うずめ劇場「ねずみ狩り」

 「福岡演劇の今」(薙野信喜)に、「最初の男女ふたりによるねずみ狩り、そしてラストの男女ふたりがねずみとして狩られる、そこはおもしろいのに、そのあいだに長々と続けられるゲーム―男女が身につけたものを捨てていく―が決まった結末に向かって一直線で、単調でつまらない。〈略〉演出も俳優も結末を当然と受け止め、〈略〉スケジュールどおりに破綻なく進めることしか考えていないためだ」という言葉をみつけた。東京シアターXのラクを見た私もまったく同じことを思った。

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楽天舞隊「三人三色」

  たいていの俳優はただ与えられた役に力を尽くすだけ。表現の肝心かなめは作・演出におまかせで、そもそも表現したいことなんてまるで内部にないのじゃない? ずっと私は疑っていたのだが、それがそうではないと判って、嬉しかった。石垣まさき(第一話)、大田良(第二話)、中澤昌弘(第三話)、それぞれが原作を担当した楽天舞隊の「三人三色」である。原作を書いた俳優はむろん、それぞれの主役を演じる。俳優がただ演技が上手か下手かだけでなく、その人のものの見方、感じ方が見えて、いい。

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遊牧管理人「ヒマワリ-鰐を飼う人」

 作・演出の広瀬格。力のある人だと思った。なぜかひとの心の中がわかってしまう、と思っていたら、その「ひと」はぜんぶ自分だった!――なんて、複雑骨折気味の人間にはひょっとして私のこと??? ドキッとするようなテーマ。それを、心中を吐露したり台詞で説明するなんて下手なこと一切なし、劇の展開で伝えていく作といい、缶蹴り、鬼ごっこ、もぐら叩き、家族ごっこに兄妹ごっこ……それも俳優の役割をどんどん交替させてお父さんが次から次へと出てきたりお兄さんが次々と出てきたり、テンポよく繰り出す遊びで客をほどよく混乱させたり笑わせたりしながら見せていく演出といい、なまなかの凡手ではない。

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演劇実践集団デスペラーズ「或る告白」

 あとから言えばまったく思い込みだったのだけど、デスペラーズという劇団名から何となくお笑いかな?と思って私は客席にいた。ところが全くの見当違い。まずプロローグ。敗戦直前にB29からパラシュートで降下してきた米兵を日本国民の総意の代行と信じて殺した元日本兵浅倉(吉田智則)が主人公。それが進駐してきたアメリカ軍によっていま捜査中、逮捕されれば戦争犯罪人として処刑は確実。それを、アメリカ生まれ?!の元戦友の友情によって偽名の身分証をもらい、行方をくらますことになる……と始まっていく。アメリカは広島、長崎に原爆落としたと米兵殺しの正当性を言う浅倉に、オッ、イラクの今と比べて敗戦後の日本人はどうしてあんなに簡単にアメリカにナツイテしまったのだろうとかねがね疑問に思っていた私としては、これは硬派。憎んだアメリカと友情受けたアメリカと、引き裂かれた日本人の私たちはさてどうするかの芝居だな、と身を引き締めた。日本演劇史上かつてなかった問題意識であり、真摯なテーマではないか!!

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チェルフィッチェ「ポスト*労苦の終わり」

あたし的にわァ、めっちゃ面白かった。っていうかあ、こんなのありなんだあ!ってびっくりしたっていうかあ、なるほどなって感心したっていうかあ。しばらく見てて舞台で何しようとしてるか、あたし的にィ、もちろん作・演が何狙ってたんだかなんて、岡田利規さんにチョク聞いてェだけどオ、聞いてもそんなん、口で言えるようなら舞台創らんと言われるに決まってるしィ、決まってないかも知れないけどそういうものじゃない?ってとこあるしィ、だからアあたし的にだけどオ、解ったと思ってからはア、同じこと同じように繰り返しィ話されるとオ、話す人は同じじゃなくて変わったりするんだけどオ、そいでもあんまり同じこと何度も話すとオ、もち、意図的にやってるんだから笑っちゃうんだけどオ、笑っちゃいながらちょっと眠くなったっていうかあ、意識が遠のくってこともあったりしてェ、そっと見まわしてア結構目ェつぶってる人、あたしだけじゃないじゃんなんて、ほっとしなかったと言うとオ嘘になるけどオー、でもやっぱ行ってよかったっていうかあ、見とくべきだったー、見なかったらぜーんぜん損しちゃったんじゃないかなーって、そーんな気持ちみたい、なあんて言ったりして――。

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芸術創造館プロデュース「背くらべ」

奥に二段ベッド。舞台ばなに玄関によくみかける帽子やコートをかけるスタンド。やがてひとりの女性が、ネグリジェというかパジャマというか寝姿で出てきて、ぼんやりスタンドのもとに座り込む。と、奥で人の気配。女性は急いでベッドの上段にもぐりこんで寝たふり。男性が入ってきて少し歩きまわってからベッドに背をもたせ、煙草に火をつけようとする……とたんに煙草は止めて! 私はてっきり深夜に帰った夫と待ちかねた妻と思い込んで二人の諍いを見ていった。が、かなり経ってから男性が女性のことをお姉ちゃんと呼び出すので、えッ!

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HUSTLE MANIA「青青青!!!」 

  あんまりスポーツのこと知らない私が言うことだからアテにはならないが、ラグビーはいちばん垢抜けしない、男臭いスポーツのように思われるのだが、どうだろう。飾り気がないといえば飾り気ないから好感度が低いわけではないが、憧れからほど遠いのは確かである。お世辞にも素敵なデザインとは言えないその横縞の汗っぽいユニホームは、アメリカン・フットボールや野球のそれとちがって太ももの筋肉から下腹の脂肪まですっかり剥き出し。サッカーのユニホームも似たようなものだけれど、泥んこの量が圧倒的にちがう。スマートに走り回るサッカー選手とちがって、ボール抱えて転げたり体こごめて尻をつきだし揉みあったりするからにちがいない。第一ラグビーには、メジャ-リーグだのアジア・カップだのといった陽など全く当らない。渋谷・F・真和作、瀧澤☆孝則演出の「青青青!!!」はそういうラグビーだった、じゃない芝居だった。

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プリンアラモード鯖「DOCK’N DOCK’N」 

  「僕はフリーターです。夜間のアルバイトをして暮らしているフリーターです」――開演前のちょっとした時間に読んだ作・演出細川貴史の「鯖のたわごと」は、こんな書き出しから始まっていた。それは、バイト帰りにコンビニの前でタバコを吸っていたら、ホームレスのおっちゃんから声をかけられたときのこと。たとえそれが知人でも心の準備がなかったら「しどろもどろのこんにゃく」になってしまうという細川は「その場にフリーズ」。タバコ1本やっと渡すと一目散に逃げ出したというのだ。東京なんか出てくるんじゃなかった。これから用のないところに絶対立ち止まらないぞ。人生を投げたりしないぞ……と「あらゆる後悔をしながら」。

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鳳劇団「昭和元禄桃尻娘」

  タイトル見たとき思わずカナンワーと首をすくめた。電車の中でおっちゃんたちがよく読んでるスポーツ新聞、そのピンク見出しと同じセンスだからだ。実際、鳳劇団の一本柱かぢゅよと康実紗(劇団アランサムセ)のピチピチ娘、二人だけの1時間半。たとえば踊りに股を開いて♪モッコリ、モッコリ」 両手をハスに上下する手振りがあったり、たとえば○○タマとあけすけな単語が飛び出したり。女優さんたちよう演るわ、よう演らせるわとカンシンする個所も少なくない。游劇社から今回の鳳劇団旗揚げへ。鳳いく太は、怒れる息子世代から現実受け入れのオジン世代へ確実に変貌した、と私は感じた。成長、ではない。受け入れざるをえないから受け入れたのだ。

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