山の手事情社「ヘッダ・ガブラー」

◎生き生きしたゾンビ
 水牛健太郎

 薄暗い青い光で照らされた約2メートル四方の舞台には白い雪(繊維状の材料のようだ)が降り続いており、山のように盛り上がったところが何か所かある。そこに鮮やかな青いドレスを着たヘッダ(山口笑美)が現れると、盛り上がった雪の中から男3人が立ち上がり、ヘッダを取り囲んだ。こうして上演が始まった。
 今回の「ヘッダ・ガブラー」の特徴は何といっても、ヘッダを除く登場人物が「ゾンビ」として舞台に現れることだ。顔は白塗り、衣装はところどころ破れた薄いガーゼ状の布で覆われて、色あせてぼろぼろになった服を表現している。また彼らは舞台への登場と退場の際はぎくしゃくと不自然に身体を歪ませている。小道具は、花束や論文、ピストルなどすべてが、雪で代用されている。俳優が何かに見立てて床の雪を掴み取ると、それは指の間からはらはらと落ちていく。すべてはゆめまぼろし、死者の国での出来事であったかのようだ。

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