連載「芸術創造環境はいま-小劇場の現場から」第11回

 田辺剛さん(劇作家・演出家・「アトリエ劇研」ディレクター)
◎京都は母港。試行錯誤が許される場所

 今回訪ねたのは、京都下鴨のアトリエ劇研です。学生の多い京都で、1984年からずっと若い演劇人の活動拠点となってきました。東京や大阪といった大都市からちょっと離れているという地理的条件、街の大きさ、行政との歴史的な関係、アトリエ劇研の使命など、この春から京都市民となったワンダーランド編集長が、アトリエ劇研ディレクターの田辺剛さんに、京都ならではのお話を伺いました。(編集部)

||| 個人の自宅を改造して始まった

-では、まず劇研の歴史からお伺いします。いつごろから劇研の活動は始まったんでしょうか?

田辺剛さん
田辺剛さん

田辺 開館は1984年です。アートスペース無門館という名前でスタートしました。もともとここは、現在NPO劇研の理事長をしている波多野(茂彌)の自宅を改造してできたものです。波多野は大学で教鞭を取っていたのですが。今の事務所部分は民家でした。昔から演劇もやっていたらしいのですが、要は民家を改造してアートスペース無門館というのを作ったのです。個人の持ち物ですね。当時は、もう亡くなられましたが遠藤寿美子さんという女性のプロデューサーがいました。遠藤さんは精力的な方で、大学の演劇などにも関心を持たれ、ダムタイプやマキノノゾミさんや、松田(正隆)さん、鈴江(俊郎)さんなどを見つけて活動を支援したりしていたんです。遠藤さんは京都市の芸術祭・演劇祭などに絡むようになって、まだ20代の鈴江さんの脚本『らくだのコブには水が入ってるんだぞ』を、宮田慶子さんの演出で上演したりしていました。その遠藤さんがずっとここを回していました。
 1984年に開館して、1996年にアートスペース無門館としての活動にはいったん区切りをつけて、アトリエ劇研と名称を変えて再びスタートしました。

-無門館から劇研に変わるときには、何か性格の変化があったんですか?

田辺 遠藤さんが退かれたということですね。あとは、民家部分を取り壊して改築したということもありました。現在までに2回改築していますけど、その1回目の改築ですね。

-建物は波多野さんの持ち物ということですが、NPO法人ということで、公的資金、補助金なども含めて運営されているんですか?

田辺 もともとこのNPO法人はアトリエ劇研を運営するために設立されたのですが、その後いろいろな事業を広げていくことになりました。例えば今年でいうと、国民文化祭が京都で行われるのですが、その国民文化祭の事業を行うとか。京都市内の廃校になった小学校の跡地活用に関わったり、京都市が設置した公共の施設の指定管理を今年度の4月から受けています。そのように、もともとは劇場運営から始まったのですが、劇場とは直接関係のない事業も広げてやっています。

-拠点としては、アトリエ劇研とアトリエ劇研アネックスのふたつですか?

田辺 そうですね。アネックスというのはビルの1フロアーを借りていて、12畳と10畳の和室、キッチン、シャワー、トイレがあります。

-それは稽古場ですか?

田辺 稽古場としても使いますが、宿泊施設としても使っています。よそから来られたときの宿泊施設ですね。一通りの設備があり、劇研からも近くて徒歩1分、大通りを渡ればすぐなので。

-公演を行うことはないんですね。

田辺 そうですね。公演を行う場所として私たちが管理運営しているのは劇研だけです。

||| アトリエ劇研の活動と運営

-なるほど。独自の事業を行われるということですが、公演としては、貸し小屋としての部分と自主企画との割合はどのくらいですか?

田辺 ホール自体の運営としては貸し館が主です。NPOの事業と劇場の事業との区別はあいまいで、厳密に言うと全部NPO法人の事業なのですが、劇場としてやっている事業として、アクターズラボという俳優養成のプログラムを継続的にやっています。また、50歳以上のシニア劇団も運営しています。仕事をリタイヤされた方や、子育ての終わった方を対象に演劇セミナーをしています。あとは、2年に一度演劇祭。今年3月まで劇研の前の駐輪場で野菜市もやってました。
 また、ここを拠点に創作し発表して育っていってほしいという趣旨で、演劇とダンスと1団体ずつフランチャイズカンパニーというのがあります。演劇は私が主宰する下鴨車窓、ダンスはschatzkammer(シャッツカマー)というカンパニーです。年に少なくとも1本上演するという取り決めです。

-財政的にはどうなっていますか?

田辺 私個人はNPOの職員で劇場の責任者ですが、NPO全体については、詳しい数字は即答できませんが、回っているとは聞いています。劇場については即答できます(笑)。なんとか回っています。

-東京でいろんな劇場を取材していても、なかなか運営は大変のようですね。

田辺 そうですね。基本的に貸し館をしないと難しいのが現状です。うちは2回目の改築をして、その費用を返済しているのでそれが大きいですね。それがなければもうちょっと潤沢に回るのですが。

-理事長の波多野さんの演劇に賭ける志があればこそということですね?

田辺 そうですね、それがなければどうにもならないと思いますね。

-年間の公演数は?

田辺 月平均で4週末のうち3週末は埋まっていますから、公演数では年に30~36公演くらいはやっていると思います。空いた日は、さっき言ったアクターズラボなんかのワークショップの授業を入れているので、ワークショップなんかでも使うことを考えると、稼働率では9割以上はあります。

-平日の公演のないところはアクターズラボが入るということですね?

田辺 そうです。アクターズラボやシニア劇団が入ります。シニア劇団は昼にしかやりませんから。夜はみなさん、ご家族の食事を作らなくては、とかいろいろあるようなので。それでシニア劇団やアクターズラボは、月・火・水に集中して組んであって、演劇公演は木曜日から日曜日を使い、週末に興行するというのが一般的です。

-東京では、最近、月曜日あたりまで公演するのが定番の手法になりつつあ
るようですが、京都ではそういうのはないんですか?

田辺 珍しくはありませんが、日曜日の昼が最後のステージというのがまだ一般的みたいです。舞台の関係者には月曜日まで公演してくれる方が喜ばれますけど。月曜昼とか月曜夜までやっている方が演劇をやっている人には見に行きやすかったりしますから。

-なるほど。キャパは、いっぱい入ると100席くらいですか?

田辺 100は難しいですね。最前列をベンチシートで座布団にして詰めても80
人くらい。100人入れたこともありますし、年に1回か2回はそういうことも
あるのですが、ちょっと大変なことになって、100人入れるならちょっと考え
ようよ、という感じですねえ。

-100入れるならワンステージ増やしてねってことですね。

田辺 そうですね。まあ、ワンステージ増やせないからそうなるってこともあるんでしょうけど。
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