シベリア少女鉄道「ここでキスして。」

 みてすぐ、快い刺激が残っているうちにレビューを書き上げるのもいいのですが、じっくり寝かせて展開するのもまたアリでしょう。近畿と首都圏を行き来しながら幅広く芝居やダンスをみている「中西理の大阪日記」が1カ月あまり経って、 … “シベリア少女鉄道「ここでキスして。」” の続きを読む

 みてすぐ、快い刺激が残っているうちにレビューを書き上げるのもいいのですが、じっくり寝かせて展開するのもまたアリでしょう。近畿と首都圏を行き来しながら幅広く芝居やダンスをみている「中西理の大阪日記」が1カ月あまり経って、シベリア少女鉄道「ここでキスして。」公演(東京・紀伊国屋サザンシアター、3月1日-5日)の評をまとめています。
 中西さんはシベリア少女鉄道の特徴についてまず、次のように要約しています。

シベリア少女鉄道の世界がほかの演劇とは大きく異なるのは「演劇」が彼らにとってはある仕掛けを実現するための前提でしかないことである。彼らの演劇を「メタ演劇」と呼ぶ人もいるが、メタ演劇とは「演劇についての演劇」*1であって、そこでは一度そこで上演されている「演劇」から外にでて、その位置からもう一度「上演」を見直すという共通点はあるけれど、シベリア少女鉄道の場合はそのメタレベルでの立ち位置がそれをなんと呼ぶにせよ、明らかに演劇ではないものであるため、そこには大きな違いがある。

 しかし今回の公演は「前言を翻すことになりそうだが、メタ演劇に近い、あるいはメタ演劇だということがいえるかもしれない。(中略)あえてそれに名前をつけるとすれば『メタ・シチュエーションコメディ』であったからだ」としています。

 芝居の前半は旅館を舞台にして、代議士が息子を呼んで政略結婚を迫るのですが、息子は仲居と恋仲で、それを女将や板前らが助けているうちに状況が悪化していくという設定です。にっちもさっちもいかなくなると、その場面が照明の赤枠で囲まれ、警戒音が鳴り響きます。つまりここから「危機回避のレスキューゲームに入り込む」というのが中西さんの指摘です。

このメタレベルとオブジェクトレベルでの物語の同時進行が今回の主題で、この特殊な形式で土屋はアクロバティックなつなわたりを見せていく。危険回避に対する方法論の違いはあっても、シチュエーションコメディとレスキュー系ゲームは同じ構造を持つと気がついたのが土屋の慧眼で、これを「メタ・シチュエーションコメディ」と冒頭で書いたのは実はそういう意味があった。(略)
 つまり、ここで土屋はシチュエーションコメディ(演劇)に見えるゲーム(危機回避ゲーム)に見せる演劇を舞台上で展開するというかなりややこやしいことをやってるわけだ。

 シベリア少女鉄道は7月に東京・吉祥寺シアターで次回公演を予定。夏には大阪公演もあるそうです。
 「中西理の大阪日記」のこのページには、ポツドール「夢の城」のレビューも載っています。これはポツドールの項に追加することにします。

[上演記録]
シベリア少女鉄道「ここでキスして。」
紀伊國屋サザンシアター、3月1日-5日

作・演出 土屋亮一
出演 前畑陽平 藤原幹雄 横溝茂雄 吉田友則 篠塚茜 出来恵美 内田慈
スタッフ
舞台監督/谷澤拓巳+至福団
音響/中村嘉宏(atSound)
照明/伊藤孝(ART CORE design)
映像/冨田中理(Selfimage Produkts)
小道具/畠山直子
宣伝美術/土屋亮一 thanks Norimichi Tomita
制作助手/安元千恵
制作/保坂綾子
製作/高田雅士
企画製作/シベリア少女鉄道
主催/ニッポン放送

投稿者: 北嶋孝

ワンダーランド代表

「シベリア少女鉄道「ここでキスして。」」への1件のフィードバック

  1. シベリア少女鉄道「残酷な神が支配する」観劇記

    シベリア少女鉄道公式HP
    作・演出さん日記より抜粋

    「照明・音響・装置などが全て合わさった形でははじめて観た「その状況」に役者・スタッフ一同、腹を抱えて爆笑しました。なんというか、こうやって自分たち…

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