渡辺源四郎商店「小泊の長い夏」

◎「うそをつく人」たちが織りなすドラマツルギー
中西理(演劇コラムニスト)

「小泊の長い夏」公演チラシ渡辺源四郎商店「小泊の長い夏」(作演出・畑澤聖悟)を観劇した。近未来の青森。描かれるのは日本海に面した津軽半島・小泊にある小さな神社、大照神社(おおてるじんじゃ)である。ここには美しい夕日を信仰し、代々続く秘術を人知れず守り通してきた老宮司・昭一(宮越昭司)が暮らしている。そして、ここに以前飛び出して東京に行っていた宮司の息子(ささきまこと)が29年ぶりにその家族たちを連れて帰ってきた、などのあらすじがチラシなどには書かれていたが、物語はそれほど単純ではない。

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クロムモリブデン「マトリョーシカ地獄」

◎イメージ重視で破壊衝動をオーバードライブ 「妄想劇」の先駆
中西理(演劇コラムニスト)

「マトリョーシカ地獄」公演チラシクロムモリブデン(以下クロムと省略)の新作「マトリョーシカ地獄」(作演出・青木秀樹)をin→dependent theatre 2ndで見た。「直接Kiss」(2003年)、「なかよしShow」(2004年)、「ボーグを脱げ」(2005年)、「ボウリング犬エクレアアイスコーヒー」(同)。ここ数年間、年間ベスト級の傑作を連発し「関西でもっとも注目すべき集団」といい続けてきたクロムだが、一昨年秋にその拠点を東京に移した。

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青年団「ソウル市民」三部作

◎共時的構造を重ねて「歴史」を提示する 平田版「桜の園」の予感も  中西理(演劇コラムニスト)  平田オリザによる「ソウル市民」3部作は非常に興味深い舞台であった。この3部作はそれぞれが独立した作品でありながら、あきらか … “青年団「ソウル市民」三部作” の続きを読む

◎共時的構造を重ねて「歴史」を提示する 平田版「桜の園」の予感も
 中西理(演劇コラムニスト)

 平田オリザによる「ソウル市民」3部作は非常に興味深い舞台であった。この3部作はそれぞれが独立した作品でありながら、あきらかに同一の形式(最後に明らかに不条理なことが起こって終わることなど)が変奏を加えながら反復されるという特異な構造を持っている。そして、その形式性がちょうどクラシック音楽における交響楽がそうであるようにそれぞれ独立した音楽としてのまとまりをそれぞれの楽章が持っているのにその形式がひとつのかたまりとしての一体感を与えるというような構造を持つ、ここにこの3部作の大きな特徴があった。

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エジンバラ演劇祭2006-7(最終回)

◎明確な戦略で積極参加を 日本勢の活躍に期待
中西理(演劇コラムニスト)

写真はSt Stephenの全景(筆者撮影)AURORANOVA FESTIVAL(アウロラノヴァ・フェスティバル)*1はエジンバラ・フリンジフェスティバルで唯一、海外から参加の劇団も含めフィジカルシアターとダンスの演目だけを集めて行っているフェスティバルである。これまでの年でも複数のカンパニーがFringe FirstやHerald Angel Awards といった優れた公演を対象とした賞を受賞しており、Fringe公演ながら公演内容の水準の高さには定評があり、地元メディアからも注目され高い評価を受けている。 今年は全部で13演目ですべての演目を見ることができた。

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エジンバラ演劇祭2006-6

◎重要な独自技術の獲得と蓄積 既存テクニックの戦略的排除と同時に  中西理(演劇コラムニスト)  DANSE BASEの特徴はコンテンポラリーダンスの拠点というわけではなくて、ダンス全体の拠点だということにもある。もちろ … “エジンバラ演劇祭2006-6” の続きを読む

◎重要な独自技術の獲得と蓄積 既存テクニックの戦略的排除と同時に
 中西理(演劇コラムニスト)

 DANSE BASEの特徴はコンテンポラリーダンスの拠点というわけではなくて、ダンス全体の拠点だということにもある。もちろん、英国系の現代ダンス作品を紹介するというのがこの施設の大きな役割ではあるのだけれど、民族舞踊的な要素の強い海外のカンパニーの作品やヒップホップ、あるいは本来の英国ダンスの中心であるバレエなども一緒に紹介されているのが面白いところだ。

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エジンバラ演劇祭2006-5

◎分かりやすいダンスにきわどい性描写 DANCE BASEの独自プログラム
中西理(演劇コラムニスト)

エジンバラ演劇祭は本来、演劇(特にコメディーショー)を中心にしたフェスティバルでアビニョン演劇祭などと比較したときにはダンスのプログラムにはそれほど強くない。そういうなかでDANCE BASEとAURORA NOVA FESTIVALが開催されているSt.Stephen はレベルの高いダンスやフィジカルシアターを見ることができる貴重なプログラムを提供している。

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エジンバラ演劇祭2006-4

◎シェイクスピアとシャーロック・ホームズを楽しむ
中西理(演劇コラムニスト)

エジンバラはスコットランドの首都である。日本では英国といえばイングランドもスコットランドも一緒くたにされてしまいがちだが、現地に行ってはっきり分かるのは、スコットランドにはイングランドとはまったく違う国民意識や愛国心があるということだ。「マクベス」はシェイクスピアの代表作品であるがこれがスコットランドの王位争いを巡る物語であることはとりわけこのエジンバラ演劇祭では強く意識されている。ご当地ものということもあって、毎年、この作品はさまざまなカンパニーがさまざまな工夫を凝らした演出で上演。華を競っているのだ。

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エジンバラ演劇祭2006-3

◎上演数1800の巨大フェスティバル エジンバラ・フリンジは劇場で選ぶ
中西理(演劇コラムニスト)

「が~まるちょば」のポスター(筆者撮影)今回からはエジンバラフェスティバルズのもうひとつの中心であるフリンジフェスティバル(The Edinburgh Festival Fringe )について紹介してみたい。
まず、最初に特筆すべきことは巨大(huge)としかいいようのないその規模である。

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エジンバラ演劇祭2006 - 2

◎ナンセンスなコントシーンで見せる「死」 Anthony Nielsonの「Realism」
中西理(演劇コラムニスト)

「Realism」の舞台から(筆者撮影)

国際フェスティバルのもうひとつの特徴は毎年、若手の劇作家に新作を委嘱し、ワールドプレミアで上演することだ。今年見たなかではスコットランドのPlaywrite(劇作家)・Directer(演出家)であるAnthony Nielson(アンソニー・ニルソン)の新作をNational Theatre of Scotland が上演した「Realism」(Royal Lycem Theatre)がそういう舞台であった。よく出来てはいるが保守的な舞台が目立つエジンバラ演劇祭の演目のなかでは、これは非常に斬新で面白かった。

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エジンバラ演劇祭2006 - 1

◎リヨン・オペラ座のブレヒト=クルト・ヴァイル2本立てが白眉
中西理(演劇コラムニスト)

エジンバラの夜景(筆者撮影)

世界最大の演劇フェスティバル。そう称されるエジンバラ演劇祭だが、日本では意外とその実態は知られていないように思われる。毎年、夏休みをとってエジンバラ詣でを始めてから5年目になるのだが、今年も8月に約10日間同地に滞在、ダンス、演劇など40本の舞台を観劇してきた。それをこれから何度かにわたって、レポートしていくことにしたい。

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