◎貧困と退廃の牧歌
片山幹生

宣伝美術:早田二郎
都会の吹きだまりのようなスラムは、パステル調の色彩に塗り分けられた美術によってファンタジックに彩られている。戌井昭人は貧困の情景をある種の甘美なメルヘンとして提示し、そこに自堕落な生活がもたらす安逸を表現した。しかしその甘美さには、健康をむしばむ人工甘味料のような毒が含まれていた。
『季節のない街』の原作は山本周五郎の連作短編小説である。原作の小説は昭和37年(1962)に執筆された。この原作を黒沢明が昭和45年(1970)に『どですかでん』の題名で映画化した。原作小説では各編でそれぞれ別の人物に焦点が当てられ、都市の片隅の貧民街に暮らす住民の生態が三人称体で綴られている。黒沢明の『どですかでん』では、原作からいくつかのエピソードを取り出し、それらのエピソードをさらに細分化して再構成したものになっていた。
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ポップで洒落た感覚で作品を照らし出すことによって、日仏の古典喜劇の普遍的な魅力を浮かび上がらせた優れた舞台だった。
千葉を活動拠点とする三条会は、今、首都圏の小演劇ジャンキーの間で最も注目されている団体の一つではないだろうか。三条会の極めて個性的で癖のある表現スタイルには、中毒になるという言い方がぴったりはまるような強烈な吸引力がある。
細部まできっちりと作り込まれた美術と、日常生活を精密にトレースしたかのような動きとことばによって超写実的な舞台空間を創造し、その中でマメ山田という小人俳優を媒介にグロテスクで不気味な人間のありようを描き出す「暗黒」演出家、というのが私の抱いていた演出家タニノクロウのイメージである。
『the real thing』は、『ハムレット』の登場人物による不条理劇『ローゼンクランツとギルデンスターンは死んだ』(1967年)の作者として知られるトム・ストッパードが1982年にロンドンで発表した作品である。日本では1986年に文学座で『リアルシング』のタイトルで上演されている。活発なことばのやりとりの中で虚実があいまいになっていく、いかにも一筋縄ではいかなそうな演劇的仕掛けに満ちた刺激的な作品だった。ことばによって幻惑されるスリリングな展開に観客も気を抜くことができない。
今回四度目の来日となるイヨネスコ劇場は、ルーマニアの東側に位置する旧ソ連邦の国、モルドヴァの劇団である。モルドヴァ語での上演だったが、この言語は隣国の公用語であるルーマニア語と実質的にほぼ同一の言語だということだ。
平田オリザの新作だが、フランスの地方都市にある国立演劇センターから委嘱された作品であり、当初からフランスの劇場、フランス人観客のために構想された作品であることは強調しておく意味はあるだろう。言語芸術である演劇ジャンルにおいて、使用言語の異なる国・地域の人間に新作を委嘱することはかなり異例であるように思われるからだ。今回の委嘱は、平田の劇作家としての資質が言語を超えた普遍的なものであることをフランスの演劇人が認めたことを示している。