マレビトの会「Cryptograph」(クリプトグラフ)

◎まとめようとすると落ちこぼれる 「報告する演劇」の生成現場
松井周(サンプル主宰)

公演のポストカードから京都のアトリエ劇研でマレビトの会『Cryptograph(クリプトグラフ)』を観た。
どうもうまくまとまらない気がするが、まとめようとすることでこぼれおちるものがあると考えれば、その言い訳で乗り切れるだろうか。この作品の終演後に作者の松田正隆氏とポスト・パフォーマンストークをしたのだが、その時はもちろんのこと、まだ落ち着かない。とにかく今でも作品のイメージが乱反射していて、とても手に負えない気がする。それほどインパクトの強いものであったのだ。

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時間堂「月並みなはなし」

◎やわらかな手つきで世界を変える
徳永京子(演劇ライター)

「月並みなはなし」公演チラシ結局、演劇をはじめとするあらゆる表現活動は、世界を変える方法のアイデア提示だとは言えないか。つくり手が認識する、あるいは目指す「世界」の広さ、「変化」の規模はさまざまだが、自分(達)の作品に接した前と後で観客の意識が変わることを目指さない表現者はいない。つくり手が自覚的か無自覚かに関わらず、演劇は世界の定義を広げていく運動に他ならない。脚本や演出のスタイルの差異とは「だから自分は変えたい」という動機、「自分だったらこう変える」という具体策の差異なのだ。

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