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高橋宏幸のアーカイブ

青年団「ソウル市民 五部作」

◎差別を描くとはどういうことなのか
 高橋宏幸

 平田オリザの代表作の一つ、『ソウル市民』が5部作となって上演された。『ソウル市民』、『ソウル市民1919』、『ソウル市民 昭和望郷編』、『ソウル市民1939 恋愛二重奏』と4作目までが、30年以上にわたる日本が朝鮮を統治した時代を10年ごとに描いている。5作目は、タイトルが『サンパウロ市民』とあるように、戦時期を背景に、サンパウロへと移民した日系人の一家を舞台にしている。

 場所や時代は違っても、基本的にすべての作品に共通するのは、ある日本の一家の何気ない日常生活のなかに潜む、差別意識を浮かび上がらせることである。それが4作目までは朝鮮人であり、5作目は先住民への差別意識となる。
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Port-B「個室都市 京都」

◎環境の演劇
 高橋宏幸

 「環境」という言葉が流行している。エコロジーという言葉などは、そこから派生した代表的なものだろう。実際、最近ではエコ・クリティシズムという言葉も輸入されつつあり、批評や作品を作る際のタームの一つになりそうな雰囲気もある。むろん、環境についての現代的な視野は、なにもいまに始まったことではない。日本では公害問題を発端として、60年代以後の学生運動期に於ける自主ゼミなどが挙げられるように、それは演劇の動向がラディカルに問い直された時期と同時代性がある。そこに、リチャード・シェクナーの「環境演劇」という言葉を挙げてもいい。
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精華小劇場「イキシマ breath island」

◎「どこでもないここ」のリアル
高橋宏幸

「イキシマ」公演チラシその舞台空間は、見ている観客にいびつな感覚を与える。ただでさえ低く作られている天井は、舞台の奥にいくほどさらに低くなり、柱や窓も斜めになるなど、遠近法の焦点は微妙にずらされている。客席に座り舞台を見ているものにとっては、閉塞感をともなう。だが、客席の天井まで低くしているわけではないので、見つめる視線のみがその空間には囲われる。 白い壁の両面にいくつも開けられた、小さな明り取りの窓から差し込む光も同じように、まるである狭い空間を外側から覗き込むような働きをしている。それは客席から見つめる視線と同じように、舞台空間を取り巻く視線となっている。見るもののまなざしは捕われたような圧迫感を受けるのに、見るものの身体だけは取り残される奇妙な感覚が残る。

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「かもめ・・・プレイ」(エンリケ・ディアス演出)

◎作品と現実との距離を融解 『かもめ』を逸脱、ときに深く読み込む
 高橋宏幸(演劇批評)

 チェーホフの『かもめ』が、『ハムレット』を下敷きにして作られていることはよく言われている。『ハムレット』の台詞が引用される行などは直截的で目につくが、他にも母アルカージナとその息子トレープレフが親子の愛情と苛立ちを爆発させるさまは、ハムレットとガートルードの関係を引き移しているといえるし、母を奪い取って王となったクローディアスは、同じように母の愛人である作家トリゴーリンの位置と重なる。もちろん、人物の対比関係を挙げれば他にもまだまだ共通点はある。また、構造として『かもめ』も『ハムレット』のように、劇中劇として舞台の上演が挿入されて、演劇そのものの形式を問題にする。それはメタシアターとして、作品および演劇という形式性を自己言及する視点を、あらかじめ作品に組み込んだ機能を有しているといえるだろう。

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hmp「Rio.」

◎独自の作品形式で「問い」を産出 アヴァンギャルドの保守化を超えて
高橋宏幸(演劇批評)

hmp「Rio.」公演チラシ芸術の表現における「実験」や「アヴァンギャルド」など、作品や傾向に付けられる言葉は、何をもっていえるのか。また、それぞれの時代の様式や形式に対して付けられた名称の基底にあるものとは何か。

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MODE「変身」(カフカ原作)

◎多層的深みを孕むふり幅
高橋宏幸(近畿大学国際人文科学研究所研究員)

「変身」公演チラシ作品がそれのみによって完結されないこととして、たとえばプロセスの重視は、美術ならばプロセスアートやコンセプチュアルアートの一端を占める作品などで知られている。その方法を演劇にあてはめるならば、たとえばリーディングやワーク・イン・プログレスなどを経て、それが公演されるまでの軌跡を公開した作品を指すことになるのだろうか。

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