連載「もう一度見たい舞台」第8回 蜷川幸雄演出「近代能楽集 卒塔婆小町」

◎観劇は初恋のように
 高羽彩

 私の、「演劇」というものに対する興味の芽生えは、小学校中学年頃。
 わりと早いほうなんじゃないかと思う。
 とはいっても「物心ついた頃から子役として活躍してました!」なんて人と比べれば全く話にならないし、興味が芽生えたといっても「将来は女優さんになりたいです!」なんて具体的な目標を早くから掲げたわけでもない。
 あくまでも「なんとなく」。
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トラファルガートランスフォームド「リチャード三世」

◎Tangled Cord, Strangled York, Mediated Tudor – 1970年代終盤の『リチャード三世』
 辻佐保子

 演出家ジェイミー・ロイドが芸術監督を務めるトラファルガー・トランスフォームド (Trafalgar Transformed) の第四弾である『リチャード三世』が、ロンドン中心部のトラファルガー広場に程近いトラファルガー・スタジオ1 (Trafalgar Studio 1) で現在上演されている。トラファルガー・トランスフォームドとは、普段劇場に足を運ばない若年層を観客として取り込むという使命を掲げるプロジェクトである。まだ二シーズン目であるものの、映画やテレビで活躍する俳優を主演に迎えたシェイクスピア劇の上演は話題を呼んでいる。昨年のジェームズ・マカヴォイ主演の『マクベス』に引き続き、今年は映画『ホビット』シリーズやBBCドラマ『シャーロック』で知られるマーティン・フリーマンがグロスター公リチャード役に迎えられた。
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ままごと「戯曲公開プロジェクト」をめぐるインタビュー(1)

◎戯曲のミックステープ
 關智子

 小劇場レビューマガジン・ワンダーランドを訪れる方の多くは演劇が好きな人だと思っている。したがって、今この記事をお読みになっているあなたもその一人と仮定しながら書いている。では、戯曲はどうだろうか。演劇が好きなあなた(仮)は、同じくらい戯曲をお読みになるだろうか。観客に好きな劇作家の名前を訊いて、いや、好きでなくても構わない、知っている日本の劇作家の名前を訊いて、どのくらいの名前が挙がるだろう。日本劇作家協会会員のリストを見ると、意外な多さに驚き、さらに彼らの作品の多くが容易には手に入らないことを知る。大学図書館に行ってジャンルごとに分けられた棚を眺めると「日本戯曲」の棚は狭い。その内現代戯曲は少数であり、世紀末以降となるとさらにその一部しか占めない。
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