金森穣Noism04 「black ice」

 金森穣のNoism04 「black ice」公演はさまざまな波紋を生じているようです。追記として 「中西理の大阪日記」と、舞踊批評家の志賀信夫さんが書いた「動くからだと見るからだ」の紹介を付け加えました。ここでは多数 … “金森穣Noism04 「black ice」” の続きを読む

 金森穣のNoism04 「black ice」公演はさまざまな波紋を生じているようです。追記として 「中西理の大阪日記」と、舞踊批評家の志賀信夫さんが書いた「動くからだと見るからだ」の紹介を付け加えました。ここでは多数の貴重な写真が記載されています。(12/17)

 ダンサーとして振付家としてめざましい活躍を見せる金森穣が今年4月、りゅーとぴあ新潟市民芸術会館舞踊部門の芸術監督に就任。新潟レジデンスのプロフェッショナル・ダンス・カンパニーNoism04を率いて10月から全国公演を始めました。新潟、大津、山口、宮崎、高知、岐阜を経て12月10日から3日間、新国立劇場中劇場で東京公演を開きました。このステージについて「What Dance Says to Me (稲倉 達の書庫)」サイトが「芸術監督に拍手、振付家には小言」というタイトルの文章を掲載しています。


 「芸術監督としての務めは立派に果たしたと思う。偉い。でも、振付家としては一歩後退ではないかという気もするのだ。そこで今回は、金森に期待する者の一人として、あえて残念な点をぶつぶつと書くことにする。一言で言えば、作品作りにおいて保守化したと思う--失敗は許されないというプレッシャーは相当なものだっただろうと察しもするのだが」
 こう前置きして、「温かい辛口」というか「期待の高さゆえの苦言」を縷々述べています。しかし舞台活動も続けているだけに、みるべきところも外していません。第2部「black ice」はかなり違った印象だったようです。
 「第2部『black ice』だけ見ると出来がよい。振付も夾雑物が少なく、5人(ラストは金森が加わって6人)のダンサーがスピーディーでスリリングな展開をみせ、カンパニーのレベルの高さを印象づけたパートだった。また、高嶺格の舞台美術の仕掛けも新鮮だ」

 ダンスなどのステージを鋭い視点からリポートしてきた「dm_on_web」サイトも、第2部を取り上げ、高く評価しています。
 「『black ice』の第二部によって、振付家・金森穣に対する認識を完全に改めた。はっきりいってこれは凄い。振りの密度、語彙の多様さにものけぞるが、何より動きのヴォリューム、線の力強さが並大抵ではない。低い姿勢で床についた腕を梃子にして体全体を真横へ一気にスライド、などといった無理な動きも実にショッキングだ」

 Noism04:「black ice」はこのあと、長野公演(12月18日、まつもと市民芸術館)を残すだけ。駆けつける人もいるのではないでしょうか。

追記(12/16)
中西理の大阪日記」がびわ湖ホール公演をみて短い感想を掲載しています。その中で金森のダンサーとしての技量、振り付け・演出などを評価しながら、「国内育ちの振付家と比べるとヨーロッパのダンスコンテンポラリーヌの影響が生のまま出てきている。そこにはいっさい日本人としての身体性もないし、欧米のダンスの枠組みに疑問を抱いてない感じがありあり」と指摘。しかし「この人は欧州を中心に大舞台を踏んできたせいか、大空間における空間演出の力は若手の振付家のなかでも抜きん出たものを持っており、今日の舞台でもそうした長所は十分に発揮された」と述べています。また「もうひとつの注目は高嶺格の映像・舞台美術だったのだが、こちらの方は面白かった」と褒めています。

 舞踊批評家の志賀信夫さんは「動くからだと見るからだ」というタイトルのレビューをTokyo Dance Square のWebサイトに掲載しています。2ページ28枚の写真構成なので、ステージの様子が浮かんできます。その末尾に次のように書いています。  

 「W・フォーサイスは女性ダンサーを東京文化会館で全裸で踊らせた。中村恩恵はイリ・キリヤンの舞台で、服を脱ぎ捨てて全裸で去っていった。しかし振付家自身が最後にすべてを脱ぎ捨てていくという行為は、さらに本質的な問いかけといえるだろう。(中略)揺らぎ、混沌自体をすべて舞台に出して、自己に戻るという金森の自己同一化はこの作品の原動力だ。それは生きるすべての人間の持つ混沌、苦悩につながる本質的な問いかけといえるだろう。
 『SHIKAKU』で白い世界、迷路とそれを崩し、構成された世界を作った金森は、今回コントラストとなる黒い世界、暗黒、闇を描き、そのなかで踊る自己と世界の混沌を対峙させた。ノマド、つまりさまよえる民としての金森は、次はどこにさまよって行くのだろうか」。

投稿者: 北嶋孝

ワンダーランド代表

「金森穣Noism04 「black ice」」への1件のフィードバック

  1. 金森嬢とってもよかった。見応えのある三部構成。一部の比較的自由な展開から、二部の完成度の高い構成された踊り、三部の混沌とそれを脱ぎ捨てた金森のソロ、そしてその踊り自体を脱ぎ捨てる裸身。凄いと思う。
    このサイトに評を書かせてもらいました。
    http://www.ne.jp/asahi/tokyo.dance/square/whatnewnew.html

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