連載企画 観客が発見する 第1回

年10本見る人が1000人単位でいてほしい
 新道喜一郎さん

―舞台を作る人たちや、作られた舞台上の出来事だけから演劇を考えるのではなくて、見ている人も含めて演劇を考えてみたい、というのがワンダーランドの隠れコンセプトです。これまで劇評やレビューを書く人は研究者や評論家、演劇関係者が多かった。でもそれはある種、特別な観客でしょう。おそらく新道さんは劇場に通う回数は多いけれども、演劇の専門家との意識はないし自分のキャリアには結びついていないですよね。
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趣向「解体されゆくアントニン・レーモンド建築 旧体育館の話」

◎失われた場所に描く永遠と一瞬
水牛健太郎

「解体されゆくアントニン・レーモンド建築 旧体育館の話」公演チラシ 舞台は平場で、シアタートラムの高い天井、舞台奥の機構も露わにされている。中央に建物の廃墟のような石積みの一部を模したセットがあり、そこに地下への四角い入口がある。その少し奥に木製の椅子が積み上げられ、同じ椅子が一つ、天井からロープで吊り下げられている。上手側手前には傾いた椅子が一つ。セットの周囲には白い砂が敷かれており、椅子はその砂に埋もれていくように見える。教会の鐘の音が鳴り響いて、開演前の注意がアナウンスされた。
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DULL-COLORED POP「夏目漱石とねこ」

◎目の前の相手に直情的表現することが苦手な表現者「漱石」、複雑な心は坊ちゃん時代から
 大和田龍夫

「夏目漱石とねこ」公演チラシ 「谷賢一」演出の演劇をいくつ見たか数えてみた。初めて見たのは2010年のサンモールスタジオでの「国道58号戦線異状ナシ」(再演)の演出以来だった。結構見ていることがわかった。Théâtre des Annales『ヌード・マウス』(2012年1月@赤坂レッドシアター)、『モリー・スウィーニー』(2011年6月@シアタートラム)、第11回公演『くろねこちゃんとベージュねこちゃん』(2012年3月)、第12回公演『完全版・人間失格』(2012年11月)、「俺とあがさと彬と酒と」(2012年12月)、第13回本公演『アクアリウム』(2013年11月)、第14回本公演『音楽劇・河童』、「証明/Proof」(2012年6月)(2014年5月)、Théâtre des Annales vol.2『従軍中の若き哲学者ルートヴィヒ・ウィトゲンシュタイン…(中略)…の事実にまつわる物語』(注)(2013年3月)、「最後の精神分析 フロイトvsルイス」(2013年10月)、Théâtre des Annales vol.3「トーキョート・スラム・エンジェズルズ」(2014年11月)。随分と観てきたものだ。
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