劇団印象「グローバル・ベイビー・ファクトリー」

◎ファンタジーから現実へ
 今井克佳

gbf0a 劇団印象(いんぞう)の鈴木アツトの作品と言えば『青鬼』や『匂衣』などが印象に残っている。食用に飼っていたイルカが人間化してしまう話(『青鬼』)やら、盲目の女性の家に「犬」として住み込む居候の話(『匂衣』)など、鈴木の劇作はありえないファンタジックな設定から、笑いと現代社会へのちくりとした批判を汲み出してくるといった作風だった。『青鬼』などは再演でブラッシュアップされ完成された面白さを持っていたし、『匂衣』は新たな劇作世界への可能性を感じさせてくれた。演出においてもフィジカルシアターとしての面白さを持つものが多かった。

“劇団印象「グローバル・ベイビー・ファクトリー」” の続きを読む


ナショナル・シアター・ライヴ「フランケンシュタイン(Aバージョン)

◎もたれあう父子に見る人類と科学の姿
辻 佐保子

 昨今メトロポリタン・オペラや劇団☆新感線など舞台作品の映画館での上映が頻繁に行われ、ついに英国ナショナル・シアター (以下、NTと略記) 作品の上映も2014年からTOHOシネマズにて開催されることとなった(註1)。ナショナル・シアター・ライヴ日本上映の記念すべき第一作は、2011年にオリヴィエ劇場で上演された『フランケンシュタイン』 (Frankenstein) である(註2)。メアリー・シェリーの『フランケンシュタイン あるいは現代のプロメテウス』(Frankenstein: or the Modern Prometheus, 1818) を下敷きとしているNT版『フランケンシュタイン』はどのような作品であるのか。その特色を端的に挙げると以下の二点となる。
“ナショナル・シアター・ライヴ「フランケンシュタイン(Aバージョン)” の続きを読む


ココロノキンセンアワー演劇部「カレー屋の女」

◎新聞紙で作る竈に無言の想い
 西村博子

currywomen0a 公演後毎回催されたアフタートーク「3.11後の演劇を語る」で、公務の傍ら観劇歴30年という佐々木久善氏から仙台をはじめ東日本の様子を聞くことができた。
 それによると大震災を描いた作品は非常に多く、あまり多いので暫く自粛しようよと話し合った演劇コンクールさえあったほどという。佐々木氏は高校演劇の審査員もされているのだが、それでも、津波で亡くなった生徒をモチーフにした宮城県名取北高校の「好きにならずにはいられない」が東北地区の最優秀賞に選ばれ、昨年(2013年)10月に長崎で開かれた第59回全国高等学校演劇大会に出場し、優良賞に選ばれたと。

“ココロノキンセンアワー演劇部「カレー屋の女」” の続きを読む


山の手事情社「ヘッダ・ガブラー」

◎生き生きしたゾンビ
 水牛健太郎

 薄暗い青い光で照らされた約2メートル四方の舞台には白い雪(繊維状の材料のようだ)が降り続いており、山のように盛り上がったところが何か所かある。そこに鮮やかな青いドレスを着たヘッダ(山口笑美)が現れると、盛り上がった雪の中から男3人が立ち上がり、ヘッダを取り囲んだ。こうして上演が始まった。
 今回の「ヘッダ・ガブラー」の特徴は何といっても、ヘッダを除く登場人物が「ゾンビ」として舞台に現れることだ。顔は白塗り、衣装はところどころ破れた薄いガーゼ状の布で覆われて、色あせてぼろぼろになった服を表現している。また彼らは舞台への登場と退場の際はぎくしゃくと不自然に身体を歪ませている。小道具は、花束や論文、ピストルなどすべてが、雪で代用されている。俳優が何かに見立てて床の雪を掴み取ると、それは指の間からはらはらと落ちていく。すべてはゆめまぼろし、死者の国での出来事であったかのようだ。

“山の手事情社「ヘッダ・ガブラー」” の続きを読む


連載「もう一度見たい舞台」第3回

◎庭劇団ペニノ「アンダーグラウンド」
廣澤 梓

 22時の東急東横線の車内で、わたしの隣に座り眠っていた若い女性がケロリ、と嘔吐した。「ん、ん」とかわいらしい声をあげ、女性のからだが大きく2回波打ったのちのことだ。ゆっくりと目を覚ました彼女は自分に起きた異変を察して、口元に手を当てて指先の湿り気を確認すると、タイミングよく停車した電車から降りて行った。
 からだ全体が揺さぶられるほどの出来事を、女性は触覚という別の回路を使ってしか理解ができなかった。驚きと恐怖が混ざった感覚はいつまでも残り、すれちがう人たちひとりひとりの腹部に水をたたえた袋があることを想像して青ざめながら、わたしは過去に見たある芝居について思い出していた。
“連載「もう一度見たい舞台」第3回” の続きを読む


北九州演劇フェスティバル2014 関連企画「劇トツ×20分」

◎20分でも「演劇」として
 柴山麻妃

劇トツチラシ 昨年度から、日本劇作家協会主催の「劇王」出場権を争って、九州地区でも「劇トツ×20分」が始まった。これは、「上演時間20分」「登場人物は3名まで」というルールのもとで作られた作品の中から、観客と審査員の投票で優勝作品を選び出すというものだ。

 3月に北九州芸術劇場で開かれた第二回目は、昨年度の稽古場での公演から小劇場へと場所が替わり(縦横一間ずつ広くなった)、より本格的な上演形態となった。今回出場したのは5劇団、優勝した劇団には北九州芸術劇場・小劇場での上演権が与えられる。審査員には「ままごと」の柴幸男氏、映画監督のタナダユキ氏。試験的な一回目に比べ、今年は全体的に作品の質も上がり見応えのある大会になった。

“北九州演劇フェスティバル2014 関連企画「劇トツ×20分」” の続きを読む


きたまり+NPO法人Offsite Dance Project「RE/PLAY(DANCE Edit.)」

◎演劇とダンスと人生−多田淳之介演出「RE/PLAY(DANCE Edit.)」をめぐって
 木村覚

フライヤーデザイン:加藤和也
フライヤーデザイン:加藤和也

 例えるなら、魚を水槽に放ったとして、その水槽と魚の関係がこの作品における演劇とダンス(ダンサー)の関係であった。多田淳之介の『RE/PLAY(DANCE Edit.)』は見終わった瞬間、いや見ている間も、非常に挑戦的な、ゆえに考察するに値する作品だとぼくの目に映った。演劇がダンスを取り込む。それは昔から行われてきたことではある。幕間で役者たちが踊るなんて使い方はかねてからありふれていたが、岡田利規が登場して、その独特な台詞回しのみならず役者たちの奇妙な身体運動に注目が集まり、果てはコンテンポラリー・ダンスの一大イベント、トヨタ・コレオグラフィーアワード(2005)に出場するなんてことが起きてからというもの、演劇とダンスは別物と考える思考は明らかに「古く」なった。
“きたまり+NPO法人Offsite Dance Project「RE/PLAY(DANCE Edit.)」” の続きを読む


アトリエセンティオの8年

◎消費文化のサイクルから離れて(インタビュー)
 山田裕幸(ユニークポイント)+鳴海康平(第七劇場)

 東京・北池袋にあるアトリエセンティオが、8年間の活動を経て3月いっぱいで閉鎖になりました。ユニークポイントと第七劇場という二つの有力劇団の活動拠点であり、毎年開くSENTIVAL!という演劇フェスティバルの会場でもありました。アーティスト本位の運営、地方劇団の招聘、公演終了後に毎回開くトークが観客に好評でした。拠点の開設から閉鎖まで、活動のようすを両劇団の主宰者である山田裕幸さん(ユニークポイント)と鳴海康平さん(第七劇場)に伺いました。(編集部)

“アトリエセンティオの8年” の続きを読む


第1回高校生劇評グランプリ表彰式

◎野田秀樹さんらが祝いの言葉 レベルの高い劇評が揃う

 第1回高校生劇評グランプリ(主催:公益社団法人国際演劇協会日本センター)の表彰式が3月31日午後、東京芸術劇場シンフォニースペース(5階)で開かれた。同協会の永井多恵子会長から最優秀賞の石本秀一さん(早稲田実業学校高等部 )ら入賞した11人に賞状が授与された。
 選考委員長を務めた扇田昭彦さん(演劇評論家)は講評の中で「初めての試みだったが、レベルの高い劇評が揃った。特にNODA・MAP公演『MIWA』を取り上げて最優秀賞を受賞した石本さんの劇評は、演出や俳優の演技の魅力に触れ、芝居を見ていない人が読んでもどういう舞台か分かる。しかも自分の見方、意見がしっかり書き込まれていてすばらしい。高く評価され、選考委員の票が集まった」と述べた。
“第1回高校生劇評グランプリ表彰式” の続きを読む


【レクチャー三昧】2014年5月

 5月の催しとともに、早稲田大学の通称「翻訳プロジェクト」をご紹介致します。研究者以外ではご存じないかたが多いと思いますが、「日本国外で刊行された舞台芸術関連文献を翻訳し、ウェブ上で無償公開することを目的としている」プロジェクトです。重要ながら今まで邦訳されていなかった多くの文献が、以下のリンクで読めます。わたしもここでイプセンの偉大さを学びました。
http://kyodo.enpaku.waseda.ac.jp/trans/modules/xoonips/listitem.php?index_id=3
(高橋楓)
“【レクチャー三昧】2014年5月” の続きを読む