トヨタ コレオグラフィーアワード2014

◎明らかにされない判断基準、今後が期待される顕彰事業
 鉢村優

 トヨタ自動車と世田谷パブリックシアターの提携事業として2001年に創設されたトヨタ コレオグラフィーアワード。一般公募の中から選ばれた6名(組)の振付家がファイナリストとして作品を上演し、“ネクステージ”(最終審査会)で「次代を担う振付家賞」の授与者を決定する。本アワードは、トヨタ自動車の公式サイトによれば、「ジャンルやキャリアを超えたオリジナリティ溢れる次代のダンス」を対象とし、振付家の成長を支援する目的で実施されている。9回目の開催となる本年は以下の6組がネクステージに選出された。

 捩子ぴじん 「no title」
 スズキ拓朗「〒〒〒〒〒〒〒〒〒〒」
 木村玲奈「どこかで生まれて、どこかで暮らす。」
 塚原悠也「訓練されていない素人のための振付けのコンセプト001/重さと動きについての習作」
 川村美紀子「インナーマミー」
 乗松薫「膜」

 以下、上演順に各作品について整理していく。
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クロード・レジ演出、SPAC『室内』アヴィニョン公演

◎喧噪のなかの静寂
 片山幹生

 『室内』の公演会場は、城壁で囲まれたアヴィニョンの中心街からバスに乗って25分ほど行ったところにあった。フェスティヴァルで活気づくアヴィニョン市壁内の狂騒とは無縁の静かでがらんとした場所だ。モンファヴェという郊外の小さな町にあるそのホールは、日本の地方都市にでもありそうな無機的で特徴の乏しい多目的ホールだった。クロード・レジが2009年のアヴィニョン演劇祭で『彼方へ 海の讃歌』を上演したときに使ったのもこの会場だった。
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劇団チョコレートケーキ「サラエヴォの黒い手」

◎歴史に向き合う自然な演技
 (鼎談)芦沢みどり(戯曲翻訳)、チンツィア・コデン(演劇研究)、北嶋孝(編集部)

「サラエヴォの黒い手」公演チラシ
「サラエヴォの黒い手」公演チラシ

北嶋 今年は第一次世界大戦の引き金になったサラエヴォ事件からちょうど100年になります。1914年6月28日、当時オーストリア=ハンガリー帝国に併合されていたボスニアの都市サラエヴォで、オーストリアの皇太子夫妻が暗殺されました。犯行グループの青年たちをセルビアが支援したとみたオーストリアは7月28日に宣戦布告。それがドイツやロシア、フランス、イギリスなどを巻き込んだ戦争に発展しました。
 劇団チョコレートケーキの「サラエヴォの黒い手」公演はこの史実に正面から取り組みました。過去の公演では、第一次世界大戦後から第二次大戦にかけて、主にドイツで起きた歴史にスポットを当てた舞台が続いていました。今回はその源流をたどる趣もあります。
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PARCO STAGE「金閣寺 The Temple Of The Golden Pavilion」

◎イメージの中の輝き
 植村真

 想像は現実を超える。
 『金閣寺』は三島由紀夫の代表作の一つであり、今も国内外で多くの人の支持を得ている小説である。
 2011年、演出家の宮本亜門によってKAATの杮落としとして上演された『金閣寺 The Temple Of The Golden Pavilion』はニューヨークのリンカーンセンターフェスティバルでも好評を受けた。海外でも三島の小説は多くの国で翻訳がなされ、高い評価を受けている。1985年にアメリカで公開された『Mishima: A Life In Four Chapters』(Paul Schrader監督)では三島の生涯と、3つの三島の小説を映画化し、第一部の「美」というテーマの中では、『金閣寺』が描かれている。
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東京デスロック「CEREMONY」

◎見る/見られるをめぐるダンスフロアー
廣澤梓

CEREMONY_l「観客という集合体を構成する個人は、それぞれ社会から〈離れて〉劇場に〈出かけ〉ていくが、劇場では一個人としてではなく集団として反応することで、社会の役を演じることになる。」 —リチャード・シェクナー「儀礼のゆくえ」『パフォーマンス研究—演劇と文化人類学が出会うところ』

 劇場に入ると床には、マゼンダとシアンの影が左右にブレて落ちている。立体視のできるメガネをかけているかのような視界と、天井で回るミラーボールが遠近感を狂わせる。冷静でいようとしてかえってやってきた緊張を解きほぐそうと、わたしは開場時間のBGMとしては大きすぎる音楽に身体を揺らした。
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DULL-COLORED POP『プルーフ/証明』 +風琴工房『proof‐証明‐』

◎「しのぶの演劇レビュー」に教えられた「見比べ」の愉悦
高橋 英之

chirashi 観劇後も作品の残像が脳裏から離れず、そうこうするうちに、次々と関連したものに出会ってしまい、やがて、実際に舞台の客席に座っていたときよりも、さらなる深みにはまっていってしまう刺激的な作品がある。そうした作品は、観劇する前からもドラマティックな空気をまとって接近してきたりする。

 DULL-COLORED POP(以下“ダルカラ”)と風琴工房という実力派の劇団が、『proof』という作品をほぼ同時期に東京で上演すると教えてくれたのは、演劇ウォッチャー・高野しのぶさんのメルマガ「しのぶの演劇レビュー」だった。演劇ファンを自認する人なら、お世話になっていない人はいないともいえる貴重な情報源となっているメルマガで、彼女は『proof』について「見比べると、さらに面白いと思います」とコメントしていた。そのメルマガでのコメントは、たまたま出張で滞在していた米国西海岸のシアトルに届けられた。
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飴屋法水「教室」

◎境界線上のグロテスク
 落 雅季子

「教室」チラシ 『教室』は、2013年夏、大阪のTACT/FESTで上演された子どものための演劇である。一年の時を経て、東京の清澄白河の地で再演されることとなった。作、演出は飴屋法水。出演者は飴屋、コロスケさんこと三好愛、くんちゃんこと三好くるみちゃんという、実際の家族として暮らす三人だ。 “飴屋法水「教室」”の続きを読む


民俗芸能調査クラブ「バリ島合宿」

◎空間を広げていく可能性
 萩原雄太

 旅行パンフレットに「神秘の文化」とか「芸術の島」といった宣伝コピーが踊っているのには、思わず「本当は芸術とか興味ないくせに……」と揶揄の一つも言いたくなるのだけど、バリ島にはとても魅力的な伝統芸能が数多く残されているのは確かだ。「ケチャ」「ガムラン」「バリ舞踊」「ワヤンクリ」などなど、他の地域には見られないバリの伝統的な文化は観光産業と結びついて、世界中から300万人あまりの観光客を誘致することに成功している(2012年)。
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【レクチャー三昧】2014年9月

日中の残暑は厳しいですが日が暮れれば虫の音が聞こえてきます。大学は夏休み中で9月のイヴェント告知は出揃っていないようです。9月中に申込のイヴェントも掲載致しました。
(高橋楓)

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SCOT「演劇人のための鈴木教室」

◎雑感:鈴木教室に参加してみた
 危口統之

 昨年12月、劇団SCOTによる「吉祥寺シアター公演と演劇人のための鈴木教室」が行われました。この鈴木教室とは「演出家・鈴木忠志が、将来のリーダーを目指す若い演劇人のために、『シンデレラ』の舞台稽古を見せながら、演出論、演技論について受講者と対話する企画」というもの。さらに今年2月にはSCOTの本拠地、富山県利賀村でその続きが行われました。そこに参加した、悪魔のしるし主宰・危口統之さんの報告記です。(編集部)

 ネットで開催の報を知り気になってはいたが最終的には友人からの勧めがダメ押しとなって参加することになったのが去年の師走で、すっかり時間が経ってしまったせいで、このときの自分が何を考えていたのかはもう思い出せない。何も考えていなかったのかもしれない。今となってはただ、参加したという事実があるのみである。吉祥寺シアターでの一連のレクチャーを終えたあと懇親会の場でいろんな人から「参加してよかったか」と訊かれ、そのときは勿論と答えたが、別に良い悪いで判断することでもないと思う。ところで藤子不二雄A氏はかつて大山倍達のもとで空手を学んだこともあったそうだ。
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