振り返る 私の2004

■第6回 劇評(レビュー)サイトを始めてみたら   北嶋孝 (「Wonderland」編集人)

感謝、感謝、感謝

このWonderland サイトを始めたのが2004年8月ですから、今年1月末でちょうど半年になります。記事数はすでに210本を超えました。1カ月30-40本の割合ですから、1日1本強というところでしょうか。アクセスも1日数百ページビューに達しています。宣伝しない割りにはそこそこの数字ではないでしょうか。

個人的な事情もあって年末年始はややペースが落ちましたが、それまではほぼ毎日更新することが出来ました。常連執筆者の方々、お疲れさまでした。寄稿していただいた方々には、感謝です。また自分のブログなどwebサイトで書き続けている意見、批評も紹介してきました。数の上ではこちらが多数を占めています。多様な見解を発信しているそれぞれのサイトが、wonderland
の幅の広さを形作っているのではないかと思います。あらためて感謝します。

日々の記事を掲載するのがメーンの編集作業ですが、このサイトはレビューのデータベース機能も果たしたいと欲張りな考えを持っています。左上の検索窓に、劇団、公演、作・演出、俳優などのキーワードを入力してもらうと、独自のレビューや紹介記事が内容(一部)付きで表示されます。リンクをたどれば、書き手のページも読めるし、劇団のwebサイトも見ることが可能です。まだ半年なので効果を実感できませんが、1-2年経てばそれなりに記事と情報が蓄積され、おもしろ味が生まれてくるのではないかと思います。

サイトの3層構造

これまで、レビューは3層の構造で掲載、蓄積されてきました。トップページの左メニューに名前が載っている常連執筆者のレビュー、メニューの先頭に置かれた寄稿、それにweb上で発信するレビュー紹介の3種です。ネットの特性を生かしたレビュー・サイトのあり方を手探りする中でこの形に落ち着きました。最終形態とは思いませんが、Weblogとの連携を考えると、それなりにおもしろいやり方だと実感しています。

まず常連執筆者は私を含めて5人。小劇場のプロデューサーから大学院生まで、編集人の私が頼んでメンバーに入ってもらいました。その意味で編集サイドの「決定」でした。しかしそれぞれが書くレビューは、編集人の手を通っていません。書き手が自分で直接原稿をブラウザ経由でサーバーにアップしています。自己責任?という言い方も可能だし、逆に編集権の放棄という言い方も出来るかもしれません。しかし問題があれば事後的に話し合っても大丈夫という信頼関係を持てたからメンバーにお願いしたと言うことも出来ます。個人的にあまり「編集」権限を振りかざしたくないという感情がないとは言えませんが、まあ、こじんまりとしたメンバー規模だから可能なやり方かもしれません。新聞や雑誌の「編集」とはかなり趣が違うことだけは確かです。これから人数が増えていくとしたら、検討すべき課題になりそうです。

「編集」を経由して掲載するのは「特別寄稿」の枠組みです。読者の投稿や友人知人の伝手で原稿をいただく機会も少なくありません。その際は原稿に眼を通して載せたり、結果的に載せなかったり、それなりの「判断」を迫られます。応募原稿殺到でさばききれないという目に遭ってみたいと思っていますが、現状はまだまだです。

もっとも数の多いのは、ネット上のレビュー紹介ということになります。これは私の個人的な作業になっています。RSSリーダーを活用して主なサイトをチェックしようとしていますが、時間の制約、力量の問題もあって、限られたサイトしか見ていないだろうと思います。おもしろいレビュー、鋭い見方を示す意見を紹介していただけば、すぐに目を通します。声を掛けてください。

緩い枠組みから始める

ここまでは意識的にレビューと書き、劇評ということばを用いませんでした。劇評と書くと、どうも力が入ってしまうという人が少なくないからです。肩が怒って顔が引きつるわけでもないでしょうが、もう少し柔らかに、緩い枠組みで考えていきたいと個人的に考えています。

そうはいっても、劇評を書くとき、公演を紹介するときに心がけたいと思っていることがいくつかあります。第1は、その公演を見なかった人に、どんな舞台だったかが伝わるように書きたい、紹介したいということです。いうまでもありませんが、筋書きをすべて明らかにするということと同義ではありません。筋書きもモチーフも、演出も演技も、照明や舞台美術、会場や観客も視野に入れて書く、ということになるでしょうか。なかなかできないですけどね。

2つ目はその上で、肯定的に評価するにしても批判的な見解を打ち出すにしても、自分なりの発見や視点を、できるだけ根拠を挙げて展開したいと思います。それは同時に、自分の見方、評価の物差しを絶えず吟味し直すことにもつながります。自分の評価であっても(あるいはだからこそ)ある種の距離感を持っていたいということでもあります。自分で実行出来ているかと問われるとつらいものがありますが、方法論を含めて手探りと言うしかありません。

3つ目は、匿名は極力避けたいということです。一般的には匿名の効用と意義は否定しません。それぞれの方針に従ってサイトを運営するので、はたからとやかく言う筋合いの話でもありませんが、wonderlandサイトでは異論反論などへの対処を含め、当事者が責任の所在を明確にする必要があると考えました。常用している筆名まで排除するわけではありません。ただ匿名に隠れて「荒らし」たり「切り捨て」たりするようなやり方に機会を与えたくないと思います。公開掲示板の活用も検討したのですが、そうなると匿名の「荒らし」に遭うリスクは覚悟せざるを得ません。この点で踏ん切りが付きませんでした。

ということもあり、コメントとトラックバックはそれほど厳しい制限をかけていません。乱暴な言葉でコメントを突っ込まれると悲しくなりますが、これもページを公開しているコストなのかもしれません。

ただ、スパムコメントには迷惑しました。アダルトサイトやカジノページから猛烈に攻撃され、年末年始にその種の千本を超える書き込みがありました。いまも断続的に書き込みが続き、削除作業でへとへとです。緊急措置として集中的に狙われた記事のコメント追加書き込みを停止しました。また禁止IPをその都度設定しています。書き込みできない場合はご連絡ください。調べてみます。それにしても、なんとか対策を取らなければいけませんね。

日々の積み重ねを

昨年の夏から11月半ばまではあちこちの劇場に足を運びました。しかし残念ながら時間的にも、財政的にも週4-5本などというペースは続きません。動けば動くほど財布は軽くなるのに足は重くなります。ジレンマですね。というわけで、芝居の世界の流れやその方向についてまだ見通しを得ていません。もう少し猶予をいただきたいと思います。

Wonderlandサイトをこれからどうするか-。なかなか思い通りにはいきませんが、まず中身からいうと、これまで紹介されてこなかった劇団、公演にアプローチしたいと思っています。「言うは易く行うは難し」ですが、心がけたいということでご容赦ください。

また常連執筆メンバーを充実できたらいいなあと思っています。いまのところは片思いの候補者が何人かいます。なんとか了解が得られればいいのですが…。

そのためにも執筆環境を整える必要を痛感しています。ただ現状はボランティア態勢で運営しているので、具体的にどういう措置がとれるか、限られた条件の中で試行錯誤を続けるしかないようです。

同時に、編集機能も強化したいと考えています。執筆陣の充実と編集強化は相反するのではないかとお考えの方も少なくないと思います。そういう面があることを否定しませんが、ネットの特性を生かした仕掛けを検討すれば、道は開けるのではないかと考えています。具体的には、今回の特別企画のように、テーマを決めた特集などが有力候補になるでしょう。また特別寄稿の枠組みをより拡大することも一案です。いまはほぼ引用だけに絞っているページ紹介のやり方に工夫が必要かもしれません。

あとスパム対策を含め、システムとアプリケーションの両面で手を打たなければならないことが山積しています。日々の生活があり、時間と資金の制約もあります。荷が重いかもしれませんが、この辺は自動化出来ない問題が多いので、少しずつ、日々の積み重ねを怠らないようにしたいと思います。

(2005年1月18日)