◎ ひとりの人間を見続ける
林あまり
嬉しいほど暗い。ひとりの人間を見続ける、その行為を堪能した。
鵺的「幻戲」(作・演出 高木登)を観てから、ひと月近く経つというのに、幾度もあの、濃密な空間を思い出す。様々な場面、セリフがよみがえっては、(あれはどういう意味なんだろう)と考え込む。
性の芝居、なのだろうか。確かに、舞台は売春宿だし、登場人物がたびたび話題にするのはセックスだ。しかしどうもそれだけではないらしい。
“鵺的「幻戯[改訂版]」” の続きを読む
小劇場レビューマガジン
歌人
◎ ひとりの人間を見続ける
林あまり
嬉しいほど暗い。ひとりの人間を見続ける、その行為を堪能した。
鵺的「幻戲」(作・演出 高木登)を観てから、ひと月近く経つというのに、幾度もあの、濃密な空間を思い出す。様々な場面、セリフがよみがえっては、(あれはどういう意味なんだろう)と考え込む。
性の芝居、なのだろうか。確かに、舞台は売春宿だし、登場人物がたびたび話題にするのはセックスだ。しかしどうもそれだけではないらしい。
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◎一流の観客、三流の観客
林あまり
芝居は半分、いやもしかしたら半分以上、観客がつくるものかもしれない。劇団オルケーニ「ショックヘッド・ピーター」を観て、ハッとした。眠っていた頭を殴られたみたいな気分だ。
子どもの指がハサミで切られ、ぴょんぴょんとハネては床に落ちる。―恐ろしいシーンのたび、私はそっと隣の席の男の子(小学一年くらい?)の様子をうかがっていた。こんなコワイの見て、大丈夫かな…と。思わずにいられなかったから。
“劇団オルケーニ「ショックヘッド・ピーター」” の続きを読む
◎耳の不思議に目覚めて
林あまり
耳の魅力に、改めて気づかされた。
耳って、不思議。そして素敵。聴覚はもちろん、そこにある、モノとしての耳もまた、捨てがたい。そんなことを思いながら、ディープな時間を堪能した。
FUKAIPRODUCE羽衣「耳のトンネル」には、まさに耳そのもののようなカーブを描いた入口が、上手にドーンと据えられている。
いっぽう下手には、ベッドがひとつ。
アゴラ劇場上手の上のほう、照明機材などのある細い通路に、パッとスポットが当たると、ロングヘアをわざとらしくなびかせたドレス姿の女(西田夏奈子)がいる。セレブなディーバ、歌姫路線を狙ったものの残念な感じ、というような。もうこの時点で、客席の私はワクワクしてくる。
“FUKAIPRODUCE羽衣「耳のトンネル」” の続きを読む