ロロ「父母姉僕弟君」(クロスレビュー佐藤佐吉演劇祭編 6)

 自分たちを「劇団」といわずに「カンパニー」という平均年齢20歳代前半のメンバー。「同時多発的に交錯する情報過多なストーリーを、さらに猥雑でハイスピードな演出で、まったく新しい爽やかな物語へと昇華させる作品が特徴的」とWebサイトにある。これまでロロの舞台は「ボーイ・ミーツ・ガール」路線が多かったが、今回の舞台は…。レビューは5つ★の採点と400字コメント。掲載は到着順。レビュー末尾の括弧内は観劇日時です。(編集部)

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ベルリンHAU劇場「無限の楽しみ」

◎24時間観劇ツアー体験記
 横堀応彦

はじめに

 いまドイツでは、上演時間の長い演劇が熱い。
 筆者は今年5月から6月にかけて、ベルリンを拠点としながらヨーロッパの演劇祭を探訪した(注1)。2ヵ月間で合計50本ほど観劇した作品のうち、上演時間の長かった演目ベスト3は全てベルリンで上演されたものだった。

 第1位:『無限の楽しみ(原題:Unendlicher Spaß)』(上演時間:24時間)
     製作:HAU劇場(ベルリン)
 第2位:『ジョン・ガブリエル・ボルクマン』(上演時間:12時間)
     製作:フォルクスビューネ(ベルリン) 
 第3位:『ファウストⅠ+Ⅱ』(上演時間:8時間半)
     製作:タリア劇場(ハンブルク)
  
 今回は編集部の方から「ドイツ滞在の中で特に印象深かったものを」というお題を頂いたので、上演時間の長かった第1位の『無限の楽しみ』の体験レポートをお届けする。
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甘もの会「はだしのこどもはにわとりだ」

◎完璧な劇空間の果たす役割
 落雅季子

「はだしのこどもはにわとりだ」公演チラシ
「はだしのこどもはにわとりだ」公演チラシ

 甘もの会は、京都在住の劇作家、肥田知浩と、演出の深見七菜子からなる二人のユニットだ。数年に一度だけ咲く花のように密やかに公演を行い、また数年の熟成期間に入ってしまう。そんな彼らの二年ぶりの新作、『はだしのこどもはにわとりだ』を観た。旗揚げは2008年。2010年に上演された『どどめジャム』では劇作家協会新人戯曲賞にノミネートされたと記憶しているが、今回はそれに続く第三回目の公演である。
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忘れられない1冊、伝えたい1冊 第9回

◎「宇宙 -そのひろがりをしろう-」(加古里子著、福音館書店、1978)
  柴幸男

「宇宙 -そのひろがりをしろう-」表紙
「宇宙」表紙

 すべてを知りたい、と思うときがある。人間には、知りたいという願望、欲求、快感がある。知的好奇心、探究心、特に、僕は、それが満たされた瞬間に、幸福を感じる。だから、知らないことが沢山あるのだと実感したときは、とても寂しいような気持ちになる。沢山の本、映画、音楽を、目の前にしたとき、一生をかけてもそれらすべてを享受ことはできないと瞬時に悟った、あの絶望。いや、さらに言えば、例えば、家の、玄関のドアを開けたとき、目の前に広がる光景の、すべて。例えば、名前、歴史、役割、仕組み、本当に理解しているのだろうかと、考えるときがある。そして、クラクラする。当たり前だが、そんなことは不可能だ。きっと日常生活は送れなくなる。そして、それが不可能だと理解したとき、自分もまた、その無数の、理解しえない、物質の一粒でしかない、ことを体感する。そしてまた、無力感に襲われる。それでも、いや、だからこそ、その一粒が、どこまで、世界を想像しえるのか、挑戦したくなるのかもしれない。
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劇評を書くセミナー 東京芸術劇場コース 受付中!

 ワンダーランド(小劇場レビューマガジン)は東京芸術劇場の共催で今年9月から「劇評を書くセミナー 東京芸術劇場コース」(全9回)を始めました。劇評・レビューを書くことによって公演の理解を深め、演劇を共に考えようとする試みです。講師は佐々木敦(批評家)、扇田昭彦(演劇評論家)、徳永京子(演劇ジャーナリスト)、林あまり(歌人、演劇評論家)の4氏(50音順)。東京芸術劇場の選りすぐりの公演に、少数ゼミ形式でじっくり取り組みます。すでに4回が終わり、第5回は年明け2013年1月11日(金) 。講師は徳永京子さん(演劇ジャーナリスト)です。取り上げるのは「ポリグラフ~嘘発見器~」(脚本・構想:マリー・ブラッサール/ロベール・ルパージュ、演出:吹越満)(12月12日-28日)。受講受付中(定員20人)。残りわずかです。詳細は>> 劇評セミナーページをご覧ください。
 >>東京芸術劇場サイトに劇評セミナーの概要が掲載されています。>>

かもめマシーン「パブリックイメージリミテッド」

◎ポリフォニーの意味
 志賀信夫

かもめマシーン「パブリックイメージリミテッド」公演チラシ
公演チラシ

他人が台詞を語る

 登場人物に対して、他の人がその台詞を語る。これが、近年、萩原雄太がこだわっている手法。今回の舞台、物語としての登場人物は男女それぞれ1人。それを男3人、女2人が演じる。というか、その台詞を喋る。

 冒頭、立ち並んだ5人が一言ずつ、作品のタイトル「パブリックイメージリミテッド」と発声するところから、舞台が始まる。そして中心に立った1人の女性の顔や首周辺を、もう1人の女性が整えるように押さえると、彼女の台詞を他の人たちが交互に、時には重なるようにして、語り出す。
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