イプセン原作「野鴨」(タニノクロウ演出)

◎消長する森が作品世界を映し出す 明晰なテクストから背後の深い闇へ
片山幹生(早稲田大学非常勤講師)

「野鴨」公演チラシ細部まできっちりと作り込まれた美術と、日常生活を精密にトレースしたかのような動きとことばによって超写実的な舞台空間を創造し、その中でマメ山田という小人俳優を媒介にグロテスクで不気味な人間のありようを描き出す「暗黒」演出家、というのが私の抱いていた演出家タニノクロウのイメージである。
メジャーリーグの主催公演でタニノクロウが外部演出家としてイプセンの戯曲を上演すると知ったときの私の期待は、精巧な細密工芸品をも連想させるイプセンの世界をタニノクロウがどのように消化し、庭劇団ペニノ風に悪趣味なものへと変形させるかにあった。

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新人戯曲賞公開審査会は9日

新人戯曲賞公開審査会チラシ第13回劇作家協会新人戯曲賞(日本劇作家協会主催)の公開審査会が12月9日、東京・新宿の紀伊國屋サザンホールで開かれます。応募総数168本のうち1次、2次選考を経た最終候補作5作品から、7人の審査委員が公開討論によって受賞作を選びます。
入場料1000円、9日午後6時30分開演。

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「ファンドによる芸術支援」フォーラム

文化資源学フォーラム「1000円パトロンの時代」チラシ映画や演劇、音楽などパフォーミングアーツを中心としたジャンルでファンドを設立する動きが出てきたようです。支援したい劇団や公演を選んで個人が資金提供できる仕組みですが、本当に役立つ支援が可能かなど疑問や課題を話し合い、芸術支援ファンドの可能性を探る文化資源学フォーラム「1000円パトロンの時代-ファンドによる芸術支援の現状と課題」が12月14日、東京大学山上会館で開かれます。申込先着100人、入場無料です。

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演劇講座「ブレヒトとアジプロ演劇」

「集団の声、集団の身体~1920・30年代の日本とドイツにおけるアジプロ演劇展」チラシ早稲田大学演劇博物館は12月4日、「ブレヒトとアジプロ演劇~映画『クーレ・ヴァンペ』を手がかりに~」と題した講座を開きます。
アジプロ演劇は1920-30年代のドイツで盛んだった演劇形態の一つ。作品の再演だけでなく、上演を通じて人々の生活と直接掛かり合い、社会変革につなげようとする点に特色がありました。ブレヒトが脚本を担当した映画『クーレ・ヴァンペ』(1932)は当時のアジプロ隊の活動を取り上げているため、その一部を上映してブレヒト演劇の特質を解き明かします。

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柿喰う客「傷は浅いぞ」

◎巧みにして知的、速射砲的台詞の愉楽
谷賢一(劇団DULL-COLORED POP 主宰)

「傷は浅いぞ」公演チラシとにかく勢いのある、勢いのある劇団である。今年の夏はモリエール、年末はお台場、正月にはトラムと、とんとん拍子ですごろくを進めている若手劇団、「柿喰う客」。主宰はまだ確か二十三歳、劇団員の平均年齢も恐らく二十代前半だろう。

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