◎「うそをつく人」たちが織りなすドラマツルギー
中西理(演劇コラムニスト)
渡辺源四郎商店「小泊の長い夏」(作演出・畑澤聖悟)を観劇した。近未来の青森。描かれるのは日本海に面した津軽半島・小泊にある小さな神社、大照神社(おおてるじんじゃ)である。ここには美しい夕日を信仰し、代々続く秘術を人知れず守り通してきた老宮司・昭一(宮越昭司)が暮らしている。そして、ここに以前飛び出して東京に行っていた宮司の息子(ささきまこと)が29年ぶりにその家族たちを連れて帰ってきた、などのあらすじがチラシなどには書かれていたが、物語はそれほど単純ではない。