連載「芸術創造環境はいま-小劇場の現場から」最終回(第14回)

||| 中高生に小劇場での上演体験を

-王子小劇場は、都内の劇場としてとてもユニークな存在という印象があります。こちらは貸し館と自主事業、どんな配分でやっておられますか。

玉山悟さん玉山 うちは自主事業はほとんどなくて、ほぼ貸し館オンリーです。

-少ないと言われる自主事業には、どのようなものがあるんでしょうか。

玉山 ごく稀に劇場プロデュース公演というのがあります。あとは落語会ですね。また、夏にやる、中高生が1週間で作る演劇というのもやっています。お芝居を1本作って300人、400人のお客さんを呼んでというのは、ほんとに何年かに1度ですね。

-中高生と演劇を作るプログラムっていうのは。

玉山 去年から始めたプログラムです。自主企画として、若い層や地域にコミットするものが、劇場のアウトリーチとして年に1回くらいはあってもいいんじゃないかということで、やり始めました。応募資格は北区在住・在学の中高校生です。他の区の高校生からも出たいんですけどって問い合わせがあるんですが、北区限定で。

-中屋敷法仁さんが指導されてたものですか。

玉山 そうです、去年も今年も中屋敷です。はじめて出会う中高生15人と一緒に1週間でお芝居を作るなんて、かなり大変ですよね。中屋敷君はスーパーマンです。来年も彼でやります。劇場の日程と中屋敷君のスケジュールは押さえてあります。

-中屋敷さんの柿喰う客も、ここから巣立った劇団ですか。

玉山 以前、わりと長い間うちを根城にしていたんじゃないでしょうか。最近は劇団の規模が大きくなったので、なかなかですけど。来年の演劇祭にも「3、4週間で出ない?」って言ったんですけど、ちょっとスケジュールが難しいようで。

-劇団も大きくなって、中屋敷さんもすごく忙しくなって。

玉山 そうですね。いやもう私には、15年後、20年後、中屋敷君が東京芸術劇場の芸術監督をやってる絵が浮かぶんだけど(笑)。そうじゃありませんか? 野田さんの次の次くらいは中屋敷君じゃないのかな?

-そうですね。同じ世代でも抜きん出てる感がありますね。

玉山 中屋敷君の指導で、毎年十何人か参加して、最初の年は初めてで力み過ぎていて、稽古1週間で6ステージくらいやったんです。稽古が月曜日から日曜日まで、翌週の月・火が劇場で稽古、水曜日初日で日曜日まで本番。夜9時に芝居がはねて、中高生が「じゃあ明日何時入りでーす」って帰って行くんですから(笑)。こんなに大掛かりにやらなくてもよかったよねってことになってね。今年は中屋敷君のスケジュールの関係もあったんですけど、稽古4日で2ステージやりました。
 これは劇場で発表するっていうのが特別なんですね。高校の演劇部って、学校の体育館か、そうでなければ300人規模のホールでやるんでしょうけど、うちみたいなところでやったことはないと思うので、たぶんスペシャルな体験になるんじゃないかって。中屋敷君がいい演技のコツを参加者に教えてくれるし、面白いんじゃないのって思ってます。
 お客さんは、同級生の子とか親御さんとか、そういう取り組みを見たいっていう演劇通の人とかですね。

||| 貸し出しには審査が

-貸し館としての料金は、経費から逆算して、ギリギリのラインに持っていけるところで決まってるんですか。

玉山 そうですね。100%稼働すれば、トントンですかね。税金を考えなければ。

-11月はほとんど埋まってるようでしたが、今年の稼働率はどうでしたか。

玉山 あんまりよくないですね。70%ぐらいでしょうか、まだちゃんと集計してないんですけど。

-それは震災の影響でしょうか。

玉山 いいえ、関係ないと思います。劇場って半年前に押さえるんですね。だから震災とは関係なくて、去年の11月、12月あたりに劇団さんといい出会いがなかったということでしょうか。

-貸し出しは、希望のあったところに対して審査なさると聞きました。

玉山 はい、早い者勝ちではなく、企画書や過去の作品を見せてもらって、ごめんなさい、貸せませんと言うこともあります。
 
-OKが出る割合はどのくらいでしょうか。

玉山 8割-9割くらいかなあ。ユルいんです。そんなにお断りしてはいないと思います。

-審査をすると決められたのは、一定以上のレベルを求めるということですか。

玉山 そうですね。王子小劇場の最低線をクリアしていないところには貸さないことにしようということになりました。そういう形にしてから、もう5、6年になるかな。

-それはクオリティの問題ですか。テイストの問題ですか。

玉山 クオリティです。テイストの面で自分が好きでなくても、レベルをクリアしていればOKです。
 この貸し出し審査制度に移行するときも、さっき言った合議制で決めたんですが、この時には私が強硬に反対しましたね。劇場をオープンした当初、プログラムがスカスカだった時期が長かったので、お客さんを選ぶなんて怖い、怖いって反対しました。

-それでも決まっちゃったんですか。

玉山 それは合議ですから。ブランディングしないともう生き残っていけないんじゃないかということでしたね。

-そのことで、王子小劇場の色みたいなものは変わったんでしょうか。

玉山 それは変わっていないと思います。口うるさく言わないからやりたいことやんなさい、と。でも利用している劇団さんの方が、ビビったというか、気合が入ったというか、そういうことはあるでしょうね。振り返ると、いい結果が出ていると思いますよ。

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