城山羊の会「効率の優先」

12.発端高橋(坪井暗渠)
 

聞いて欲しい話ほど、小さな声で話すおんな。

のっけから、好きです  城山羊の会。

「やっぱりいいです」…などと もう、ありありと自分に興味を持って欲しいのに、もったいつけて…
『寄せ付け方を知っている。』 という本が一冊書ける程。
技あり! 学びました。
そんな話し方されたら、オフィスの椅子をゴロゴロさせて近寄って来ますよ。 行きますよ。

働くおんなは、それぞれに決め手というか、武器というか、
自分ならではのアイテムを駆使して味方をつけて
泳いでゆくのかな。

味方。 大事なのですね。

最大の味方をつけていたのは、やっぱり部長。  流石でした。
<眉間派女優> 石橋けいが大っ好きな私は、またもや、城山羊の会に参ったわけです。

これは、会社の話だけど、効率の話なんだろうけれど、結局は「おんなの話」なんだろうなぁと思いました。
 

女子力の高い神崎(=真ん中分けで、おでこ丸出しにできるってことは相当自分に自信あり))…は
前述の 聞いて欲しい話を小さい声で話すおんな。

か細くて病的で、いちいちウザイ高橋(=ちょうちんそでとか淡い色を好む少女的だけど髪ボサボサのおんな)が
ランチの後にトイレに行くシーンがあり
職場恋愛の空気感を冒頭から早速に醸し出してくれたのだけれど…
私的にはそーんなに…そそられなかった高橋が…こんなにも職場をかき回すことになるとは…発端高橋?!

「あたしは、これから、ひとりぼっちで どうやって生きてゆくかってことですよね?」って、、
結局は自分のこと???

職場でこんなこと言っちゃうんだ。 心底はぁ~~~~っと思いましたが…
でも、素直でいいな。
だから、みんながかばうんだろうな。

…ということは、結局 高橋も女子力が高いのか?
小さい頃のお父さんとの関係を上司に話して、ものの見事に寄せ付けているし。
それも、新婚の上司。
生理の日まで把握しちゃうような馬鹿まっすぐな上司秋元。

結局高橋は3人の男を振り回していたわけで。。
それも、どう考えてもからだのサイズの合わなそうな熱き篤き大男の添島。
更には、「いのちをかけてがんばります!」と総務から来た佐々木は
高橋の発作を治す術を心得ているし。 …どんだけのおんななのだ高橋は。
佐々木が、か細い高橋を本気で「どつきまわす」のも納得。 おおいに共感。

まっすぐな上司秋元は、神崎からセクハラ相談を受けていて
神崎のこともなんとか守らなければ!と男気を出すし。

このひとは、本当に翻弄されてばかり。
秋元の新婚の嫁の立場にはなりたくないなと

その場に登場しない人物にまで感情移入できるのは、脚本の力なのか役者の力なのか
たぶん両方。こういう醍醐味が好きです。
その場にいない人間像が浮き彫りになる感覚。
あと、暗転になって涙が出ちゃう感覚も。

もう、いろいろグルグルとメンドクサイことが絡まりすぎて、まぁとどのつまりは
言った言わない騒ぎが連なってって
とうとう死人が出て。
会社の話だと思って観てたら、殺人事件!いや、事故?!
 

プライベートなことも話していいと言ったのに、
離婚のことや、これから養育費がかかることを話したら
会社に個人的なことは持ち込まないで…とか、

部長…わけわかんないんですけど…

結局、部長が命令したから口を押さえて窒息させちゃった岡部たかしさん演じるところの田ノ浦さんは、
いちいち、田ノ浦さんのせいにされちゃう。
神崎は、いちいち部長に小さい声で言いつけるし。
先の尖り過ぎてる茶色い革靴が 哀愁をそそりました。
<狼狽させたら日本一>岡部さん 大好きです。
 

結局、もう、誰も仕事をしてないんじゃないか?、、もしかして、ずっと、
ずっと、この会社の人たちは。。…と疑問を持ち始めた頃に
部長がビシッとしてくれる。 気だるく 一人ずつ 大事なことは何なのかを問い質すくだり。

高橋のメンドクサイ土下座とか、どうでもいいよな わけのわからない受け答えに
もう、台詞すら言わない部長。

眉間ピクリだけ。

すご過ぎ。 大正解過ぎて痛快。

専務との電話の声色が、あまりにも可愛らしくて…もしや?と思ったら
清清しい程の予定調和で、本当に腑に落ちた結末でした。
 

専務の岩谷健司さんは、ますます貫禄が着いて、まさに、専務 適役でした。
社内報、今回の公演の付録に付けて欲しかったです。

専務が、お母さんを看取ったことが、事件を解決の方向へ導く(…かのように思われた)) 下りは
本当に圧巻で!
「お袋も こうだったから」と
発狂したのか…それともわざとなのか…の神崎をおぶって会議室に行く場面で
唐突に、目頭が熱くなりました。

思いがけず訪れた涙の瞬間でした。
 
 

客席がコの字に配されており
私は上手サイドだったので、まさに、オフィスの中にいるような臨場感。

ピンポイントで良かったシーンを言うならば
神崎が不倫相手の小松課長に二人目の赤ちゃんができたと聞かされた時、
私は部長の真後ろの席だったので、部長の背中と声しか聞けず…
全ては神崎の表情の変化のみ。

その贅沢なことといったらありません。

美しいおでこ・ぱっちりとした瞳がみるみる歪む光景。

きっと部長は、職場の人間関係・恋愛関係・じぶんのこと嫌ってる…とか
すべてのことを知っていたから、冷静に、冷静に 相手を攻め落とす技を使った。
すべてを予測して、淡々と言葉を放つ冷酷さ。

おんな同士なのに、容赦ないのはなぜ?

「近親憎悪」なのかな…とふと、思いました。 またもや深読み?

部長もきっと神崎くらいの時に同じような思いをして…。
神崎も女子力高いから、敏感に部長のそんな「おんなの部分」を察知して嫌いなのかなぁとか。。
 

結局、効率よく仕事がしたいから
今が、大事な時だから… 会社にとって大事な時だから、事件が明るみにでるのはまずい…

どう考えてもバレるだろうことなのに、
専務と『同じ思いでいた』ことに号泣する部長が可愛らしくて、、ほんとうに可愛らしくて…
怒涛のような、
もう、ど~でもいいや感が漂う結末へ雪崩れ込む爽快感は一体なんでしょう。

わかり合えるって本当に素敵なことですね。。(嫌味ではないですよ))

職場でこんなこと言っちゃいけない。 やっちゃいけない。 ありそうでなさそうで…
やっぱりあるんだ~と確信が持てたような「有難い時間」を目の当たりにして
そうか、この舞台は 私にとっては『憧れ』だったのだ…という自分なりの結末。

何故?「憧れ」なのか…
何故?自分は高橋に執心してしまったのか…ウザイとまで思って観ていたのに。。

ハタと気づいたわたしは驚愕しました。
それこそ、『近親憎悪』

高橋の行動にイライラして ムカムカしていたのは
その行動の中に、
自分自身の思いあたる節をいちいち見つけてしまっていたからだったのです。

自分のせいと言いながら 土下座などしながら 死んでお詫びをとか言いながらも、
結局は「あたし」のことしか考えていないんですわたしは。いつも。

何人もの男を翻弄し、死人まで出して…
でも、ついには一緒にお題目を唱える男性が「傍」にいてくれている高橋。

その会議室の光景を思い浮かべ、、馬鹿馬鹿しい、もうっありえないと斜めに笑いつつ
…うらやましいじゃん。

ひとりぼっちじゃないじゃん

まっすぐなその男性=秋元は、
これから「本当の優しさ」について教えてくれると言っておでこにキスをしてくれましたね。
高橋さん よかったじゃん。
 

わたしはひとり
勝手に脳内で
こちらを苛立たせるおんなの中に思いあたる節を見つけ
地団駄を踏んでイライラしていたのでした。
 

(2013年6月7日19:30の回 観劇)

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