居しているように見えます。今回の第10回公演は、劇団の個性的なメンバーに加えて、これも個性的な客演陣が参加していました。一体どんな舞台だったのでしょうか。レビューは、★印による5段階評価と400字コメントです。掲載は到着順。末尾の括弧内は観劇日時です。(編集部)

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国際サーカス学校「旅する道化師と大道芸人たち」

◎70日間全国巡演で広がった輪 放射能汚染で休校中に
 西田敬一

サーカス学校所在地
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 旅にでた。
 群馬県みどり市東町沢入という、渡良瀬川の上流に位置する中山間部の村落。この地で廃校になった小学校を借りて、10年以上も若いアーティストを育ててきた沢入国際サーカス学校は、福島第一原発の巨大事故による放射能汚染の影響で、休校という道を選んだ。今も、世界中に放射能をばら撒き続けている福島第一原発から、栃木県との県境にある、沢入という自然豊かな山間の部落までは、直線距離にして170キロもあるにもかかわらず、汚染除去地域に指定されるほどの放射能を帯びさせられたのである。
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【レクチャー三昧】2012年8月

 8月のイヴェントは少ないので、あらためて7月下旬から9月分まで検索してみました。直前に告知されるものは拾いきれておらず申し訳ございません。9月開催分は8月下旬にあらためてお知らせいたします。
(高橋楓)
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シンクロ少女「少女教育」(クロスレビュー佐藤佐吉演劇祭編 4)

「少女教育」公演チラシ

 シンクロ少女は2004年、日本映画学校映像学科在学中に名嘉友美が旗揚げ。以後全ての作品の作・演出を名嘉が務めてきました。劇団HPによると、「愛」と「性」、「嫉妬」や「欲」など「目に見えない感情や欲求をテーマに、見た人の血となり肉となる作品を目指して公演を打つ、エロ馬鹿痛快劇団」だそうです。さて、佐藤佐吉演劇祭編参加の第10回公演はどうだったのでしょう。★印による5段階評価と400字コメントをご覧ください。掲載は到着順。末尾の括弧内は、観劇日時です。(編集部)

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地点「コリオレイナス」

◎Chiten to Globe-地点『コリオレイナス』@グローブ座観劇レポート-
 關智子

 ロンドンのグローブ座が地点を招聘した。
 シェイクスピアのグローブ座、京都を中心に活動している地点、その両方を知っている人がこのニュースを聞けば、「えっ」と思うに違いない。ほとんど想定できなかった組み合わせである。地点がシェイクスピア作品をやる、というだけの話ではない。それでも少し驚くくらいなのに、ロンドン、それもグローブ座という特殊な環境で地点がシェイクスピア作品をやるのだ。期待と当惑が入り混じった複雑な感情を覚えながら、チケットを購入した。
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子供鉅人「バーニングスキン」

◎道化の魔法がひらく 祈りのような情景
 鈴木励滋

「バーニングスキン」公演チラシ
「バーニングスキン」公演チラシ

 行進を促すようなリズムをドラムが刻む冒頭、タンスの上によじ登り仁王立ちする女。セピア色に見える景色の中で、女は「ふざけんじゃねぇ、くだらねぇ」と呪詛のような言葉を怒鳴りちらしているのだが、はたして彼女の怒りはどこへ向かっているのだろうか。

 この印象的な場面は、589nmの波長以外の色を見えなくしてしまうナトリウムランプの効果だ。東野祥子を始めとして多くのダンサーとも組んできた照明の筆谷亮也の鮮やかな仕事で、次のシーンで明かされる女の肌の秘密を際立たせることに成功した。意表をつきつつも単に奇抜さにとどまらない誠に巧みなオープニングだった。
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忘れられない1冊、伝えたい1冊 第8回

◎「死せる『芸術』=『新劇』に寄す」(菅孝行著、書肆深夜叢書、1967)
 西川泰功

「死せる『芸術』=『新劇』に寄す」表紙 宮崎駿監督(1941~)のアニメ映画『もののけ姫』(1997)に、タタラ場という製鉄を産業とした村が出てきます。村を治める頭はエボシという女です。宮崎はエボシについて、あるインタビューで「もの凄く深い傷を負いながら、それに負けない人間がいるとしたら、彼女のようになるだろうと思った」と語っています(ⅰ)。彼女は、理想の国を築くため、その地域を支配するシシ神と呼ばれる神を、自らの手で殺そうとするのです。他の登場人物たちは怖じ気づいて逃げ出してしまうのに。ぼくはここに、理想を実現する人物の根源にある苦悩を感じます。いきなりこんな話をするのは、この苦悩が、理想を芸術として実現するときにも生じるものだと考えるからです。
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悪い芝居「カナヅチ女、夜泳ぐ」(クロスレビュー佐藤佐吉演劇祭編 3)

「カナヅチ女、夜泳ぐ」公演チラシ
「カナヅチ女、夜泳ぐ」公演チラシ

 悪い芝居 は2004年旗揚げ。京都を拠点に「現在でしか、自分たちでしか、この場所でしか表現できないこと」(劇団HP)を芯にして活動しているそうです。山崎彬作「嘘ツキ、号泣」が第17回OMS戯曲賞佳作、昨年上演の「駄々の塊です」台本が第56回岸田國士戯曲賞最終候補作に選ばれるなど、いま人気・実力とも急上昇中の劇団です。王子小劇場主催「佐藤佐吉演劇祭2012」参加の最新作はどうだったのでしょうか。レビューは5段階評価と400字コメント。掲載は到着順。末尾の括弧内は、観劇日時です。(編集部)

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チェルフィッチュ「現在地」

◎見下ろせば透明
 林カヲル

「現在地」公演チラシ チェルフィッチュが四月に神奈川芸術劇場で新作『現在地』を上演した。作・演出は岡田利規。チェルフィッチュとはセルフィッシュを幼児語化した造語だが、本作はそのような意味ではまったくチェルフィッチュではない。岡田が若者言葉の多用をやめて久しいが、今回は口語ですらないともいえる。人物も話題もセルフィッシュではない。一種、巨匠と呼びたいような風格を備えた作品となった。
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まごころ18番勝負「錯惑の機序、或いはn質点系の自由度」(クロスレビュー佐藤佐吉演劇祭編 2)

まごころ18番勝負 第15回公演チラシ クロスレビュー佐藤佐吉演劇祭編の第2弾はまごころ18番勝負公演です。この劇団は2001年に旗揚げ。その後名前を現行にあらため、2006年頃からミステリ上演に向かいます。凝ったタイトルと込み入った仕掛けの舞台が本格化しました。今回は、絶海の孤島を舞台にした連続密室殺人事件。密室はどう解明されたか。犯人は、動機は…。二転三転する舞台を五つ星と400字コメントでレビューします。掲載は到着順。コメント末尾の括弧内は観劇日時です。(編集部)

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